表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/62

第47話 距離の測定

第47話 距離の測定


四人は空が白む前に目を覚まして朝食を済ませる。今日は距離の測定実験だ。レオンは長いロープを荷物に詰めながら、百メートル以上あることを確認する。工房を出発して森を抜け、山道を登っていくと遺跡が見えてくる。入口から通路を進んで階段を下り、深層部の装置群の空間に到着する。


「では」


アルカナが制御パネルの部屋に向かって扉を開け、パネルの前に立つ。


「装置を起動するわ」


『起動』のボタンを押す。装置群が光る。『接続』のボタンを十回、二十回、三十回と押し続ける。四十回、五十回、六十回、七十回、八十回、九十回、百回、押し終える。


装置群の光が強まり、歪みが現れ、空気が揺らぐ。


「まず」


レオンが荷物からロープを取り出して提案する。


「現在の転移距離を正確に測りましょう」


ロープを広げる。長い、百メートル以上ある。


「そうね」


アルカナが制御パネルの部屋から出てきて装置群の空間に戻り、ロープを見る。


四人は測定を始める。歪みの位置、壁際、床から一メートルを確認して、そこから転移先までロープを伸ばす。レオンとエリアが一方の端を持ち、セレスが転移先まで歩いてロープを引っ張り、まっすぐに端から端まで伸ばす。


