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浪速の失恋男と謎の神

一応現代社会を舞台にはしてますが、完全に想像のフィクションです。読者

の中には、そんなもんじゃないでしょと思われるかもしれません。まあ、1つ

のもしも話しとして、気軽に見てやって頂ければ、幸いです。

 ここは、大阪のとあるワンルームマンションの1室。日曜日の午後だというのに、そこに住まう男はパジャマ姿のままで、ベッドにうずくまり独りで泣いていた。歳の頃は30くらい。中肉中背で、顔はイケメンとは言えないまでも、そこそこ整ったまあまあの男ではあった。男の手元にはカッターナイフ。枕元には、瓶入りの錠剤と、水の入ったガラスのコップがあった。

 「おい、おまえ、何昼間から泣いとんね?」突然のおっさんの声に、男は驚いて跳ね起きた。

 「誰や、どこにおる?」きょろきょろ部屋中を見まわしてみる。

 「ここやでー。」と、ベッドの下から、えらいド派手なおっさんが顔を出した。

 「ドロ・・・」叫びかけた男は、おっさんに口を抑えられて、

 「待ちいや。早とちりすんな。こんな派手な格好したドロボーがどこにおんね。」と、ベッドの横に立ち上がったおっさんは、まるで道頓堀のあの有名な人形みたいななりをしていた。

 「ほな何やね?一体いつからそこにおった?どっから入ったんや。全部鍵閉まとったやろ。」

 「まあまあ落ち着けや。わしは人間とちゃうんや。いつからて、昨日くらいから、気になってな、ちょくちょく見てたんや。」

 「おっさんのゲイのストーカーかいな。止めてくれ、気持ち悪い。」

 「ちゃうわい。ちゃんとよう聞けや。わしはな、人間とちごて、運神うんがみ言うてな、運を司る神なんや。神やで、偉いんやぞ。運神様と呼ばなあかんで。」両手を脇腹に添えて、踏ん反り返ってみせた。でも、どう見ても、

 「お笑い芸人やんけ。さては、大家の奴、わいに相談もなしに、テレビ局に合い鍵渡しよったな。隠しカメラはどこにあんね。」

 「疑り深いやっちゃなあ。神様や言うとるやないかい。わしは、今日なってからも、何べんも出たり入ったりしとんやで。そやのに、何も気い付かへんかったやろ。すなわち、わしが人間ちゃう証拠や。」

 「まじかいな。でも、何でこてこての関西弁なんや。神様は関西弁喋るんけえ。」

 「お、ええとこ気い付いたな。これはな、わしの流儀でな、相手の人間に合わせて喋ったんねん。そやから、関東行ったらだいたい標準語やし、青森やったら津軽弁喋るんや。どや、器用やろ。」

 「何か嘘くさいな。ほな、津軽弁喋ってみいや。」

 「あほ、ここは大阪や。ここでは関西弁しか喋らへんで。その代わり言うたらなんやけど、よう見とけよ。」そのド派手なおっさんは、壁をすり抜けて見せた。それには、流石の男も目を丸くした。

 「どや、これで分かったやろ。先言うといたるけど、夢ちゃうで。」と同時に、男は自分の顔を数回ぱしぱしやってみた。すると、

 「ほんま痛いわ。ええー、まじー!ちゅうことは、わいの運ようしてくれるんか?」

 「まあその手の話しに違いないけどな、その前に、おまえ、ちょっと口の利き方直さんかい。わしは、神様なんやで。」

 「敬語つこたら、運ようしてくれはるんか?」

 「おまえ、それ敬語のつもりかい?まあええわ。おまえのレベルの喋り方、あんまり細かいこと言うても始まらへんみたいやしな。ほな、いきなり、本題入ったるわ、どうせ、おまえはせっかちそうやしな。まず、ずばり、おまえがようして欲しいのは恋愛運でおおとるか。」

 「何で分かったんや。」

 「そやし、わしは神様なんや。それくらいのことお見通しや。昨夜振られたあの姉ちゃんと、より戻したいんやろ。」

 「そや、わいは彼女おらんかったら生きていけませんね。」

 「そいで、よう死に切れへんくせに自殺の真似ごとしとんかい。男のくせに情けないやっちゃなあ。」

 「わいね、ほんまに彼女のことまじで好きですね。ほんまにあいつのこと、大事に想てますね。そやのに、たまっちは、女々しい男は嫌いや言うて、わいの言うこともう何も聞いてくれへんのですよ。」

