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金が欲しい!

 お金って、あればそれは嬉しいけど・・・

 「ちくしょー!外れた。」

 「ええ、又駄目だったのお。」

リビングでテレビにかじりついていた男は、がっくり肩を落とした。

 「あとちょっとだったんだけどなあ。最後の最後に抜き去られたよお。」

 「自信満々だったから期待してたのに、もうこんなんだったらママと買い物行った方がましだったよ。きっと兄ちゃんは今頃いいもん買ってもらってるよ。」

 「そう云うなよ。当たってたら、何でも好きなもの買ってやれたんだ。」

 「いいよ、もうパパのたら話は。」 小学生の娘はもうぷんぷんだ。

 「それよりな、このことはママには内緒な。」 もう賭け事はしないという約束がばれたらまずいのだ。

 「いいけどさ。その代わり、」と手を出す娘に、ちゃっかり口止め料を取られた。

 「次はきっと勝つからな。」 自分の部屋に戻ろうとする背中への捨て台詞も、

 「いいよもう。あたしも姉ちゃんみたいに彼氏作って、一杯奢ってもらうから。パパはもうママの云う通り止めときな。」 あっさり返り討ちにあった。

 ちぇっ! 俺は仕事は出来るし、モテるし、体は健康そのもので、20歳頃の体型と運動神経を保ってんだぞ! なのに、何でえ、何でえ! 家の高額ローンに加え、高校生の娘や中学生の息子にも多額の学費払わされ、教育費に持って行かれてたんだ。仕事の接待費も自腹が馬鹿にならないし、部下にはたかられるし、嫁さんは家計にうるさくて、俺の財布がどんだけ寂しいか分かっとらーん!

 「と云うのが、貴方の不満の根源ですね?」と、突然聞き覚えのない声がした。

 「誰だ?!」 すると現れたのは、銀行員風の紳士だ。

 「私の名前は運神。貴方の金運の相談に乗る為に天より参りました。」

 「玄関は閉まってるはずだし、一体どこから入って来た?」

 「私も神のはしくれ。神出鬼没なもので、貴方の心の声を聞きつけ、天から直接瞬間移動で参った次第です。」と云うと同時に、男の目の前で、一瞬にして日本神話に出て来そうな神の姿に変わった。そんなもの目の当たりに見せられては、もう信じるしかない。夢でも無さそうなので、

 「じゃ本当に、この金欠病何とかしてくれるって云うのか?てか、あまり大きい声出すと娘に聞こえるな。」と、途中から急に小声になった。

 「あ、それは大丈夫でしょう。娘さんは3階の部屋に戻ってすぐにヘッドホン付けて音楽聴いてますよ。」って、娘の部屋覗いたのか? いえ、神なので、何でもお見通しなのですよ。

 「ならいいんだ。じゃ早速、俺の金運アップしてもらえるかな?」

 「それには、他の運を削って持って来ないと行けません。貴方の総運をアップすることは出来ないんですよ。運には金運の他大きく仕事、恋愛、健康、その他・・・」

 「いいよ、そんな小難しいことはよお。何でもいいから金運だけマックスにしてくれ。」

 「随分せっかちですね。」

 「こちとら江戸っ子だからな。細けえこと苦手なんだよ。」

 「ですが、ある程度他の運も大事にしないと大変なことになりますよ。」

 「もう、いいたっらいいの!他の運なんてもう飽き飽きなんだ。金運だけフルパワーにしてくれ!」

 「分かりました。じゃあお望み通りにして差し上げましょう。」と云うと、運神はその場から消えた。


 男は、間もなく発売になったジャンボ宝くじを連番で3枚だけ買い、次の日曜日には、その日の最も払戻金が期待出来るレースの馬券を、大穴狙いの3連単で千円だけ買った。それは、家族は勿論誰にも内緒でだ。するとどうだろう。何とそのレースで奇跡が起こり、人気馬が相次ぎ接触落馬して、彼の勝ち馬投票の3頭が思い通りの着順で入った。払い戻し金は、100万円余りに上った。やったー!

 ところがである。翌日、彼は仕事で重大なミスを犯し、その対応の悪さもあり、数日後処分待ちの自宅謹慎を命じられた。当然の様に、それまで慕ってくれていた女子社員にも見限られ、家族からの信頼も失った。

 そして、ジャンボ宝くじの抽選日、彼は正式に解雇を言い渡された。落胆する家族の中で彼は、前後賞合わせて10億円の当選番号を確認し、その喜びに舞い上がったのを最後に意識を失った。

 病名=脳梗塞。彼は、その日のうちに他界した。


 彼の死後、家族は金銭的不自由することなく幸せに暮らしたそうな。

 偏るってことは、よくないですね。お付き合い下さって、ありがとうございました。<(_ _)>

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