第59話 レオンの転移
第59話 レオンの転移
「準備はできましたか?」
アルカナが三人に確認して、レオン、エリア、セレスが頷く。今日はついに人間の転移実験を行う日で、全員が緊張している。工房のテーブルには測定機器が並んでいて、実験前後の状態を記録する準備が整っている。
「では」
アルカナが装置を起動する。
「今日は三人が転移するわ」
「誰から始めますか?」
セレスが尋ねる。
「私から」
レオンが手を挙げる。
「私が最初に行きます」
「大丈夫?」
「大丈夫です」
「アルカナさんが成功したんですから」
「そうね」
「では準備しましょう」
四人はレオンの転移前の状態を記録する。体重、体温、心拍数、呼吸数を測定する。
「記憶のテストを」
「あなたの名前は?」
「レオンです」
「あなたの年齢は?」
「二十歳です」
十個の質問にレオンが答え、記録する。
「感情のテストを」
「今の気分は?」
「緊張していますが」
「楽しみでもあります」
「では」
アルカナが装置を調整し、五メートルから始める。出力と範囲を最小にして安定ボタンを押す。
「五メートルから始めるわ」
「準備できたわ」
レオンが歪みの前に立って深呼吸する。
「行きます」
一歩踏み出して歪みに触れると消える。三人は見守りながら十分待つと、レオンが五メートル先に現れる。
「レオン」
エリアが駆け寄る。
「大丈夫?」
「大丈夫です」
「成功しました」
三人は安堵する。
「では」
「状態を確認しましょう」
レオンの体重、体温、心拍数、呼吸数を測定すると全て転移前と同じだ。
「全て転移前と同じです」
「記憶のテストを」
同じ質問にレオンが答えると、全て転移前と同じ答えだ。
「記憶も問題ありませんね」
「感情は?」
「今の気分は?」
「安心しました」
「無事に転移できて良かったです」
「感情も正常ですね」
「では」
「転移中の感覚はどうだった?」
「不思議でした」
「一瞬、ふわっとした感じ。そして、気づいたらここにいました」
「痛みは?」
「ありませんでした」
「めまいは?」
「少しありました」
「でも、すぐに治まりました」
「アルカナさんと同じですね」
「では」
「もう一度試してみてもいいですか?」
「そうね」
「十メートルにしましょう」
出力を調整してレオンが歪みに入り、転移して現れる。確認しても異常なしだ。
「では」
「五十メートルも試してみます」
「大丈夫?」
「大丈夫です」
アルカナが出力を調整し、レオンが転移して現れる。確認しても異常なしだ。
「完璧ですね」
「では」
「次は私が行きます」
「大丈夫?」
「はい」
「レオンが成功したんですから」
四人はエリアの転移前の状態を記録する。測定と質問を全て記録する。
「では」
アルカナが装置を調整し、五メートルから始める。
「五メートルから始めるわ」
エリアが歪みの前に立って深呼吸する。
「行きます」
歪みに入って転移し、現れる。三人が駆け寄って確認すると異常なしだ。
「大丈夫?」
「大丈夫です」
「では」
「次の距離も試してみます」
十メートル、五十メートルと順番に転移し、全て成功する。
「私も大丈夫でした」
「では」
「最後は私ですね」
「大丈夫?」
「はい」
「二人が成功したんですから」
四人はセレスの転移前の状態を記録する。
「では」
アルカナが装置を調整し、五メートルから始める。
「五メートルから始めるわ」
セレスが歪みの前に立って深呼吸する。
「行きます」
歪みに入って転移し、現れる。三人が駆け寄って確認すると異常なしだ。
「大丈夫?」
「大丈夫です」
「では」
「次の距離も試してみます」
十メートル、五十メートルと転移し、全て成功する。
「私も大丈夫でした」
「では」
「四人全員が転移に成功したわね」
「そうですね」
「では」
「もっと長い距離を試してみましょうか」
「そうね」
「百メートルを試してみましょう」
「誰から?」
「私から」
アルカナが出力を百メートルに調整し、レオンが転移して通路の先に現れる。三人が走って確認に行く。
「大丈夫?」
「大丈夫です」
確認しても異常なしだ。
「では」
「私も試します」
エリアが転移して確認しても異常なしだ。
「では私も」
セレスが転移して確認しても異常なしだ。
「では」
「私も試してみるわ」
アルカナが転移して確認しても異常なしだ。
「では」
「最大距離を試してみましょうか」
「二百メートル?」
「はい」
「私が試してみます」
「危険では?」
「大丈夫でしょう」
「今まで全て成功しましたから」
「そうね」
「でも慎重に」
アルカナが出力を最大の二百メートルにする。レオンが転移して遺跡の別の場所に現れる。三人が時間をかけて走って確認に行き、レオンを見つける。
「大丈夫?」
「大丈夫です」
「少しめまいが強かったですが」
確認しても異常なしだ。
「では」
「今日はここまでにしましょう」
「そうですね」
四人は装置群の空間に戻り、アルカナが装置を停止させて深層部を後にし、遺跡の外に出る。
「今日は全員が転移に成功しました」
「五メートル、十メートル、五十メートル、百メートル」
「そして」
「レオンは二百メートルも成功しました」
「全員異常なく」
「わずかなめまいがあっただけです」
「そうね」
「人間転移は安全よ」
四人は工房への帰路につき、工房に戻って記録を整理する。
「全員の転移実験」
セレスがノートに書き込みながら結果をまとめる。
「レオン、エリア、セレス。全員転移成功」
「転移距離」
「五メートル、十メートル、五十メートル、百メートル。レオンは二百メートルも成功」
「測定結果」
「全員異常なし。わずかなめまいあり」
「次は」
「遺跡内での移動に転移を使ってみましょう」
「遺跡内での移動?」
「はい」
「深層部から入口まで、転移で移動するの」
「便利ですね」
「明日、試してみましょう」
四人は夕食を作って食事を済ませ、明日への準備を整える。