「四十八メートルです」


セレスがロープの印を確認して測定結果を報告する。


「昨日は五十メートルと言いましたが、正確には四十八メートルですね」


目測との差は二メートルだ。


「分かったわ」


アルカナが記録用の羊皮紙に「転移距離:48m」と書き込む。


「では」


エリアがロープと測定結果を見て考える。


「この距離を変える方法はあるんでしょうか」


制御パネルを見る。


「制御パネルで変えられるかもしれないわ」


アルカナが言って制御パネルの部屋に向かう。


「試してみましょう」


扉を開けて中に入り、パネルの前に立ってボタンを見る。『起動』『停止』『接続』、その他にもボタンがある。『出力』『減衰』『方向』だ。


「出力ボタンを押してみるわ」


『出力』に手を伸ばして押す。


装置群の光が変化し、強くなり、明るくなる。


「光が強くなりました」


レオンが装置群を見て報告する。


「では」


アルカナが制御パネルの部屋から言う。


「小石を投げてみて」


声をかける。


セレスが荷物から小石を取り出して歪みに近づき、投げる。


小石が消える。


四人は砂時計を見て待つ。砂が落ちる。十分経過。


小石が現れる。しかし、場所が違う。前より遠い、装置群のさらに奥だ。


「前より遠いです」


エリアが駆け寄って小石を拾い、確認する。


「測定してみます」


セレスとレオンがロープを持ち、歪みの位置から小石が現れた場所までまっすぐにロープを伸ばす。


「七十メートルです」


セレスが印を確認して報告する。七十メートルだ。


「出力を上げると、距離が伸びるのね」


アルカナが『出力』ボタンを見て制御パネルを理解する。


「では、減衰を押してみるわ」


『減衰』ボタンに手を伸ばして押す。


光が変化し、弱くなり、暗くなる。


「小石を投げてみて」


アルカナが声をかける。


レオンが小石を手に取って投げる。


消える。十分待って砂時計を見る。


近い場所、歪みのすぐ先に現れる。


「測定します」


エリアとセレスが歪みから転移先までロープを伸ばす。


「二十五メートルです」


エリアが印を確認して報告する。二十五メートルだ。


「出力を下げると、距離が短くなるのね」


アルカナが確認して「出力↑→距離↑、出力↓→距離↓」と記録する。


「では」


セレスが記録を見て考える。


「出力を調整すれば、好きな距離に転移できるんですね」


出力と距離の関係のグラフが頭に浮かぶ。


「そうね」


アルカナが頷いて制御パネルを見る。


「試してみるわ」


『出力』と『減衰』を調整して出力を上げる。押す、また押す。


「小石を投げて」


レオンが投げる、消える、十分待つ、現れる。


ロープを伸ばして測定する。


「三十メートルです」


セレスが報告する。


アルカナがさらに出力を上げて調整する。『出力』を何度も押す。


「投げて」


エリアが投げる、消える、待つ、現れる。


測定する。


「六十メートルです」


レオンが報告する。


何度か調整を繰り返す。出力を上げたり下げたり、様々な距離を試す。


「十メートル」


セレスが短い距離を報告する。


出力を最大近くまで上げて調整する。


「百メートル」


エリアがロープをいっぱいに伸ばして報告する。


また中程度の出力に調整する。


「五十メートル」


レオンが最初の距離に近い結果を報告する。


「出力を調整すれば」


アルカナが制御パネルの部屋から出てきて装置群の空間に戻る。


「自由に距離を変えられるわ」


様々な距離の記録を見る。全て成功している。


「すごいですね」


レオンが装置群と制御パネル、複雑な機構を見て感心する。


「では」


エリアが記録を見て、最大値がまだ不明なことに気づいて尋ねる。


「最大距離はどのくらいでしょうか」


どこまで遠くに転移できるのか。


「試してみましょう」


アルカナが制御パネルの部屋に戻って『出力』ボタンを何度も連続で押す。十回、二十回、三十回と押し続ける。


光がどんどん強くなる。装置群が眩しいほど明るく輝く。


「これ以上押せなくなったわ」


ボタンが反応しない。限界に達した。


「最大出力ね」


「最大出力」と記録に書き込む。


「小石を投げてみます」


セレスが小石を手に取って歪みに投げる。


消える。


四人で砂時計を見ながら十分待つと、砂が落ちきる。


時間が経過して十分が過ぎる。


現れない。装置群の空間を見回してもどこにもない。


「現れませんね」


レオンが周囲を見回しながら床を見て、壁を見て、奥を見る。


「装置群の空間にはありません」


探しながら歩き回る。


「空間の外かもしれないわ」


アルカナが通路を指しながら言う。


四人は空間を出て通路に出ると、薄暗い中を進んで階段の方へ、奥の方へと探しながら床を見る。


「ありました」


エリアが通路で床に転がっている小石を見つけて拾う。


「ここです」


小石を掲げて確認すると、間違いない。


装置群の空間から歪みの位置を起点に、通路を通ってエリアが見つけた場所までロープをいっぱいに伸ばして測定するが、足りないのでもう一本継ぎ足して伸ばすと届く。


「二百メートルです」


セレスが二本のロープを合わせた長さを報告する。二百メートルだ。


「最大出力で二百メートルね」


アルカナが羊皮紙に「最大距離:200m」と記録を書き込む。


「では」


レオンが次は反対だと考える。


「最小距離はどのくらいでしょうか」


どこまで短い距離か。


「試してみるわ」


アルカナが制御パネルの部屋に戻って装置群の空間に入り、制御パネルの前に立つ。


『減衰』ボタンを何度も連続で押して、十回、二十回、三十回と押し続ける。


光がどんどん弱くなって装置群が暗くなり、かすかに光る程度になる。


「これ以上押せないわ」


ボタンが反応せず、限界に達した。


「最小出力ね」


記録に「最小出力」と書き込む。


「小石を投げてみます」


セレスが小石を手に取って歪みに投げる。


消える。


砂時計を見ながら十分待つ。


歪みのすぐ先、数歩の距離という すぐ近くに現れる。


「測定します」


エリアがロープを伸ばすと短くてすぐに届く。


「五メートルです」


印を確認すると五メートルだ。


「最小出力で五メートルね」


アルカナが「最小距離:5m」と記録する。


「では」


セレスが記録を見ながら最小と最大を整理する。


「転移距離は、五メートルから二百メートルまで」


範囲を確認する。


「そうね」


アルカナが記録を見て両端の値を確認しながら頷く。


「出力を調整すれば、その範囲で自由に距離を変えられるわ」


中間の値も自由に。


「では」


レオンが記録を見て、まだデータが粗いことに気づいて提案する。


「出力と距離の関係を、もっと詳しく調べましょうか」


正確な関係式があれば予測できる。


「そうね」


アルカナが同意して制御パネルの前に立つ。


四人は様々な出力で試しながら距離を測定し、データを集める実験を続ける。


アルカナが『出力』を押す回数を一回、二回、三回と様々に変えて出力を調整し、レオンが小石を一つずつ投げ、エリアとセレスがロープを伸ばして印を確認しながら距離を測定して記録する。


