第2話
おじいちゃんの電話から2時間くらい経ったころ、家の前に車が止まる音がした。
♪ピンポーン
利昭さんだっ!!
僕は大急ぎで玄関の鍵を開けにいく。
「優太。」
利昭さんの顔を見てホッとしたとたん、みんながどうなったのかという不安と、一人で留守番していた寂しさがまぜこぜになって、涙が滲んできた。
「遅くなってごめんね。一人で頑張ったね。」
「…うん……。」
利昭さんに頭を撫でられて、僕の目から涙がポロッと落ちた。
「…外にタクシーを待たせてあるんだ、すぐ病院に行こう。戸締まりしてあるか、一緒に部屋を回ろうか?」
「ううん、大丈夫。外が暗くなったから、もう雨戸は閉めた。あと、部屋の電気を消すだけ。」
「そうか。外は寒いから上着を着ておいで。外で待ってるよ。」
「わかった。」
目元を拭いつつ大急ぎでリビングに戻り、念のため戸締まりをチェックして、電気を消した。
こんなときでも、いつもどおりに戸締まりできる自分に驚きつつ、上着を掴んで外に出た。
玄関の鍵を閉めてタクシーのところを見たら利昭さんはいなかった。
不安になり周囲を見回すと、お隣りのおばちゃんと話をしていた。
「…というわけで、これから優太と病院に行きます。病院名と私の携帯番号はこれですので、何かありましたらご連絡いただけると助かります。よろしくお願いします。」
「わかりました。こちらは任せてください。」
「利昭さん。」
強張った顔をした隣のおばちゃんが振り返り、僕に気付くと泣きそうになった。
「ゆうくん、心配ね。早く行っておいで…。」
おばちゃんは涙声になっていて、僕はまた涙が出てきて、頷くことしかできなかった。
**************
利昭さんとタクシーに乗り込むとすぐに車は走り出した。
「お待たせしてすみません。」
「いいえ、気にしないでください。本郷総合病院までは20分くらいですよ。」
ときどき無線から音が聞こえる以外、車内は静かだった。
利昭さんはずっと僕の手を握ってくれていたが、その力はとても強かった。
「手、痛い。」
「あぁ、ごめん。」
力を緩めてもらい利昭さんの方を見ると一瞬目があったが、それ以上何も言わずにすぐ前を向いてしまった。
…胸騒ぎがした。
心臓がきゅっとなった。
お母さん達に、会えるんだよね…?