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第六話 出しちゃったの?

「 現アルファイオス公爵。 年齢28歳、身長187㎝と長身に剣術で鍛えられた無駄のない絞られた身体。 流れる銀糸のような美しい髪、唯一無二の宝石のようなライドグリーンの切れ長の瞳、男らしくも整った顔立ち、現フルーレ国王ロハス様にも覚えがめでたく、国王補佐として会議事項の整理、情報収集などを行い、それを統轄する役職に就き将来性あり……斎鹿ちゃんは、うちのサリーちゃんでは何かご不満? 家柄、地位、財産、容姿、性格、こんなに整ってる殿方も珍しくてよぉ?」


 シアンが猫脚のテーブルの上に置かれた小さな呼び鈴に手を伸ばし、軽く振るとチリンチリンと高い可愛らしい音が鳴る。

 斎鹿は心の中で「性格は問題ありだ」と思ったが、お世話になっている手前黙っていると、突然4回扉をノックする音が部屋に響いた。


「 セバスチャンでございます」


 シアンが入るように指示するとそこには初めてシアンに窒息させられるほど抱きしめられた時に側に控えていた男性だ。まだ30代前半というところだろうか、豊かな黒髪は右側の前髪が左よりも長く右目は窺えない。左側の目は黒く、穏やかな顔は安心感を抱かせる。服装はマゼンタと同じ黒の燕尾服に白無地のウィングカラーのシャツ、白いベストだったが、マゼンタの白の蝶タイとは違い黒いネクタイが結ばれていた。靴は汚れ一つなく磨かれ、清潔感もある。

 セバスチャンは、部屋に入ると一礼し、テーブルまで歩いてくるとその穏やかな微笑みを斎鹿達に向けた。


「 私の執事のセバスチャン。 まだ若いけど、マゼンタの次くらいに優秀なのぉ。 セバスチャン、式の進行と式場について説明してさし上げて」


 セバスチャンは左の胸元から黒革の手帳を取り出し、栞紐が挿んであるところを開いた。


「 式は明後日、午前8時大旦那様と奥様に御挨拶をして頂き、午前10時ビスコエル大聖堂へ移動して 頂き式の御準備、午後13時結婚式を開始、午後15時結婚式を終え再びアルファイオス家へ移動、午後19時披露宴開始、午後22時披露宴終了。 ドレスの採寸等は明日の午前に入れさせて頂きました。 その他御要望があれば何なりとお言いつけ下さい」


「…結婚式中止して下さい」


「 何か御不満な点でもお有りでしょうか? お言いつけ頂ければ何なりといたしますが?」


「(すべてが不満だよ)」


 穏やかな顔と口調で随分と強烈なインパクト発言をしたセバスチャンに一瞬時が止まったように辺りが静まっていたが、斎鹿はすぐに自分を取り戻し結婚式中止を訴えた。

 しかし、セバスチャンにきょとんとした顔で聞き返され、斎鹿は心の中で不満を訴えたが開いた口が塞がらない。

 

「 セバスチャン、そもそも私はそなたに結婚するとは告げていなはずだが…」


 話を黙って聞いていたサリルトは長い脚を組み、腕組みをしたまま問いただすようにセバスチャンに尋ねる。


「 私の主人はシアン様でございますので、シアン様のご命令あればそれを叶えるのが執事でございます」


 悪びれもなく主人のためを思い行動するのはまさに執事の鏡ではあるが、迷惑この上ない。

 

「 さすが私の執事だわぁん」


 セバスチャンは主人からの褒め言葉に口元を緩める。


「 お姉さん、私と弟さんはまだ会って1日も経ってないし、そもそもお互い恋愛感情なんてまったくこれっぽっちもないんです」


「 あら?じゃあ、斎鹿ちゃんはどうするの?

斎鹿ちゃんが思ってるほどこの国は甘くないわよ。 戸籍のないものは雇ってもらえなし、そもそも異世界人である斎鹿ちゃんはこっちの常識も知識もないのにどうやって働くつもりなの? 私はサリーちゃんが結婚して跡継ぎが必要、斎鹿ちゃんはいつ帰れるかもわからないし戸籍が必要=結婚して両方手に入れましょう! 何かおかしいこと言ってる?」


「 でも、結婚はお互いを尊敬し合って相思相愛の末するものですよ」


 ここで引き下がるものかと前のめりになった斎鹿がシアンの言葉に喰い付く。


「 姉上、ここは今一度考え直す時ではありませんか? 落ち着いて考えれば他にいくらでも戸籍を作る方法も跡継ぎをつくる方法もあります」


 サリルトもこのまま話を進められたのではかなわないと、他の案をシアンに提案しようとするが、シアンはそんな弟の話を頬を膨らませ左手で右肘を支え、右手を顎にあてて不満そうに聞いている。

 サリルトの思わぬ反撃に斎鹿も続けとばかりに勢いよく話す。


「 初めていいこと言った! そうです、お姉さん、跡継ぎなんてのは弟さんの家柄、地位、財産、容姿、性格をもってすればどんな美人でもイチコロです。 私なんか足元にも及ばない可愛いお嫁さんを貰ってください」


勝った!と斎鹿は心の中でガッツポーズをした。


「 でも、招待状送っちゃったし、今さら取り消しって訳にはいかないと思うのよね」


 笑顔で爆弾発言を言い放ったシアンに斎鹿は肩の力が抜け垂れ下がった。


「えっ?出しちゃったの?」


「そう、出しちゃったのぉ、ふふ」


 満面の笑みのシアンは小悪魔を通り越し、悪魔になった。




ありがとうございました。


2014/10/24 編集致しました。

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