第51話 失敗の条件
第51話 失敗の条件
「失敗する条件を探しましょう」
アルカナが提案して、四人は工房のテーブルに集まる。これまでの実験では全て成功しているが、装置の限界を知るためには失敗する条件も特定する必要がある。レオンがノートを開いて、これまでの成功例を確認している。
遺跡に到着すると、いつもの手順で深層部へと進んで装置群の空間に入る。
「では」
アルカナが装置を起動する。
「今日は失敗する条件を探すわ」
「どうやって探すんですか?」
レオンが尋ねる。
「様々な極端な条件を試すのよ」
アルカナが説明する。
「とても重い物、とても大きな物、とても速い物」
「分かりました」
セレスが記録の準備をする。
「まず重さの限界を試してみましょうか」
エリアが提案する。
「そうね」
アルカナが同意して、四人は重い物を探し始める。装置の部品や大きな金属塊が転がっている。
「これは百キログラムくらいです」
レオンが金属塊を見る。
「前回転移しましたね」
「では二百キログラム」
四人はさらに大きな部品を運ぶ。
歪みに入れる。転移する。
「成功しました」
セレスが確認する。
「では」
アルカナが考える。
「もっと重いものはないかしら」
四人は空間を探す。
装置そのもの。大きな柱状の装置。
「これは三百キログラム以上ありそうです」
レオンが装置を見る。
「動かせるでしょうか」
四人で装置を押すと少しずつ動き出し、時間をかけて歪みまで運んでいく。
ようやく歪みに到達して押し込むと、装置が消える。十分待つと、また現れた。
「三百キログラムでも転移しました」
エリアが驚く。
「では」
セレスが考える。
「重さの限界はかなり高いんですね」
「そうね」
アルカナが頷く。
「少なくとも三百キログラムまでは転移できるわ」
「では」
レオンが提案する。
「大きさの限界を試してみましょう」
四人は大きな物を探す。
「歪みより大きな物を無理やり入れてみましょうか」
エリアが提案する。
「危険かもしれないわよ」
アルカナが警告する。
「慎重にしましょう」
レオンが長い木の板を見つける。長さ6メートル。
「歪みは最大で直径5メートル。この板は6メートルです」
彼が板を歪みに差し込もうとする。
板の先端が歪みに触れるが入らず、歪みの端に引っかかる。
「入りませんね」
レオンが板を引いて確認する。
「では」
セレスが考える。
「斜めに入れてみましょうか」
板を斜めにして歪みに差し込むと、先端は入るが途中で引っかかってしまう。
「やはり入りませんね」
エリアが言う。
「歪みより大きな物は転移できないんですね」
「そうね」
アルカナが頷く。
「歪みの大きさが物理的な限界よ」
「では」
レオンが考える。
「生き物はどうでしょうか」
「生き物?」
セレスが尋ねる。
「小さな虫とか」
レオンが説明する。
「危険かもしれないわ」
アルカナが警告する。
「でも、試す価値はあるわね」
四人は虫を探し、遺跡の隅に小さな虫を見つける。
「この虫を使いましょう」
レオンが虫を捕まえて小さな箱に入れた。
「箱ごと転移させます」
彼が箱を歪みに投げると消えて、十分待つと現れた。
箱を開けると、虫が動いている。
「生きていますね」
エリアが確認する。
「転移しても大丈夫なんですね」
「そうね」
アルカナが箱を見る。
「でも、本当に無事かどうか分からないわ」
「観察してみましょう」
セレスが虫を観察すると、動いたり餌を食べたりと普通の虫と変わらない。
「異常はなさそうですね」
彼女が言う。
「では」
レオンが考える。
「もっと大きな生き物はどうでしょうか」
「危険よ」
アルカナが即座に答える。
「私たちで試すのは、まだ早いわ」
「そうですね」
セレスが同意する。
「では」
エリアが提案する。
「他の失敗条件を探しましょう」
「そうね」
アルカナが考える。
「では、速度の限界を試してみましょう」
「速度?」
レオンが尋ねる。
「とても速く物を投げるのよ」
アルカナが説明する。
「試してみましょう」
レオンが小石を全力で投げる。
小石が歪みに入る。転移する。
「成功しましたね」
セレスが確認する。
「では」
アルカナが考える。
「もっと速くできないかしら」
四人は方法を考えて、レオンが投石器を作ることを提案した。
「投石器?」
エリアが尋ねる。
「ゴムで小石を飛ばすんです」
