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第二十六話 結婚は結構?

 サリルトはベットに手をついて起き上がり膝立ちになると、背に乗っていた斎鹿はそのまま滑り落ちて柔らかなベットへその身を弾ませた。掴んだままの手首を引っ張り枕の方へと斎鹿を引き上げると、軽い斎鹿の身体は力に逆らえずに白い枕へと頭を落とした。あっという間の出来事に斎鹿は文句も言えずなすがままだ。サリルトは手首を離し、斎鹿の顔の左右に両手を片手ずつつく。斎鹿は仰向けに押し倒され、その上に足を広げて両足で斎鹿を挟むようにして乗るサリルト。

 長いサリルトの銀髪が斎鹿の顔にかかる。


「前にもこんなことなかった?」


 斎鹿の視線は目線は泳ぎサリルトの真剣な雰囲気にのまれてはいけないと必死に話題を変えようとするがサリルトは真っ直ぐ斎鹿を見詰めている。その視線は熱くまるで恋人をみるような目だった。


「 何かさ。お、落ち着いて話すとお互い分かりあえるってかさ…」


 サリルトは右手で斎鹿の頬をすっと撫でるように触れる。この世界の女性ならサリルトの美しさと魅惑の視線で身も心も委ねてしまうだろうが、あいにく斎鹿はこの世界の出身でもないし色恋には経験がなかったのでぞっと背筋に鳥肌が立った。

 

「 結婚は無理‼︎ こーゆーことも無理‼︎ 」


「…わからんが唐突に思った。おまえなら気を遣わなくてもいい」


「 いや‼︎ 他の人でも大丈夫だと思うよ!」


 斎鹿はくっつきそうなサリルトの身体を押し返そうと両手を胸にあてて力の限り押す。

 しかし、サリルトは気に留める様子もなく斎鹿の耳元へ息がかかる程唇を近付けるとそっと囁いた。


「 皆が言うように、気の強い女の方が合っているのかもな」


 心の中では色気のない叫び声を上げた斎鹿だったが、サリルトのセリフを呑み込むと顔がさっと青くなりある疑惑が斎鹿の中で浮上する。


「 あ、あんた、もしかしてMっ⁉︎」


「 えむ?」


「 Sじゃないからご希望には答えたれませんよー‼︎」


「 えす?」


 斎鹿はサリルトの胸にあてていた手に一層力を込めて押すとサリルトの身体は少し離れ斎鹿は希望の光が見えた様だった。だが、それは斎鹿の力ではなく斎鹿の言葉に疑問を感じたサリルトがその身をどかしただけなのだが斎鹿はそんなことも知らずに力を込めて押している。


「 それは何だ」


「…えっ」


 少し離れたことによって再び熱のこもったサリルトの視線を直視することになり視線を逸らそうと顔を背けようとすると、サリルトが手で両頬を押さえて動けないようにする。


「 素直に答えればよし、答えなければ」


 サリルトは顔を斎鹿の顔に近付け今にも口と口が触れ合いそうだ。

 避けようもない斎鹿は我慢できなくなったように話し出す。


「 Mはマゾヒズムっていって精神的肉体的にいじめられるのが好きな人で、Sってのはサディストで精神的肉体的にいじめるのが好きな人。どっちもその……性的な意味で」


 サリルトは考え込むように黙り、少しだけ手が緩んだ隙に逃げようと身体を捻り手を遣って起き上がろうとするが、サリルトはそれを許さず斎鹿の肩を掴み強引に引くと元の体勢戻されてしまった。


「……私はどちらかというとSだ」


「そんな情報いらん‼︎」


 斎鹿は威嚇する子犬のように唸るがサリルトにとって子犬の威嚇など恐いはずもなく再び迫ってくる。


「 わ、私、好きな人と結婚したいしっ」


「 私を好きになればいい」


「 愛し合って結婚したいしっ」


「 愛はそのうち見つかる」


「 相性が合う人が良いしっ」


「 今から試せばいい」


「 いや、そういうことじゃなくて…服に手を掛けるのやめてー! そういう意味じゃなくて、性格‼︎」


 サリルトは肩紐に手を掛けたが、それを止めようと斎鹿が身体を動かし暴れて、髪も乱れベットと服との摩擦で衣服が余計に淫らに乱れていることに気付いていない。


「 唐突に思って結婚は出来ないからっ」


「 おまえと結婚したら面白そうだと思った。 お嬢様ではこちらも気を遣わなければならない」


「 面白さと楽さで結婚されたらたまらんわ‼︎」


「 よいではないか」


「 お代官様か‼︎」


 サリルトは斎鹿の唇に己の唇を近づけていく。斎鹿は避けようと暴れたり、顔を背けようとするががっちりと身体と手で押さえられているのでビクともしない。斎鹿はこうなったら自棄だとやられる前にやってやろう精神で首で頭を持ち上げてサリルトの額に思いっきり自分の額をぶつけた。その時に唇に柔らかい感触と一瞬の痛みを感じたがとりあえず忘れることにしようと斎鹿は脳内で決定した。


「 馬鹿娘‼︎」


 斎鹿に馬乗りになりながら上半身を起こして額を右手で押さえているサリルトはいつものように斎鹿に地の底から湧き上がったような声を出す。


「 目が覚めたか、この色ボケ公爵‼︎」


 斎鹿がサリルトの顔を首を持ち上げて見ると、唇から血がわずかだが出ており先程忘れようとしていた感触は間違いなくサリルトの唇だったことが決定付けられた。


「 おまえからしてくるとはいい度胸だ…褒美に本当の口付を教えてやろう」


 サリルトは額に血管を浮かべながら明らかに怒気のはらんだ顔をして再び斎鹿の顔に急接近してきた。さすがの斎鹿も2度目があるとは思わずこのままされると思い、誰でもいいから助けてっと心の中で叫んだ。


「 御機嫌よう、お姉さまよぉん」


 バンっと勢いよく笹百合の扉が開きにこやかに入ってきたのは、先程泣きながらアルファイオス家を後にしたシアンだった。

 シアンは、ベットの上でサリルトが斎鹿の上に馬乗りになっているのを確認すると驚いたように目をぱちぱちと瞬いた。


「 あらぁ? お楽しみでだったかしら、ふふっ」


( 誰でもいいとは思いましたが、この人だけは勘弁して欲しかった…)



ありがとうございました。


2014/10/27 編集致しました。

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