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第四十六話 よよよっは古い?

 斎鹿はベットの中で嫌なことを思い出したと頭を振った。

 ふと視線を落とし、腹に巻かれている手を見ると存外にも強く巻きつかれ、なかなか外すことは出来なさそうだ。斎鹿はせめてもの抵抗に横向きの体勢で海老のように腰を曲げて勢いよくサリルトから離れるようと頑張るが、離れようとすればするほどサリルトは金魚のフンのようにくっついてくる。


「 な、なんなのよぉ」


 きっと起きていたら鼻で笑うであろう男を想像してさらに斎鹿は頭を振った。

 そして、腹が立てば立つほどに先程の記憶が呼び起こされた。


 足元にもぞもぞと動くものに斎鹿が視線をやると、そこには頭を懸命に擦りつけるサリィがいた。

 どうやらずっとこの部屋にいたらしかったが、椅子の下に隠れていたようで発見できずにいたようだった。それとも、総一郎の出現に気をとられていたからだろうか。

 どちらにせよ斎鹿にとって1番癒しを与える存在が現れたことはよかったと言えるだろう。殺伐としていた斎鹿の雰囲気を少しでも和らげてくれたのだから。


「 ほら、サリィが一緒にどこでも行けるように鞄を買ってきたよ」


 斎鹿は鞄をサリィに見せるように床の上に置いた。サリィはそれに興味津々のようでにおいを嗅いで鞄の周りを1周すると開けられていた鞄の内部へと探索行動を広げていった。斎鹿はその行動をじっと微笑ましそうにしゃがんで見ながら鞄を上からサリィをからかうように触ったいた。


「 話を戻すが」


 ロハスがその斎鹿の行動に口元をゆるめながら話を元に戻そうと口を開いた。


「 お待ちになさい。 あなた達が決めていたのでは埒が明かないわぁ。私が決めてあ・げ・る」


 どこから取り出したのか黒い扇子で口元を隠し、目元を細めたシアンがその言葉を遮った。


「 いや、ほんと、いいですから。自分たちで決めますから…ねぇ、ルー⁉︎」

 

「 そうです、姉上。お手を煩わさせず、すぐに迅速に決めさせて頂きます」


 斎鹿は手を止め、シアンの発言でこれ以上ややこしくなるのは勘弁とばかりに必死にサリルトにも同意を求める視線を送る。サリルトもその視線を受けて結託した。2人は必死だったがそんな思いはシアンに届くはずもない。


「 ふふ、そうねぇ。まずぅ、新契約結婚の勧め5カ条は採用で決定よねぇ? お部屋はちょっと窮屈だけどぉ、用意が整うまで昨日のお部屋を使ってぇ…それから執事とメイドも何人か付けなくてはいけないわぁ! それからそれから、明日は何とか気力で乗り切ってぇ、次の日からはお茶会の予定やパーティーの予定を立てつつレッスンでしょぉ?それからそれからそれから、跡継ぎは」


「 ちょ、待って…」


「 あらぁん? 何か問題あってぇ?」


「 あり過ぎです‼︎」


 斎鹿は立ち上がり右手の拳を握りしめた。

 シアンはその斎鹿の懸命な訴えに扇子で目元を隠すようにすると、よよよっと泣き出す真似をした。


「 だ、だって、どうしようもないんですものぉ‼︎ せっかく、せっかーく、私が今日、敏腕家庭教師になってぇ、教えてさし上げようと思っていたのにぃ、2人はデートでランデブーなんだものぉ。 よよよっ」


「…っ‼︎」


 斎鹿は痛む良心が崩れないように胸を押さえた。泣き真似とはわかっていてもシアンが自分のことを考えてしてくれたことを台無しにしてしまったという思いは斎鹿の心にグサッと突き刺さった。


「 よよよよよっ‼︎ あぁ、悲しいわぁん‼︎」


「 わ、わかりましたっ」


 斎鹿の言葉に瞬時に扇子を口元まで下ろしにこっと笑ったシアン。


「 でもぉ、誓いの言葉だけは今日中に何とかしてねぇ?」


「…へ、へい」


「 あらぁ、変わったお返事ね。よろしくてよぉ、面白くてぇ。 明日も早いんですものぉ。今日はもう解散にしましょぉ?」


 シアンは立ち上がり満足げな笑みを浮かべた。


「 姐さん、よよよって古ない?」


 総一郎の言葉にシアンから扇子が飛んできたことは仕方がないことだった、と言うしかないだろう。



新しく再upしました。

申し訳ありません。

ありがとうございました。


2014/11/03 編集致しました。

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