第53話 大型物体の転移
第53話 大型物体の転移
「今日は大きな物を転移させます」
レオンが宣言して、四人は装置群の周囲を見渡す。これまでは小石や手のひらサイズの物体しか転移させていないが、真の限界を見極めるには大型物体の実験が必要だ。エリアが装置の部品を指差して、試してみようと提案している。
遺跡に到着すると、いつもの手順で深層部へと進んで装置群の空間に入る。
「では」
アルカナが装置を起動する。
「今日は大きな物を転移させるわ」
「どのくらい大きな物ですか?」
レオンが尋ねる。
「歪みの限界、直径5メートルに近い物よ」
アルカナが答える。
四人は空間を探す。大きな物を探して。
「これはどうでしょうか」
エリアが装置の台座を見つける。
石でできた台座。一辺が4メートルほどの立方体。
「かなり大きいですね」
セレスが測定する。
「一辺4メートル。重さは」
四人で押してみるが、びくともしない。
「千キログラム以上ありそうです」
レオンが言う。
「では」
アルカナが範囲を最大にすると、歪みが直径5メートルになる。
「台座を歪みまで運びましょう」
四人で台座を押すと少しずつ動き、十分かけて歪みまで運ぶ。
「では」
アルカナが言う。
「押し込んでみましょう」
四人で台座を歪みに押し込むと、台座が少しずつ歪みに入っていく。
全体が歪みに入って消える。
「消えました」
エリアが確認する。
十分待つと、台座が転移先に現れる。
「成功しました」
セレスが驚く。
「千キログラム以上、4メートルの物体が転移しました」
「すごいですね」
レオンが感心する。
「では」
アルカナが考える。
「もっと大きな物はないかしら」
四人は空間を探す。
「この装置全体はどうでしょうか」
エリアが大きな装置を見る。
球体と柱が組み合わさった装置。高さ5メートル、幅4メートル。
「5メートルですね」
セレスが測定する。
「歪みの限界ぎりぎりです」
「動かせるでしょうか」
レオンが装置を押すと、装置は固定されておらず動く。
四人で押すと少しずつ移動し、三十分かけて歪みまで運ぶ。
「では」
アルカナが言う。
「押し込んでみましょう」
四人で装置を歪みに押し込むと、装置が歪みにぎりぎり入っていく。
全体が歪みに入って消える。
十分待つと、装置が現れた。
「成功しました」
エリアが確認する。
「5メートルの物体が転移しました」
「では」
セレスが考える。
「5メートルが限界なんですね」
「そうね」
アルカナが頷く。
「歪みの大きさが限界よ」
「では」
レオンが提案する。
「重さの限界も調べてみましょう」
「そうね」
アルカナが同意する。
四人は重い物を探す。
「この金属の塊はどうでしょうか」
エリアが巨大な金属塊を見つける。
幅2メートル、高さ1メートル。
「かなり重そうです」
四人で押すが、ほとんど動かない。
「二千キログラム以上ありそうですね」
レオンが言う。
「では」
アルカナが言う。
「歪みまで運びましょう」
四人で金属塊を少しずつ押して、一時間かけて歪みまで運ぶ。
「では押し込みましょう」
アルカナが言う。
四人で金属塊を歪みに押し込むと、金属塊が歪みに入って消える。
十分待つと、金属塊が現れた。
「成功しました」
セレスが確認する。
「二千キログラムでも転移しました」
「では」
アルカナが考える。
「重さの限界は、かなり高いわね」
「もっと重い物はありますか?」
エリアが空間を見回す。
「これ以上重い物は、運べませんね」
レオンが言う。
「では」
セレスが整理する。
「確認できた限界は、大きさ5メートル、重さ二千キログラムですね」
「そうね」
アルカナが頷く。
「実際の限界は、もっと高いかもしれないわ」
「では」
レオンが提案する。
「複雑な形状の物も試してみましょうか」
「そうね」
アルカナが同意する。
