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魔導探偵Knox's  作者: ローズ=クロウリー
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1.沢目と笠作

ノックスの十戒


第九条

“ワトスン役”は自分の判断を全て読者に知らせねばならない


2011年12月10日 7:35 久禮笠作



 沢目留衣は涙もろい。

 すこし太陽に目を向けるだけで涙が出てくる、だから彼女は何時も下を向いて歩く。

 声をかけて見ると、沢目は徐に顔を上げて…泣いた。

 泣いたと言っても涙が目じりに溜まっただけだが、それが彼女にはコンプレックスであるからまた下を向いてしまう。

 一応彼女は誕生日の関係で一歳近く年上であり、こんな事を考えるのも不敬なのではあるが…それでもやはり小動物のようで可愛いと感じてしまう。


「よう、沢目」


 再び気軽に声をかける事にした。俺をキッと睨んで彼女は口を開いた。


「遅い、10分間の遅刻だ。余りにも待たせるものだから泣いてしまいそうだった」


 日の下で泣く程の無き虫が何を言うか

しかしそんなこと言わせてもらえないだろうと思い素直に謝る事にする。


「悪い悪いサワメっち、次は寝坊で泣かせないように気をつけるぜ」


「サワメっち言うな」


 彼女の手刀が瞬時に喉をついた、全く彼女は容赦がない。

 沢目留衣は無き虫だが、それ以上に武闘派な女だった。


「ぐげぇ…おい喉に手刀はヤバいって、死ぬぞ!」


「なら一度死んでみるか?」


「勘弁してくださいサワメっち様」


「死ななきゃ解らないようだな」


 今になって思う、あんな事になったのは、この時こんな縁起の悪い会話を他愛のないノリで交わしたからではないかと…




 2011年12月10日 12:30 潤目沢目



「皆既月食?」


「そうそう、親父の親戚がこの辺で展望台を立てたって言ってただろ?

展望会に親父が行けなくなったんで俺が行くことになって、ついでにサワメっちも誘うかって思ってな」


「サワメっち言うな」


 昼食の時間、席を向かい合い今夜の予定を話す男久禮笠作は私の幼馴染だ。

 彼の両親の交友関係は結構広い。

だから昔からたまにこんなイベントが唐突にやってくる。

 そしてそれに乗っかって色々な経験をするのが私は好きだ。


「貴方達飽きないわねェそのコント」


 級友の最乗姫瑠(ものりひめる)が食傷そうに林檎を食べながら私達にフォークを向ける。


「行儀が悪いよ姫瑠、飽きないというかそれは久禮に言ってくれ」


「やぁよ、校長先生以外の男には話しかけないって決めてるの!…でも行儀悪かったのはごめんね」


「よろしい」


 ばつが悪そうに応える、この子は割と素直ないい子だ。

 校長というのはそのままの意味、私たちが通う銅鐸銅第三高校の校長先生のことである。

 元々歴史のある大学の教授として世界中を駆け回っていたそうだが途中から転向してその座を離れ学校の教師になったそうだ。

 そんなこんなで結構御歳を重ねている人物なのだが、この最乗姫瑠という少女はそんな渋い妙齢の男性に目がなかった。

 しかも年齢こそ私たちと同じようなものであるはずなのに彼女は背も低く顔も童顔だ。


(私も人のことは言えないが彼女はその倍…下手をすれば小学生にすら見える)


 なのでもしも彼女の想いが叶うことになったら外見上とんでもない年の差カップルになるに違いない。


「そーそー、サワメっちがサワメっちを大人しく受け入れてくれりゃあそれで万事解決

うぼぁ」


 今度こそ綺麗に手刀が極まった、頭に。

 コイツはそうとう諦めが悪い、頭も悪い。

もう半分くらいは諦めているがどうして私はこんな奴と昔から腐れ縁なのか・・・

 挙句の果てには・・・


「本当に仲が良いわねぇ貴方達は、いっそ付き合ったら?」


 こんなこと言われるのだ。


「誰がこんな馬鹿と付き合うもんか、だいたい色恋にうつつを抜かすくらいなら私は文武両道の道を往く…あ、にんじん」


「はいはい貰ってやんよ」


「あんたら一度鏡で自分達見て見ろイチャイチャカップルが居るから」


「ちっ違うぞ!!これは!!これは…にんじんに毒が入っていただけだからな!!」


「ニンジン嫌いな所は聞いてないから!!何その言い訳、誰に対する言い訳よ!?」


 他愛ない日常、他愛ない会話、それが果たしてどれだけ重要な物だったか

 私たちはきっと理解していなかった、寧ろ私たちは理解するべきではなかった。

死と隣り合わせの世界なんて言う者を望むのは,魔法の出てくるライトノベルか、主人公の行く先々で殺人事件が起こるような推理小説で十分なのだ。

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