出会いと別れを繰り返さないといけない階層に区切られた世界の話
そこは働き続ける地下施設
各階層に暮らす住民は階の設備に応じた仕事をしないといけない。階層の外に出ることはできず、仕事をこなせなければ給与も食事も与えられない。人々はより上の階層に上がることを夢見ている。上の階層に行くほど出口に近づくし、上の階層の仕事のほうが楽で報酬も多いと言われているからだ。
月に一度給与という形で葉っぱが支給される。葉っぱを使うと通常地下では手に入らない便利なものや甘美がもらえる。しかし給与は各階層のトップに一括で渡されるため、末端に届く量は少ない。
12歳くらいの少女、イデアは7階層目で働く機関工だった。鉱山口からたまたま見つけた小さな生き物、フォックスをかたに乗せている。
イデアは働き者で、その噂を知る一つ上の階層に住む管理者はイデアを上の階層につれてくるよう命じる。いわゆる出向。中小企業から大企業の奴隷に昇格するような引き抜きとも言える。
給与の支給日、彼女の先輩であるチェチェロワは、イデアに上の階層への異動命令を伝える。しかし彼女は自分より先に上に上がるイデアに嫉妬し、給与の代わりにゼリー大福10個を渡そうとする。価値は見合うが、勝手に日持ちしない食品に交換されるのは明らかな嫌がらせだった。イデアはもちろん怒るが、せめて大福12個なら許しても良いと提案する。
チェチェロワは自分用に買っていた12個の大福を見せるも渡すつもりはなくたぶらかす。イデアは「上の階層でも頑張れるからそっちをちょうだい」と揉めだすがチェチェロワに殴られ口元に怪我をする。
その隙に、別の同僚たちはイデアの10個入りの大福に手を出し食べ始めてしまう。チェチェロワは「文句言ってるからこうなる」とあざ笑う。
イデアは「嘘だよね」と皆を止める。そして「だったら私が食べる!」と残っている大福をひと噛みするが、口元の傷が傷んだ。
「痛い…でも美味しい…」
そう言って少し満足するのもつかの間、残りの大福は同期たちが食べてしまった。
イデアは諦めフォックスを乗せてとその場を去る。そして上の階層に行くことを決意する。
上の階層に行くには条件がある。一つは上の階層から指名されること。もう一つは、同じ階層にいる人間3人が協力して一人を上に上げること。
上階への通路は基本的に排気口しかないが、その排気口を通るためには、網の取り外しと空調の停止をしないといけない。上の階層からなら簡単にできるが、下の階層からは誰かが手動で歯車を回して網を引っ張り、また離れたところにある別の回路で空調を止めないといけない。
つまり必ず誰かは下の階層に残ることになる。
同じ階層で信頼を得られた、徳のあるものだけが上に行けるのだ。最も、各階層では階層ごとに人間社会が構築されており、上の階層への扉はその階層で一番偉い管理者が支配している。上に許可なく勝手に上層に上がれば不法出国、不法入国になり、上の階層では最低身分を突きつけられる(ただし突き返されることはない)。
ただ、許可や上の階層からの要請によって人が送られる場合も、殆どの場合は最低身分からスタートされる。というのも、上の階層ほど偉い立場にあるのは事実であるため、下の階層の民は見下される。合法であろうが違法であろうが新入りは下っ端と決まっている。そのため、上の階層にいるからと言って必ずしも良い生活ができるわけじゃない。
施設で生きる人達は、基本的に自分のことと、自分の階層のことしか見ていない。層のリーダーだけが上下1階層と通信できるだけ。自分たちの層の人手が足りなくなると更に下の階層から補充要員を指名して補充することになる。だが下の階層もただでは動いてくれないため下の層に少しばかりの賄賂を流す必要がある。
もし下の階層の何処かが上層からの要請を拒否すれば、上層は手が打てなくなったりする。だがそれは下層にとっても上層に行くチャンスを逃すことになるため、結託することは難しい。
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別の階層では自閉症の男、イマスがいた。彼は能力こそ優秀で階層ではかなりのエリートだった。しかし人間関係に難があり、自分の趣味話が通じない相手だと分かると全く話さなくなる。逆に通じる相手だと思ってしまうとかまちょになってしまい、結局相手から拒絶される。
だがそんな彼にも友達が二人いた。地味だが金の猛者であるシロリー。地味だがイマスとはちょっと異なる思考で音楽にはまるベガス。彼等は階層の外れもの。また細かい嗜好は違うため常に一緒ではないが、おなじはぐれ者同士仲良くやっていた。
しかしイマスは地上の光を求めるため、二人の力を借りて上の階層へと向かった。
地下施設に救いはあるのか。地上には何があるのか




