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第七話 謎のチモシー、再び

ダークブラウンのクラシックスタイルの天蓋付きのクィーンサイズ猫脚ベットに斎鹿は仰向けに押し倒され、その上に足を広げて両足で斎鹿を挟むようにして乗るサリルト。

 長いサリルトの銀髪が斎鹿の顔にかかる。


「 なんであんたに組み敷かれてんの?」


 2時間前。

 真上にあった太陽はその姿を段々と傾け、地平線にその姿を寄り添わせていた。

 

「 出しちゃったって…」


 サリルトもさすがにそこまで姉が行動しているとは思わなかったのか、その端正な顔を歪めている。シアンは、唖然としている2人を見て嬉しそうに笑うと、椅子から立ち上がる。


「 それと、今日はこのまま2人で過ごしてもらうわ」


「 そ、それはさすがに不味いでしょ⁉︎ 私達、つまりはその…男と女なんですから」


「 私としては何か有ってもらった方がいいんだけどぉ」


 抵抗する斎鹿にシアンは斎鹿とサリルトに聞き取れない小さな声で願望を言い放つと、そのまま視線を扉がある前方に定め軽くアゴを引き背筋を伸ばして、その足に履く赤い高いヒールの音を響かせながら歩き出す。

 セバスチャンは主人の行動を推測し、左手で扉を押し開ける。


「姉上」


「お姉さん」


 斎鹿とサリルトの怒りを含んだ声に扉を通ったシアンが斎鹿とサリエルへと向き直る。 そして、左手を腰に当て右手の人差し指を立ててそのまま2人へと伸ばす。


「 お黙りなさい。 お姉さまの言うことは絶対よ。 セバスチャン、扉をお閉め」


「 かしこまりました」


「 ちょっ、待ってよ!」


 椅子が倒れるのも気にせず、斎鹿が咄嗟に扉に駆け寄るがその前にセバスチャンの穏やかな顔を最後に閉められてしまった。扉の取っ手を力の限り斎鹿が引っ張るが、その時ガチャっという嫌な音が聞こえた。どうやら鍵を閉められたようだ。


「 明日になったら開けてあげるわぁん。 その時までゆっくりしていてね」


 その言葉を最後に悪魔シアンのヒールの音が遠ざかっていくのが聞こえた。

 シアンを留めようと叫びながら斎鹿が諦めずに開けようと押したり引いたりを繰り返している。


「落ち着け、無駄だ。 姉上が言っていただろう。 簡単に密偵が侵入出来ぬよう頑丈に設計してある。 鍵をかければ侵入出来ないと同時に出ることも叶わん」

 

 冷静に目を閉じて腕組みをし、そのまま椅子を立ち上がり大窓へと歩いていく。


「 窓は開けられテラスに出られるが、ここは2階。 飛び降りるのは危険極まりない。もうひとつの窓の近くには高木があるが、近くに伸びる枝は細く人一人を支える力がない為不可能。 つまりこの部屋からの脱出は不可能ということだ」


「 やけに冷静じゃない。さっきまでの結婚話だってあんまり口挿まなかったし」


 あまりの冷静な状況判断に斎鹿は取っ手を持っていた手を離し、サリルトに向き直ると力強い大股で窓際間で歩いていく。


「 初めてではないからだ」


「……は?」


 斎鹿がサリルトの真後ろに来た時、サリルトが唐突に振り向く。

 

「 姉上に謀られること数十回、結婚話もこれが最初ではない。 女性と同じ部屋に入れられたことも幾度となくあるが、やましいことは一度もない」


「 …それもそれで凄いわね」


 斎鹿が呆れたように腰に手をあてため息を深く吐く。


「 だが…」


 サリルトが右手を顎に当て悩んだように言い淀んだ。すかさず斎鹿がサリルト詰め寄る。


「 だが?」


「招待状までは出されたことがない」


「それ重要じゃない?」


「…やはりそう思うか」


 気が抜けた斎鹿は肩を落とし、目線の先にあったサリルトの黒い靴を思い切り踏み付けようと自身の右足に力を込め振り下ろしたが、直前に靴が後ろに避けられ斎鹿は自身の安物のスニーカーを硬い床で打ち付け、その上からサリルトが斎鹿の靴を思い切り踏む。


「くっ! なんで踏むのよ」

 

「踏もうとしたから踏んだ」


 サリルトは痛がってその場で飛び跳ねている斎鹿の手を掴むと、無表情のままベットまで引っ張って行く。斎鹿は右足を引きずり素直に着いていく。予想外に痛かったらしい。

 そして、サリルトの座れと指示するままベットに腰かける。


「靴を脱がせるぞ」


 サリルトは、床に膝をつき斎鹿の靴を脱がせるとそのまま剥き出しになった右足を診た。


「 しばらくは痛いだろうが、どこにも異常はない。それにしても…小さい足だな」


「あんたがでかいの!」


 斎鹿がベットに後ろ手をつき、足を振りこれ以上触られないよう抵抗する。

 すると、サリルトは立ち上がり斎鹿の両肩を包み込むような大きな両手でベットへと押し圧し掛かってきた。


そして、話は冒頭に戻る。

 

「…で、何で組み敷かれてんの?」


 サリルトを冷めた目で見つめ、自身の両手でサリルトの胸を押し返そうと力を込める。

 しかし、そんな抵抗はサリルトには無駄なようでそのまま斎鹿の顔に自身の顔を近づけてくる。

 

「 ちょっと、何考えてんの⁉︎ やましいことないんでしょう! こら、変態、ロリコン、シスコン! この人、痴漢です‼︎ 痴漢ですー‼︎」


「 誰が変態の上、ロリコンでシスコンで痴漢だ」


 サリルトの息が斎鹿の頬にかかり、互いの鼻と触れ合いサリルトは近づくのをとめた。

 

「 やはり、この愛嬌のある顔に低い鼻、陽射しに焼けた麦色の肌、黒い瞳、長い黒い髪、どこからどう見てもチモシーにしか見えん」


「 チモシーじゃなーい‼︎」


 そうしているうちにアルファイオス家に赤い夕陽が差し込んだ。




ありがとうございました。


2014/10/24 編集致しました。

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