第39話 装置群の全貌
第39話 装置群の全貌
「今日は全部調べ終えましょう」
レオンが荷物を背負いながら提案し、セレスとエリアが頷く。昨日の調査で装置群の半分を記録したが、残りの装置も全て調査する必要がある。アルカナが魔核炉心から現れて、四人は工房を出発する準備を整える。
階段を降りて第二階層を抜け、深層部への扉をくぐる。巨大な装置の中の階段を降り、通路を進んで地下深層に到達する。
レオンが灯りを掲げると、巨大な空間に無数の装置が並んでいる光景が目に飛び込む。
「今日は、装置を一つ一つ調べましょう」
レオンが灯りを掲げて装置群を見渡しながら提案する。
「どんな装置があるのか、記録を取りましょう」
四人は空間を歩き始め、最も近い装置に一歩ずつ慎重に向かう。
装置は高さ3メートルほど、幅は2メートルで、石と金属でできている。表面には複雑な形の古代文字が刻まれている。
「これは」
アルカナが目を細めて文字を見て、一文字ずつ確認する。
「『保存』という意味ね」
「保存?」
エリアが尋ねる。何を保存するのか。
「何を保存するんでしょうか」
「分からないわ」
アルカナが装置を調べて、手で触れて表面を撫でる。冷たい石だ。
「でも、何かを保存する装置のようね」
セレスがノートにペンを走らせ、装置の大きさ、形状、文字の内容を一つ一つ書き留める。
次の装置に歩いて近づく。こちらは高さ4メートルの円筒形で、表面は滑らかで文字がない。
「これには文字がありませんね」
レオンが装置を一周して見回すが、どこにも文字がない。
「用途が分かりません」
エリアが装置に触れて、手のひらで表面を撫でる。冷たい金属のような質感だ。
「金属でしょうか」
彼女が指で叩いてみると、コン、コンと重い響く音がする。
「とても硬いです」
また次の装置へ四人が移動する。こちらは一辺が2メートルほどの立方体で、石でできている。箱型だ。
「これは」
セレスが箱の側面をしゃがみ込んで確認する。四角い線が刻まれている。
「扉のようなものがあります」
確かに側面に四角い線が刻まれていて、扉の輪郭がある。取っ手のようなものもある。
「開きますか?」
レオンが両手を扉に当てて力を込めて押してみるが、動かない。びくともしない。
「鍵がかかっているようです」
四人は装置から装置へと一つまた一つ移動し、近づいて観察して記録を取りながら調査していく。
装置の種類は様々だ。高いもの、低いもの、大きいもの、小さいもの。石でできたもの、金属でできたもの、文字が刻まれたもの、何も書かれていないもの。円形、四角、円筒、球体と無数の形状がある。
「こんなに種類があるんですね」
エリアが驚いて声を上げる。予想以上の多様性だ。
「それぞれ違う用途なんでしょうか」
「そうでしょうね」
アルカナが一つ一つの装置を見ながら答える。
「古代の人々は、様々な装置を作っていたのよ」
セレスがノートを確認して記録を数え、ページをめくる。
「今までに二十個の装置を確認しました」
彼女が灯りを掲げて空間を見回す。光が届く範囲、そしてその先。
「でも、まだたくさんあります」
確かに空間の奥にも装置が並んでいる。暗闇の中に無数の影、数えきれないほどだ。
「全部で何個あるんでしょうか」
レオンが首を振りながら呟く。見当もつかない。
「五十個?いや、もっとかもしれません」
四人は調査を続ける。一つまた一つ、時間をかけて装置を見て触れて記録していく。セレスがノートに書き込み、レオンが装置を測り、エリアが構造を確認し、アルカナが魔力を感じ取る。
三十個目の装置に歩いて近づく。これは直径3メートルほどの球体で、表面は透明で中に何かが浮いている。
「これは」
エリアが顔を近づけて球体を覗き込み、中を見る。
「何でしょうか」
球体の中に小さな結晶のようなものが重力に逆らって浮き、青く脈動するように光っている。
「魔力の結晶ね」
アルカナが球体を見て結晶を確認する。
「以前見たものと同じよ」
「装置の中に結晶が入っているんですね」
レオンが球体に手で触れる。滑らかな表面だ。
「どういう仕組みなんでしょうか」
「結晶が装置の動力源かもしれないわ」
アルカナが腕を組んで考え、記憶を辿る。
「古代の装置は、魔力で動いていたの」
次の装置へ四人が移動する。こちらは高さ5メートル以上の柱状で、天井に届きそうな太い柱だ。
「高いですね」
セレスが首を伸ばして見上げる。頂上が遠い。
「これは何に使うんでしょうか」
柱の表面には無数の溝が縦に、横に、斜めに刻まれている。規則正しく幾何学的な模様だ。
「模様でしょうか」
エリアが指で表面をなぞって溝を辿る。深い溝だ。
「それとも、何かの記号?」
「分からないわ」
アルカナが柱を見上げて、上から下まで全体を見渡す。
「見たことのない構造ね」
四人は調査を一つまた一つ続けるが、体調が徐々に悪くなってくる。頭が重く、めまいがする。深層部の魔力の影響だ。
「少し休憩しましょうか」