 「まあ、そらそやろな。まあ、いまどきの男ときたら、やたらそんな奴が増えとるし、何もおまえが特別言う訳ちゃうけどな、でももうちょっとしっかりした方がええで。そやないと、いくら運ようしても、いつか又上手いこといかんようになるで、それだけは言うといたるわ。」

 「ほな、徹底的に恋愛運上げて下さい。」

 「あんな、おまえでも分かる簡単な説明しといたるけどな、頑張りに運を掛け算したら結果が出るね。つまり、いくら運がようても、頑張りがゼロやったら、結果もゼロやで。逆言うたらな、どんな頑張っても、運がゼロやったら、これも結果はゼロや。」

 「それやったら大丈夫ですわ。わい、たまっちのことやったら、なんぼでも努力しますさかい。」

 「そのおまえの努力やけどな、ちょっとやり方考えた方がええで。彼女が引くようなことしたら、マイナスやさかいな。」

 「たとえば、どんな?」

 「おまえな、くどうて、ねちっこ過ぎんね。やきもちやき過ぎなんも、ええ加減しとかな、彼女かて息詰まるわい。まあ、何ぼ言うてみたかて、おまえの性格からして治らんやろけどな。まあええわ。おまえかて、気持ちに余裕出たらそれもましになるやろし、運さえ向いたら何とかなるわ。」

 「ほな、さっそくやって下さい。よろしゅう頼みますわ。」

 「まあ待てや。それには運のやりくりについて説明しといたらなあかんね。わしかて、悪徳神のレッテル貼られとないさかいな。」

 「どういうことですか。神様も商売ですか。」

 「そやで。運の操作したる対価として、そいつの運の何パーセントかもらうんや。」

 「ほな、運下がりますやん。」

 「当たり前や。全体の運は上げるかいな。それ上げるんは、その人間の日頃の行いや。人としての善い行いをこつこつしてやっと地道にちょっとづつ上がんね。でも、それは気遠なるほどほんまにちょっとづつしか上がらへんし、逆に悪いことしたら簡単に下がるんや。そやしな、人間は頑張るとこは頑張らなあかんし、同時に悪いことはしたらあかんね。悪いことて一口に言うてもいろいろあるんやで。マナーの悪いこともそやし、人に嫌な思いさせるんかて、その度合いに応じて下がるし気付けや。」

 「そうなんや。分かった、気付けますわ。ほんで、わいの運下がるてどういうことですか。わいは運上げてもらお思うてたのに、下がるて聞いたらテンションも下がりますわ。」

 「正確に言うたら、総合運の5パーセントから10パーセントをわしがもろて、残りの運を操作するんや。例えば30の恋愛運を100にするかわり、その上げる70の分を仕事運とか、健康運から持って来んね。当然、減らされた仕事や健康の運は下がるんや。それでも、恋愛運上げたいいう奴の願いを叶えてやるのが、わしの商売ちゅうわけや。」

 「だいたい分かりましたけど、運神様は、その人間の運もろてどないしはるんですか。食うんですか。人間の運て美味いんですか。」

 「食うて、何か表現悪いな。まあ、吸収するんやさかい、そうみたいなもんやけど、わしら運神はな、そうやって人間の運を吸収することによって、若さとか、神としての力を保つことが出来んねん。あああかんわ、大阪のノリで喋り過ぎた。こんなことあんまし人間に言うたらあかんね。もう聞くなよ。聞いてももうこれ以上わしのことは喋らへんで。それに、べつに喋る必要もないやろ。契約は絶対なんやから、それは安心せい。」

 「分かったんで、ほな、恋愛運上げて下さい、はよ。」

 「ほな、ほなて、おまえさっきからせわしいやっちゃな。恋愛運上げるかわりに、どの運をどれくらい下げるかも決めなあかんし、注文が細かなるほど、わしがもらわなあかん運のパーセントも増えるんやけ

ど、おまえの場合は、大ざっぱで大丈夫やな。」

 「大ざっぱで何パーセント取られるんですか。」

 「5パーセントや。それが最低額なんや。運を、恋愛運、仕事運、健康運、金運、その他の運の5つに

分けて、その中でやりくりすんねん。まず、おまえの総合運をこれでみたら240としよ。」

 「全国平均はどれくらいですか。」

 「ほう、おまえにしてはええ質問やな。この5つの運の平均値は全部50や。つまり偏差値とほとんど同じや。当然合計の平均は250やし、おまえのは既にちょっとだけ低いねん。それが、わしへの支払い