十回、二十回、三十回と実験が続いてデータが増え、記録が増えて羊皮紙が埋まる。


「データが集まりましたね」


セレスがノートを見ると、出力の値と距離の値というたくさんの数字が並んでいる。


「出力と距離の関係が見えてきました」


数字を眺めるとパターンが見える。


彼女が新しい羊皮紙にグラフを描いて、横軸に出力、縦軸に距離を引いて目盛りを付ける。


一つ目のデータである出力十と距離二十五で点を打ち、二つ目のデータである出力二十と距離五十で点を打って、三つ目、四つ目、五つ目と次々に点を打っていく。


「ほぼ直線ですね」


レオンがグラフを見ると、点が一直線に近く並んでいる。


「出力が倍になると、距離も倍になります」


きれいな比例関係だ。


「比例関係ね」


アルカナがグラフを見て直線のパターンを確認しながら言う。


「出力に比例して、距離が伸びるのよ」


単純で予測しやすい関係だ。


「では」


エリアがグラフを見て直線の式を考える。


「計算で距離を予測できますね」


出力が決まれば距離が分かる。


「そうね」


アルカナがグラフを指しながら頷く。


「出力を決めれば、転移距離が分かるわ」


逆に距離を決めれば出力も分かる。


「便利ですね」


セレスが記録を見て実用的なデータだと言う。


「では」


レオンがグラフを見て提案する。


「正確に五十メートル転移させてみましょうか」


予測の検証とグラフの正確さを確かめるために。


「試してみるわ」


アルカナがグラフの五十メートルの位置から横に線を引いて直線と交わる点を見つけ、下に線を引いて出力の値を読む。


「五十メートルなら、この出力ね」


出力二十で『出力』を二十回押す。


「投げて」


レオンが小石を手に取って投げる。


消えて、十分待つと現れる。


ロープを伸ばして測定する。


「四十九メートルです」


エリアが印を確認して報告する。四十九メートルだ。


「ほぼ五十メートルですね」


わずかに短く、一メートル差がある。


「もう一度調整するわ」


アルカナが『出力』をもう一回押して出力を二十一回に変える。


「投げて」


セレスが小石を投げる。


消えて、待つと現れる。


ロープを伸ばして測定する。


「五十メートルちょうどです」


彼女が印を確認して報告すると、ぴったり五十メートルだ。


「完璧ね」


アルカナが記録に「予測成功」と書き込んで満足する。


「出力を調整すれば、正確な距離に転移できるわ」


グラフの有効性を確認した。


「では」


エリアが他に調べることを考える。


「他の要素はないでしょうか」


距離以外に何か制御できるものがあるかもしれない。


「他の要素?」


レオンが尋ねる。


「方向とか」


エリアが装置群の空間を見回しながら説明する。


「今は、決まった方向にしか転移していません」


いつも同じ方向で、装置群の奥だ。


「そうね」


アルカナが制御パネルを思い出しながら考える。


「制御パネルに『方向』というボタンがあったわ」


まだ試していないボタンだ。


「試してみましょう」


セレスが期待しながら言う。


「はい」


アルカナが制御パネルの前に立って『方向』ボタンを見て押す。


装置群の光が変化するが、色は変わらず、でも何かが違って空気の流れと振動のパターンが変わる。


「小石を投げて」


アルカナが声をかける。


レオンが小石を投げる。


消えて、十分待つと現れる。


「あれ」


エリアが驚いて声を上げる。


「反対側に現れました」


今までとは逆で、装置群の手前側、入口の方だ。


確かに違う方向で、反対だ。


「方向が変わったのね」


アルカナが『方向』ボタンの機能を理解する。


「もう一度押してみるわ」


『方向』をもう一回押す。


「投げて」


セレスが小石を投げる。


消えて、待つと現れる。


また違う方向で、横、装置群の左側だ。


「もう一度」


アルカナが『方向』ボタンを押す。


レオンが小石を投げる。


別の方向、装置群の右側に現れる。


「方向ボタンで」


セレスがパターンを理解する。


「転移方向を変えられるんですね」