レオンが額の汗を拭いながら提案し、呼吸を整える。
四人は装置のない場所に座り込んで荷物を降ろし、水を飲み、保存食を食べながら体力を回復させて呼吸を整える。
「かなり調べましたね」
セレスがノートを確認して記録を数え、ページをめくる。
「三十五個の装置を記録しました」
「まだ半分も終わっていませんね」
エリアが空間を見回して奥を見る。まだ装置が並んでいる。
「奥にまだたくさんあります」
「今日はここまでにしましょうか」
アルカナが三人を見て顔色を確認する。疲労の色が出ている。
「体調が心配だわ」
「もう少しだけ」
レオンが足に力を込めて立ち上がる。まだ動ける。
「あと十個だけ調べましょう」
四人は再び立ち上がって装置に向かい、一つずつ確認しながら調査を始める。
三十六個目、三十七個目、三十八個目と装置の形状、大きさ、特徴を記録していく。
四十個目の装置に歩いて近づく。これは高さ1メートルほどの台のような形で、平らな上面にその上に何かが置かれている。球体だ。先ほど見たものと同じような球体だが、こちらは中に何も入っていない。空っぽで透明なだけだ。
「空ですね」
レオンが球体を覗いて中を確認する。何もない。
「何か入っていたんでしょうか」
「そうかもしれないわ」
アルカナが球体を見て手で触れる。空虚な感じがする。
「結晶が失われたのかもしれない」
四十一個目、四十二個目、四十三個目、四十四個目、四十五個目と装置を次々と記録する。
「今日はここまでにしましょう」
レオンが額の汗を拭う。限界が近く、体が重い。
「かなり疲れました」
「そうね」
アルカナが頷いて三人を見る。全員が疲労困憊している。
「戻りましょう」
四人は来た道を戻って通路を進み、曲がり角を曲がる。階段を一段ずつ息を切らせながら登り、装置の外に出る。
深層部の扉をくぐり、第二階層を抜けて罠の部屋を通過する。階段を登って最初の広間を横切り、外に出ると新鮮な空気が肺に広がる。
遺跡の前で地面に座って休憩を取り、水を飲んで体力を回復する。
「今日は四十五個の装置を記録しました」
セレスがノートを見て記録を確認する。詳細な記述だ。
「様々な種類がありました」
「全部で何個あるんでしょうね」
エリアが巨大な石の建物、この奥に無数の装置がある遺跡を見上げる。
「百個以上あるかもしれません」
「次回、残りを調査しましょう」
レオンが決意の表情で言う。諦めない。
「全ての装置を記録したいです」
「そうね」
アルカナが頷くが、表情は慎重だ。
「でも、無理はしないで」
四人は工房への帰路につき、山道を下って森を抜ける。一日目が終わると野営し、二日目も歩き続ける。
工房に戻って荷物を降ろし、テーブルに向かってノートを広げて記録を整理する。
「装置群の規模は予想以上でした」
レオンがノートを広げて記録を見る。四十五個の装置。
「これだけの装置を、古代の人々は何に使っていたんでしょうか」
「それが分かれば」
エリアが資料を開いて考察を書き込みながら続ける。
「この遺跡の目的が分かるかもしれません」
「次は装置を動かす方法を見つけたいわね」
アルカナが窓の外、遺跡のある方角を見て言う。
「動かせば、用途が分かるかもしれない」
「制御パネルのようなものはありませんでしたか?」
セレスがノートをめくって記録を見ながら尋ねる。
「いくつかの装置には、ボタンのようなものがあったわ」
アルカナが記憶を辿って答える。球体の装置、柱状の装置。
「でも、押すのは危険かもしれない」
「慎重に調べましょう」
レオンが腕を組んで計画を立てながら言う。
「まずは全ての装置を記録してから、操作を試しましょう」
四人は記録を整理し続け、今日見た装置の特徴を丁寧にまとめていく。ノートに書き込み、図を描き、分類する。
「保存装置、球体装置、柱状装置」
セレスがノートに分類を書き込んで、種類ごとに整理する。
「それぞれ特徴が違います」
「用途も違うんでしょうね」
エリアが資料を見て記録を読み、比較する。
「組み合わせて使うのかもしれません」
「そうかもしれないわね」
アルカナが頷いて考え、記憶を辿る。
「古代の施設は、複数の装置を組み合わせて機能していたの」
「では」
レオンが装置群全体を見て考える。
「この装置群も、全体で一つのシステムなんでしょうか」
「その可能性はあるわ」
アルカナが答えるが、確証はない。
「でも、確かめるには、もっと調査が必要ね」
四人は記録を整理し終えて、ノートを閉じ、地図をしまう。
「明日また調査に行きましょう」
レオンが立ち上がって窓の外を見る。空が暗くなっている。
「残りの装置を記録しましょう」
「そうですね」
エリアが椅子から立って同意する。
「全体像が見えてくるかもしれません」
四人は夕食の準備を始める。食材を取り出して火を起こし、鍋を置いて野菜を切り、水を沸かして料理をする。
食事を済ませて片付けをし、明日への準備を整える。