分として、5パーの12取られて228になる。それを、5つに振り分けるんや。」

 「ちなみに、わいの今の恋愛運はいくらくらいありますか。」

 「恋愛運44や。仕事運は50、健康運は51、金運は47、その他の運が48や。」

 「通りで、何ぼ頑張ってもあかん訳やな。ほな、恋愛運100にして下さい。」

 「おいおい、100言うたら最高値や。この数値はな、先に言うてた頑張りと掛け合わせて結果を出す数とはちゃうで。だいたい10上がるごとに、実際の運は倍以上上がんね。100やったら、50のおよそ50倍も運がええね。おまえの場合44やさかい、今より80倍くらいようなって、もうえらいことになるで。それに56増やすいうことは、12プラス56で、68他から引かなあかんねん。仮に17づつ減らすとするやろ。ちゅうことは、恋愛運以外の運がどれもこれも、今より7割落ちるんやで。半分でもえらいことやのに、3分の1以下は、いくらなんでも痛いやろ。人間ちゅうのは慣れていうもんあって、少々の困難かて、そういうもんや思たら耐えれるもんや。逆に、ええ運勢のもんが急に運落ちたらどうなる思う?もう地獄落ちた気分なるんやで。悪いこと言わん。それは止めとけ。」

 「何か、運神様、自分の存在意義を否定するようなこと言うたはりません?」

 「そんな風に聞こえるか。でもな、今のおまえみたいに、どないしてもわしに頼らなあかん奴はなんぼでもおるんや。それに、わしかてな、さっきも言うた通り、荒っぽい商売して後ろ指指されとないね。」 「ほな、どれくらいがいいですね。どんなせこい操作しても、5パーセントの12は持って行きはるんでしょ。それやったら、ある程度思い切ったことやらんと割に合わへんやないですか。それとも、気にいらんかったら又すぐ変えられるんですか。」

 「変えるごとに5パーセントいるけどな。」

 「やっぱり、そんなことや思たわ。それの方がよっぽど痛いやないですか。まあ、100が行き過ぎや言うのは分かりましたさかい、せめて70に上げて下さいな。」

 「その場合38どこから落とすかやな。」

 「仕事、健康、金運は分かりますけど、その他て何ですね。」

 「その他は、その他の運全部や。人間、生きて行く上で恋愛、仕事、健康、金は基本4大運やし、それぞれ独立してるけど、それ以外はいろいろあって細か過ぎて一まとめなんや。」

 「でも、ちょっと気になるな。何と何があるんですか?」

 「そやな。まず、家族。それと友達、その他の対人関係、それと勉強とかあるな。ただし、それらが仕事とか、金に関わる部分は、それぞれ仕事運や、金運の範囲になるんや。」

 「ほな、勉強はもうどうでもいいですね。それで、・・」言いかけたところを、運神に遮られ、

 「5パーの手数料は、運の種類を5つに大別した時だけや。それより細かく分けた場合は、ちょっとくらいやったら7パーとか8パーにまけといたるけど、大概は10パーもらうで。基本総合運、228より減らしとないんやろ。」

 「ほな、健康を38にしといて下さい。それ以外は40でお願いします。」

 「健康は今の4割以下に落ちるで。それでもええんか。」

 「どうせ死の思てたくらいやし、構いませんわ。そんでよろしく頼みます。」

 「そうか。彼女と結ばれる為には、それくらい平気いう訳やな。よっしゃ、覚悟あるみたいやし、それでやったるわ。ほれ、これ契約書や。ちょっとそのカッターで指切って、親指で血判せい。」運神は、いつからそれを用意していたのか、手品のようにその紙きれを、男の前のテーブルの上に出した。

 「早!おう、分かりやすう書いてありますな。」見ると、大きな字で要点と、今決めたばかりの各運の数値が書かれていた。男は、もう何も迷わず、あっさりそれにサインした。

 「これで、おまえの恋愛運は格段に上がった。後は、おまえ次第や。頑張りや。ほな、さらばや。」その言葉を言い残して、運神はその場で、すーっと消えた。

お付き合い頂き、ありがとうございます。この契約で男の人生がどう変わるか、次回はそこのところを展開してみたいと思います。又、人生について、

運について、ご意見など頂ければ、幸いです。

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