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第四十七話 義理の両親

 話はシアンの独壇場で続き、主役であるはずの2人は顔を見合わせた。こういう時には息が合うのだから不思議なものだ。

 ロハスはシアンの話を大口を開けて笑いながら聞き、総一郎はシアンの言葉の間違いに対して揚げ足を取ったりするものだからますますロハスの笑いは止まらない。ついには指をパチンと鳴らし、セバスチャンに酒を頼む始末だ。

 

「 …解散するんじゃなかったの?」


 斎鹿の呟きももはや聞いている者はおらず、このままここにいてもまた面倒に巻き込まれることをこれまでの経験から感知した斎鹿は鞄の内側を引っかいているサリィを片手で抱き上げた。鞄を肩から下げてその中に再びサリィを入れて頭をそっとひと撫でする。それが心地よかったのか自ら手に擦りよってくるサリィに思わず口元が緩んでしまう。

 

「 それでは、我々は明日のことがありますのでこれで失礼致します」


 斎鹿が『んっ⁉︎』と怪訝そうな顔でサリルトを見ると、3人に丁寧に頭を下げている姿が目に映った。ロハスはすでに酒が入っているのか陽気に手を上げて返事をしている。

 サリルトは斎鹿の手首を掴み強引に部屋を出て2階を目指して歩き出す。

 

「 私の部屋は?」


 ますます力は増して引きずるようにサリルトの執務室へと連れてこられていた。



( それから、何だかんだルーがしゃべってて、何故か一緒に寝ることになって、何故か抱き締められて寝て…?)


 斎鹿はあたりが明るくなっていることに気付いた。どうやら昨日のことを思い出しながら寝てしまったようだ。目を開けなければと思う反面、まだ寝ていたいという思いから布団の中に潜り込もうと身体はしてしまう。


「 かぁわぁいー」


 この言い方は…と斎鹿はため息を吐きたくなった。どうやら未来のお姉さんは勝手に義妹の寝室に忍び込んで寝顔を観察趣味があるらしい。もし、昨日の夜に何かあったらどうするつもりなのかと思いながら、斎鹿の頭はすっかり起きてしまったようだ。

 恐る恐る見たくない現実がないよう祈りながら瞼をゆっくりと開けていく。


「 えっ?」


 思っていた人物とは違う人間がベット脇に置いた手に顎を乗せて斎鹿を満面の笑みで見詰めている。

 斎鹿はその時に見た瞳の色に見覚えがあった。


「 あ、あの、もしかしておかぁ、むがっ!」


「 かわいいわぁんっ」


 斎鹿の言葉を遮るように女性が寝ている斎鹿に飛び掛かった。

 女性は斎鹿の上に半分乗りかかり斎鹿の顔に頬ずりをするが、斎鹿はそれをやめさせようと女性を引き離そうともがいている。


「 もぉ、あの子ったら浮いた噂がないと思ってたらこぉんな可愛い子がタイプだったなんて知らなかったわぁん。でも、年齢的には問題ない…のよね? でもぉ、問題あっても何とか出来ちゃうから大丈夫よん。権力ってあっても面倒なだけだけどぉ、こぉいう時に使えるのよねぇ」


「 やぁ、やめて下さい‼︎」


「 まぁん‼︎ これから親子になるっていうのに敬語なんていらないわよぉ? あたくしのことはマミー? ママ? お母様? 母上? 母上はなしねぇ…あの子みたいになったら困っちゃうわぁん。だって、せっかくかわいいんですもの‼︎」


「 話を聞いて下さいよ…」


 斎鹿の声がまったくと言っていいほど耳に届いていないようで、女性は気にせずに頬ずりを続けて話し続けている。


「 母上、勝手に入ってくるのはやめて下さい」


 隣で寝ていたはずのサリルトはいつから起きていたのか執務室へと続く扉から男性を伴ってやってきた。男性の歳はマゼンタぐらいだろうか。その威厳溢れる風格はまさしく貴族といえる。

 女性はサリルトの声に上半身を起こした。


「 あらぁん? 我が愛息様はご機嫌斜めでいらっしゃるのねぇ?」


「 当たり前のことを言ったまでです」


 女性は頬を膨らませて軽く弾むようにサリルトの側にいる男性の腕へと飛び付いた。

 斎鹿は起き上がりベットから3人の様子を眺めていた。やはりどう見ても親子だ。どうやら母親の性格は姉と同じのようだが。


「 斎鹿ちゃん、あたくしはサリルトの母、マリーナよぉ。 それからぁ、こちらのサリルトそっくりさんがあたくしの旦那様ぁ、アーバインよ。これからはママ、パパって呼んでねぇ?」


「 ……どこの馬の骨とも思えない女が大切な御子息と突然結婚したいって、いや、私はしたくないんですけど、いいんですか⁉︎」


 斎鹿はタオルケットを胸元まで上げた。側で丸まって寝ていたサリィも騒ぎに起きてきたのか、ふかふかのベットの上をふらつきながら歩いている。

 マリーナは斎鹿の問いに首を傾け、アーバインを見上げた。アーバインはその視線を感じたからかその腰に来るような低い声ではっきりと答えた。


「 構わない」


「 構って下さい」


 最後の結婚阻止の砦だと思っていた両親のあまりにもあっさりした結婚承諾に斎鹿の方が断わってくれと切に願っていたがどうやら叶えられないらしい。


「 さぁ、斎鹿ちゃん! 花嫁さんに変身する時間よぉ」


 斎鹿は諦めるようにため息を吐き、サリィを抱き上げてベットから下りた。


 

ありがとうございました。


2014/11/03 編集致しました。

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