奥、手前、左、右の四つの方向だ。


「そうね」


アルカナが制御パネルから出てきて頷く。


「東西南北、四方向に変えられるわ」


ボタンを押すたびに方向が変わる。


「では」


レオンがこれまでの発見を整理しながら考える。


「出力で距離を、方向で向きを制御できるんですね」


二つの要素が両方とも制御可能だ。


「そうよ」


アルカナが記録を見ながら答える。


「かなり自由に転移を制御できるわ」


距離も方向も思い通りに。


四人は様々な組み合わせを試す実験を続けて、短い距離で奥、長い距離で手前、中程度の距離で左、最大距離で右と様々な距離と方向を試す。


全て狙った通りに転移して成功し、誤差はわずかだ。


太陽が動いて時間が経ち、実験が続いてデータが増える。


「制御は完璧ですね」


セレスが全ての実験結果を確認すると、成功率は百パーセントだ。


「狙った場所に正確に転移します」


予測と実際がほぼ一致している。


「古代の技術は」


エリアが装置群を見回して複雑な機構に感心する。


「本当に優れていますね」


完璧な精度と完璧な制御だ。


「そうね」


アルカナが装置群を見回して一つ一つの装置、光る装置、動く装置を見る。


「この装置は、完璧に機能しているわ」


何千年も前の技術なのに、今も正確に動く。


「今日はここまでにしましょうか」


レオンが疲労を感じながら記録を見て提案する。


「かなりデータが集まりました」


たくさんの実験とたくさんの測定だ。


「そうね」


アルカナが制御パネルに向かって『停止』ボタンを押すと、装置群の光が消えて歪みが消え、空間が静かになる。


四人は荷物を背負ってロープを巻き、階段を一段ずつ上って通路を進んで入口へ向かい、外に出る深層部を後にする。


日差しが眩しくて目を細め、新鮮な空気を吸う。


「今日は距離と方向の制御を学びました」


レオンが工房への道を歩きながら言う。


「出力で距離を、方向ボタンで向きを変えられます」


二つの制御を組み合わせ自由に使える。


「そして」


セレスが記録を手に持って続ける。


「五メートルから二百メートルまで転移可能です」


広くて実用的な範囲だ。


「かなり実用的ですね」


エリアが森の中を歩きながら言う。


「そうね」


アルカナが頷くが表情が複雑だ。


「でも、まだ分からないことがあるわ」


原理は不明で、なぜ転移するのか、どうやって距離を制御しているのか、謎のままだ。


四人は森を抜けて道を歩き、太陽が傾いて影が長くなる工房への帰路につく。


工房に戻って扉を開けて中に入り、テーブルに向かって記録を広げる。


「転移距離の測定」


セレスがノートに大きな見出しを書き込んで、その下に詳細を書く。


「最小五メートル、最大二百メートル。出力に比例」


直線のグラフも書き写す。


「方向制御」


レオンが隣に座って記録を見ながら続ける。


「四方向に変更可能」


東西南北をボタン一つで切り替えられる。


「転移は正確」


エリアがペンを走らせながら記録する。


「狙った場所に正確に転移」


予測と実際の誤差はほとんどない。


「次は」


アルカナがノートを見てまだ調べていないことを考える。


「転移可能な物の条件を調べましょう」


どんな物まで転移できるのか。


「条件?」


レオンが尋ねる。


「重さとか大きさの限界よ」


アルカナが手を広げながら説明する。


「どこまで大きな物を転移できるのか」


小石は成功したが、大きな物はどうなのか。


「そうですね」


セレスが重要な問題だと同意する。


「明日、調べてみましょう」


次の実験課題だ。


四人は野菜を切って肉を焼き、スープを煮て夕食を作り、テーブルで食べながら今日の実験について話して食事を済ませる。


皿を洗ってテーブルを拭いて片付ける。


ノートに書き込んでグラフを清書して記録を整理し、大きな物を用意して測定道具を確認して明日の準備をする。


疲れた体で就寝の準備をしながら、明日への期待を感じる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