第3話
夜間入口から病院に入る。
利昭さんが受付で名前を告げると、少し待つように言われ、程なくして看護士さんが現れた。
看護士さんについていくと個室に案内された。
コンコン
「はい。」
「失礼します。田中弘一さんのご親族と息子さんをお連れしました。」
「どうぞ。」
「お待ちしてました。担当医の中川です。」
「はじめまして。私、田中弘一の弟で田中利昭といいます。こちらは弘一の息子の優太です。」
「優太君。夜遅くに来てくれてありがとう。先におじさんと少しお話したいんだけど…いいかな?」
「どうして?僕がいるとダメなの?」
肩に手がおかれて、はっとして見上げると、顔を強張らせた利昭さんと目が合った。
「…優太、外で待っててくれ…」
看護士さんが僕の背中に手を添えて「優太くん、温かいココア飲みにいこうか。」と言って廊下に連れ出した。
「はい。ココアどうぞ。お腹は空いてない?」
「…ありがとうございます。大丈夫です。」
「今、何年生?」
「…5年生。」
「え、そうなの。背が高いから6年生かと思ったよ。学校は楽しい?何の授業が一番好き?」
「…算数。」
「算数!羨ましい!私は数字をみると頭いたくなっちゃう…。」
看護士さんと話をして気が紛れて、泣きそうだったのが少し落ち着いた。
カチャ
「優太、待たせた、入って…」
利昭さんが部屋から出てきて僕を呼んだ。
顔は硬いままだった。
僕は利昭さんと並んで椅子に座り膝上できゅっと握りこぶしをつくる。
じっ、と先生を見つめた。
先生は僕の手をとり視線をあわせゆっくりと語りだした。
「優太君…
……お父さん達だけどね
…………亡くなったよ。」
「え?いなくなった?じゃあ警察に探してもらわないと!僕も探すし!!」
「違う。いなくなったんじゃない。…亡くなったんだ……死んでしまったんだ。」
「お父さんが?」
「…うん。」
「お母さんが?」
「…うん。」
「お姉ちゃんも?」
「……うん。」
「…嘘…」
隣にいる利昭さんに確かめようと横を向くと
肩を震わせ俯いていた。
雫がポタポタ落ちて
泣いているのがわかった。
真実なんだと、わかった。
「っ、ひっ、やっ………何で
あぁ−−−−−−−−−−−−!!!」