四人は複雑な形状の装置を探す。
網目状の装置を見つける。金属の棒が複雑に組み合わさっている。
「これを転移させてみましょう」
装置を歪みまで運んで押し込むと、消える。十分待つと現れた。
「成功しました」
エリアが確認する。
「網目状でも問題ありませんね」
「次は」
セレスが提案する。
「不安定な形の物はどうでしょうか」
四人は不安定な形の物を探す。
細長い柱。高さ5メートル、太さ30センチ。
「これは倒れやすそうですね」
レオンが柱を見る。
「では」
アルカナが言う。
「立てたまま転移させてみましょう」
柱を歪みまで運んで立てると、柱が歪みに入って消える。
十分待つと、柱が立ったまま現れた。
「立ったまま転移しました」
エリアが驚く。
「姿勢も保たれるんですね」
「そうね」
アルカナが頷く。
「転移は、物体の状態を保つのよ」
「では」
セレスが考える。
「動いている物はどうでしょうか」
「動いている物?」
レオンが尋ねる。
「回転している物とか、振動している物です」
セレスが説明する。
「試してみましょう」
四人は円盤状の装置を見つけて回転させ、歪みまで転がす。
回転しながら歪みに入って消える。
十分待つと、円盤がまだ回転しながら現れた。
「回転も保たれますね」
エリアが確認する。
「では」
レオンが提案する。
「複数の物を同時に転移させてみましょうか」
「そうね」
アルカナが同意する。
四人は石、金属、木など複数の物を集めて歪みの前に並べ、同時に押し込む。
全て消えて、十分待つと全て現れた。
「同時に複数でも転移しますね」
セレスが確認する。
「では」
アルカナが考える。
「接触している物はどうかしら」
「接触している物?」
エリアが尋ねる。
「二つの物が繋がっているの」
アルカナが説明する。
四人は二つの石をロープで繋ぎ、一つ目の石を歪みに入れると消える。
ロープが引っ張られて二つ目の石も歪みに引き込まれ、消える。
十分待つと、二つの石がロープで繋がったまま現れた。
「繋がったまま転移しますね」
レオンが確認する。
「では」
セレスが考える。
「容器に入っている物はどうでしょうか」
四人は箱を用意して中に小石を詰め、箱を歪みに入れると消える。
十分待つと箱が現れて、開けて確認すると小石は全て入っている。
「容器ごと転移しますね」
エリアが言う。
「そうね」
アルカナが頷く。
「転移は、物体全体を扱うのよ」
四人は実験を続けて様々な大型物体を転移させるが、全て成功する。
「今日はここまでにしましょうか」
セレスが提案する。
「かなり実験しました」
「そうね」
アルカナが装置を停止させる。
四人は深層部を後にして遺跡の外に出る。
「今日は大型物体の転移を実験しました」
レオンが言う。
「確認できた限界は、大きさ5メートル、重さ二千キログラムです」
「複雑な形状でも」
エリアが続ける。
「網目状、不安定な形、全て転移しました」
「姿勢も保たれ」
セレスが言う。
「回転も、接続も、容器も、全て保たれます」
「そうね」
アルカナが頷く。
「転移技術は、とても精密よ」
四人は工房への帰路につき、工房に戻って記録を整理する。
「大型物体の転移実験」
セレスがノートに書き込む。
「限界値:大きさ5メートル、重さ二千キログラム以上」
「物体の状態保持」
レオンが続ける。
「姿勢、回転、接続、容器、全て保たれる」
「次は」
アルカナが考える。
「転移方向の制御を詳しく調べましょう」
「転移方向?」
エリアが尋ねる。
「はい」
アルカナが説明する。
「今は東西南北の四方向だけど、もっと細かく制御できるかもしれないわ」
「そうですね」
セレスが同意する。
「明日、調べてみましょう」
四人は夕食を作って食事を済ませ、転移方向の制御実験のために明日への準備を整える。




