第50話 連続実験
第50話 連続実験
「何時間続けますか?」
セレスが記録用のノートを開きながら尋ねて、アルカナが考え込む。今日の連続転移実験では、装置が長時間安定して動作するか確認する必要がある。レオンとエリアも準備を整えて、大量の小石を集める作業を始めている。
遺跡に到着すると、いつもの手順で深層部へと進んで装置群の空間に入る。
「では」
アルカナが装置を起動させながら言う。
「今日は長時間実験するわ」
「どのくらいの時間ですか?」
レオンが尋ねると、アルカナが答える。
「数時間よ。連続で転移させ続けて、装置の状態を観察するの」
「分かりました」
セレスが記録の準備をしながら言う。
「では始めましょう」
四人は小石を大量に集める。数百個を用意して実験の準備を整える。
「これを順番に投げていきます。一分ごとに一個ずつ」
レオンが小石を手に取って最初の一個を投げる。
消えて、十分待つと、現れる。
「1回目成功」
セレスが記録して、一分後にレオンが次の小石を投げる。
消えて、十分待つと、現れる。
「2回目成功」
また一分後に投げると、転移する。
「3回目成功」
四人は実験を続ける。一分ごとに一個ずつ投げ込んで、十回、二十回、三十回と回数を重ねる。
「全て成功していますね」
エリアが確認して頷く。
「装置は安定しています」
一時間経過して、六十回転移した。
「装置の状態は?」
レオンが尋ねると、アルカナが装置群を見ながら答える。
「変わりないわ。光の強さも一定よ」
実験を続けて、七十回、八十回、九十回と回数を重ねる。
二時間経過して、百二十回転移した。
「まだ安定していますね」
セレスが記録を確認しながら言う。
「全て成功しています」
「では」
アルカナが提案する。
「投入間隔を短くしてみましょう」
「どのくらいですか?」
エリアが尋ねると、アルカナが答える。
「三十秒ごとよ」
レオンが三十秒ごとに小石を投げて転移させる。全て成功する。
十分、二十分と続けて、四十回連続で成功する。
「三十秒間隔でも安定していますね」
セレスが言うと、アルカナが考える。
「では、もっと短くしてみましょう。十秒ごとにしてみます」
レオンが十秒ごとに小石を投げて転移させる。全て成功する。
五分、十分と続けて、六十回連続で成功する。
「十秒間隔でも大丈夫ですね」
エリアが確認すると、アルカナが考える。
「では、同時に複数投げてみましょう」
四人が同時に小石を投げて、四個が同時に歪みに入って転移する。全て成功する。
「同時でも大丈夫ですね」
セレスが言うと、レオンが提案する。
「では、連続で同時投入してみましょうか」
「試してみましょう」
アルカナが同意して、四人が十秒ごとに同時投入する。四個ずつ投げ込んで、十回、二十回、三十回と重ねる。
全て転移する。
「全て成功していますね」
エリアが確認して頷く。
「装置は全く問題ありませんね」
三時間経過する。
「かなりの回数転移させましたね」
セレスがノートを確認して言う。
「合計で三百回以上です」
「三百回」
レオンが驚いて声を上げる。
「それだけ転移させても、装置は安定しているんですね」
「そうね」
アルカナが装置群を見ながら答える。
「光の強さも変わらないし、音も変わらない」
「では」
エリアが考えて尋ねる。
「もっと長時間続けても大丈夫でしょうか」
「たぶんね」
アルカナが答えるが、疲れた表情で続ける。
「でも、私たちが疲れてきたわ」
「休憩しましょうか」
セレスが提案すると、アルカナが頷く。
「そうね」
四人は空間の隅で休憩を取る。水を飲んで、軽食を食べながら記録を見直す。
「三百回以上転移しましたが」
レオンが言って続ける。
「装置に異常は見られません」
「精度も変わりませんね」
エリアが記録を見ながら確認する。
「最初も最後も、誤差は約1パーセントです」
「では」
アルカナが考えて結論づける。
「装置は長時間使用に耐えるのね」
「そうですね」
セレスが同意して、休憩を終えて実験を再開する。
「今度は」
レオンが提案する。
「大きな物を連続で転移させてみましょうか」
「そうね」
アルカナが同意して、四人は大きな石を集める。両手で持つほどの大きさの石を一つずつ転移させる。一分ごとに一個ずつ投げ込んで、十個、二十個、三十個と重ねる。
全て転移する。
「大きな物でも安定していますね」
エリアが確認すると、セレスが考える。
「では、もっと大きな物はどうでしょうか」
四人は装置の部品を運ぶ。五十キログラムほどの金属塊を一つずつ転移させて、五個転移させる。
「重い物でも問題ありませんね」
レオンが言うと、アルカナが考える。
「では、様々な物を混ぜて転移させてみましょう」
四人は小石、大きな石、金属、木、布と様々な物を集めてランダムに投入する。小石の次に金属、その次に布と順番を変えながら投げ込む。
全て転移する。
「混在でも安定していますね」
セレスが記録しながら言う。
四時間経過する。
「そろそろ限界を試してみましょうか」
レオンが提案すると、エリアが尋ねる。
「限界?」
「最大出力で、最大範囲で、連続転移です」
レオンが説明すると、アルカナが頷く。
「試してみましょう」
アルカナが制御パネルを操作して、出力を最大にして範囲を最大にする。
歪みが巨大になって、直径5メートルまで広がる。
「では」
レオンが大きな装置の部品を転がして歪みに入れる。転移する。
「成功しました」
セレスが確認して言う。
「では連続で」
四人は大きな部品を次々と転移させて、十個転移させる。
全て成功する。
「最大出力、最大範囲でも安定していますね」
エリアが言うと、アルカナが考える。
「では、装置の安定性は確認できたわね」
「そうですね」
セレスが記録を閉じながら言う。
「四時間以上、四百回以上転移させましたが、装置に異常はありません」
「すごいですね」
レオンが感心して続ける。
「古代の技術は本当に優れています」
「今日はここまでにしましょう」
アルカナが装置を停止させて、四人は深層部を後にして遺跡の外に出る。
「今日は連続転移を実験しました」
レオンが言って続ける。
「四百回以上転移させましたが、装置は全く問題ありませんでした」
「精度も変わらず」
エリアが続けて言う。
「最初から最後まで約1パーセントの誤差でした」
「大きな物、重い物でも安定」
セレスが言って結論づける。
「この装置は長時間使用に耐えます」
「そうね」
アルカナが頷いて答える。
「古代の装置は、とても頑丈なのよ」
四人は工房への帰路につく。
工房に戻って記録を整理する。
「連続転移実験」
セレスがノートに書き込む。
「四時間以上、四百回以上転移。装置に異常なし。精度変化なし」
「投入間隔」
レオンが続けて記録する。
「一分ごと、三十秒ごと、十秒ごと、同時。全て成功」
「物の種類」
エリアが記録して書き込む。
「小石、大きな石、金属、木、布。全て安定」
「次は」
アルカナが考えて提案する。
「転移失敗の条件を調べてみましょう」
「転移失敗?」
セレスが尋ねると、アルカナが説明する。
「はい。どんな条件で転移が失敗するのか。それを知れば、装置の限界が分かるわ」
「そうですね」
レオンが同意して頷く。
「明日、調べてみましょう」
四人は夕食を作って食事を済ませ、明日への準備を整える。転移失敗の条件調査のために。




