第4話
「…っ、いやだ、ぁ…… 」
もう、わけがわからなくて、苦しくて声も出せず、涙だけが流れた。
利昭さんが鳴咽を漏らしながら僕を抱きしめた。
先生は話を続ける。
「現場の爆発が激しかったようで…身元の確認については歯の治療記録で照合しました。
お父様お母様はお体の損傷が激しいですが、お嬢様は比較的きれいです…ご確認なさいますか。」
ぴくっ、と利昭さんが震えた。
「……っ、両親が後から来るはずなので…それからでもいいですか。」
「大丈夫です。お揃いになったらナースセンターに声をけてください。」
先生と看護士さんは、利昭さんが頷いたのを確認すると「では、一先ず失礼します」と静かに退室していった。
おじいちゃんとおばあちゃんが到着するまでの間、利昭さんはずっと僕を摩っていてくれた。
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「優太、利昭!」
おじいちゃん、おばあちゃん…二人とも青白い顔だった。
「…ふぅっ……」
ずっと泣いていたけど、二人の顔を見たら、また胸が詰まって、ボロボロ涙が激しくなった。
「先生からは、歯型で照合してるけど会って確認するかどうかって聞かれてる…損傷が激しいらしい。確認に行くとしたら俺と父さんで、母さんは優太とここで待ってて欲しいんだけど、いいかな。」
「頼みます。」
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遠くで男の人が泣いてる。
だんだん近づいてきたそれは、白衣を着た人とスーツを着た人、彼らに凭れるように歩いてくる利昭さんとおじいちゃんだった。
「あぁ」
その様子を見ておばあちゃんが僕の肩に突っ伏して泣きだした。
「母さん。兄貴達に会ってきたよ。兄貴と陽子さんはっ、潰れてた、けど、美樹ちゃんを、守ってたっ……」
「西警察署の水上です…このたびはご愁傷様でした。事件現場は爆発が激しく、お父様、お母様はお体の全てを見つけることができませんでした。申し訳ありません。」
「このたびはご愁傷様でした…担当医の中川です。お嬢様の頭部に傷が少なかったのは、お二人が身をていして庇ったからでしょう…。」
ああ、もう、どうあがいても否定しようが無い。
これは、現実だ。