レオンが説明する。
四人は簡易な投石器をゴムと木の枝で作り、小石を飛ばす。
小石が高速で歪みに入って転移した。
「成功しましたね」
セレスが言う。
「速度も問題ないようですね」
「では」
アルカナが考える。
「回転はどうかしら」
「回転?」
レオンが尋ねる。
「回転している物を転移させるのよ」
アルカナが説明する。
四人は円盤状の物を見つけて回転させ、歪みに投げる。
回転しながら消えて、十分待つと現れた。まだ回転している。
「回転も問題ありませんね」
エリアが言う。
「では」
セレスが考える。
「温度はどうでしょうか」
「温度?」
アルカナが尋ねる。
「熱い物や冷たい物です」
セレスが説明する。
「試してみましょう」
四人は灯りで金属を温めて歪みに入れると、転移してもまだ温かい。
「温度も問題ありませんね」
レオンが確認する。
「では」
アルカナが考える。
「濡れた物はどうかしら」
四人は布を水に浸して歪みに投げると、転移してもまだ濡れている。
「濡れていても大丈夫ですね」
エリアが言う。
四人は様々な条件を試し続け、割れやすい物、柔らかい物、硬い物、全て転移した。
「失敗する条件が見つかりませんね」
セレスが言う。
「そうね」
アルカナが考える。
「では」
レオンが提案する。
「装置に異常を起こしてみましょうか」
「異常?」
エリアが尋ねる。
「出力を急に変えるとか」
レオンが説明する。
「危険かもしれないわ」
アルカナが警告する。
「でも、試してみましょう」
彼女が制御パネルに戻って出力を最小にし、小石を投げると転移する。
すぐに出力を最大にしてまた小石を投げても、転移した。
「急な変更でも大丈夫ですね」
セレスが確認する。
「では」
アルカナが考える。
「接続を途中で切ってみましょうか」
「危険では?」
エリアが心配する。
「慎重にやるわ」
アルカナが『分離』を押すと装置の一部が停止し、歪みが揺らいで不安定になる。
「歪みが不安定です」
レオンが報告する。
「小石を投げてみて」
アルカナが言う。
レオンが小石を投げると、小石が歪みに入るが消えず、歪みの中で浮いている。
「消えませんね」
エリアが確認する。
「転移していません」
「やはり」
アルカナが言う。
「装置を全て接続しないと、転移は機能しないわ」
彼女が『接続』を押すと装置が再び全て起動し、歪みが安定する。
浮いていた小石が消えて、十分待つと現れた。
「安定すれば転移しますね」
セレスが確認する。
「では」
アルカナが整理する。
「転移失敗の条件は、装置が不完全な状態であることね」
「他には?」
レオンが尋ねる。
「歪みより大きな物」
アルカナが答える。
「それ以外は、ほとんど転移できるわ」
「では」
エリアが考える。
「危険性はないんでしょうか」
「危険性」
アルカナが考える。
「生き物の転移は、まだ分からないわ」
「小さな虫は大丈夫でしたが」
セレスが言う。
「大きな生き物はどうか分かりません」
「そうね」
アルカナが頷く。
「人間が転移するのは、もっと慎重に調べないといけないわ」
「今日はここまでにしましょう」
レオンが提案する。
「そうね」
アルカナが装置を停止させる。
四人は深層部を後にして遺跡の外に出る。
「今日は転移失敗の条件を調べました」
レオンが言う。
「失敗するのは、装置が不完全な状態か、歪みより大きな物だけです」
「それ以外は」
エリアが続ける。
「重さ、速度、温度、全て問題ありません」
「生き物の転移も」
セレスが言う。
「小さな虫は成功しました」
「でも」
アルカナが警告する。
「大きな生き物、特に人間の転移は、まだ危険かもしれないわ」
四人は工房への帰路につき、工房に戻って記録を整理する。
「転移失敗の条件」
セレスがノートに書き込む。
「装置が不完全な状態。歪みより大きな物。それ以外は成功」
「危険性の評価」
レオンが続ける。
「物質の転移は安全。生き物の転移は要検討」
「次は」
アルカナが考える。
「装置の操作をもっと習熟しましょう」
「操作の習熟?」
エリアが尋ねる。
「はい」
アルカナが説明する。
「制御パネルを使いこなせるようになるの」
「そうですね」
セレスが同意する。
「明日、練習しましょう」
四人は夕食を作って食事を済ませ、操作習熟の練習のために明日への準備を整える。




