第30話 新たな出会い
第30話 新たな出会い
数日後、工房にはいつもの穏やかな空気が戻っていた。
【魔核炉心】の青い光が、日常業務に戻った工房を照らしている。共鳴増幅システムは静かに稼働を続けており、量産設備も安定した動作を維持している。
レオンは新しい技術の研究資料を手に、次の技術開発について考えている。
「おはようございます、レオンさん」
エリアが工房に入ってくる。
「おはようございます、エリアさん」
レオンが振り返る。
「今日は何の研究をされるんですか?」
エリアが資料を覗き込む。
「保存技術の基礎研究です」
「魔道具の劣化を防ぐ技術があれば、お客様により良い製品を提供できるかもしれません」
「それは素晴らしいですね」
「メンテナンス不要の製品になれば、使う人の負担も減りますね」
「そうですね」
「技術は、使う人が幸せになるためのものですから」
その時、工房の奥から軽やかな足音が聞こえてきた。
「おはよう、みんな」
セレスが現れる。
「おはようございます、セレスさん」
「工房の運営状況はいかがですか?」
「順調です」
「共鳴増幅システムにより、効率が向上しています」
「それは良かったです」
「技術が役に立っているということですね」
「人の負担も軽減されました」
「より創造的な作業に集中できるようになりました」
その時、工房の中央から愛らしい声が響いた。
「今日は特別なお客様が来るのよ」
【魔核炉心】からアルカナが現れる。
「おはようございます、アルカナさん」
「特別なお客様とは?」
「どのような方でしょうか?」
「困っている人よ」
「技術で助けてあげられるかもしれない人」
「どのような困りごとでしょうか?」
「私たちに何かお手伝いできることがあるでしょうか?」
「魔力制御に深刻な問題を抱えている子がいるの」
「通常の魔道具では対応できない特殊なケースかもしれないわ」
朝食後、アルカナが予告した特別な訪問者を待つ準備が始まった。
工房の応接エリアが、お客様を迎える準備で整えられている。技術相談に対応するための資料と、実際の魔道具サンプルが適切に配置されている。
「どのような特殊なケースでしょうね」
エリアが技術的な関心を示す。
「通常の魔道具で対応できないということは」
「制御が困難な魔力パターンかもしれません」
「詳しく観察して、最適な解決策を見つけられればいいですが」
「個別対応が必要なケースですね」
「カスタマイズした製品が必要かもしれません」
「何とか解決できるといいわね」
「私たちの技術で、少しでも助けになれば」
10時頃、工房の扉がそっとノックされた。
「どなたでしょう?」
扉を開けると、そこには中年の女性と、10歳くらいの少女が立っていた。
「こんにちは」
「娘の魔力制御について相談したくて」
「どうぞ、お入りください」
「お困りのことがあれば、お聞かせください」
「すごい工房ですね」
「こんな装置、初めて見ます」
「私は技術者のレオンです」
「こちらはエリアさん、セレスさん、そしてアルカナさん」
「ミラです」
「こちらは娘のルナです」
「よろしくお願いします」
「お母さんから、ここなら助けてもらえるかもって」
応接エリアに座って、ミラが娘の問題を説明し始めた。
「ルナは生まれつき魔力制御が不安定なんです」
「どのような症状でしょうか?」
「感情の変化と魔力が連動してしまうんです」
「嬉しい時も悲しい時も、魔力が暴走して周囲に影響を与えてしまいます」
「それは大変ですね」
エリアが同情を示す。
「日常生活にも支障が出そうです」
「学校でも友達と一緒にいるのが難しくて」
ルナが寂しそうに言う。
「魔力が勝手に動いちゃうから、みんな怖がるの」
「これまでどのような対策を試されましたか?」
「いくつかの魔道具を試したんですが」
ミラが困った様子で答える。
「どれも効果が一時的で、根本的な解決にはなりませんでした」
「制御装置も試しましたが、ルナの魔力パターンには合わなくて」
「なるほど」
「個別の魔力パターンに対応した解決策が必要ね」
「【古代視】で詳しく観察させていただけますか?」
レオンが診断のための許可を求める。
「ルナさんの魔力の流れを見れば、何か分かるかもしれません」
「お願いします」
ミラが希望を込めて答える。
「娘が普通の生活を送れるようになれば」
レオンが【古代視】を発動させ、ルナの魔力パターンを詳細に観察した。
すると、通常とは大きく異なる複雑な魔力の流れが見えてきた。感情と直結した魔力の波動が、一定のリズムで変動している。しかし、その変動には規則性があり、適切な制御があれば安定化できそうだった。
「見えました」
「確かに特殊なパターンですが、何とかできるかもしれません」
「本当ですか?」
ルナが希望を込めて聞く。
「私も普通に友達と遊べるようになる?」
「頑張ってみましょう」
アルカナが優しく答える。
「私たちの技術で、あなたの魔力を安定させられるかもしれないわ」
「どのような解決策でしょうか?」
「個別調整型の魔力安定装置です」
「ルナさんの魔力パターンに合わせてカスタマイズした装置を作ってみます」
昼食後、ルナ専用の魔力安定装置の設計が始まった。
工房の設計エリアで、四人がルナの特殊な魔力パターンに対応した装置の開発を進めている。【古代視】による詳細な魔力分析を基に、個別対応の精密な設計が行われている。
「感情連動型の魔力制御システムが必要ですね」
「感情の変化を予測して、事前に魔力を安定化する仕組み」
「バイオリズム検知機能も組み込めるでしょうか」
「心拍数や呼吸から感情変化を察知して、自動調整できれば」
「感情制御の技術を応用してみるわ」
アルカナが専門知識を活かす。
「心と魔力の調和を図る、優しい技術があるかもしれないの」
「フレンドリーなデザインも重要ですね」
「ルナさんが愛着を持てるような、可愛い外観にしましょう」
設計作業の間、ルナは工房の見学を楽しんでいた。
共鳴増幅システムの動作や、量産設備の稼働に興味深そうに見入っている。技術への純粋な関心が、彼女の表情を明るくしている。
「この装置、一人で動いてる」
「魔法みたい」
「技術と魔法は似ているのよ」
「どちらも人を幸せにするためのもの」
「私の装置も、こんな風に自動で魔力を調整してくれるの?」
ルナが期待を込めて聞く。
「もっとすごいかもしれないわよ」
アルカナが希望を込めて答える。
「あなただけのために作る、特別な装置だから」
夕方には、ルナ専用魔力安定装置の設計が完了していた。
感情変化を自動検知し、魔力を優しく安定化する高度なシステムだった。外観も少女が喜ぶような、可愛らしいペンダント型に設計されている。
「設計が完了しました」
レオンが完成した設計図を示す。
「ペンダント型で、普段のアクセサリーとして使えます」
「可愛いですね」
ミラが安心した表情を見せる。
「これなら娘も喜んで身に着けてくれそうです」
「製造にはどれくらいかかりますか?」
「3日で完成します」
「個別カスタマイズなので、丁寧に作ります」
「ありがとうございます」
ルナが感謝を込めて言う。
「私、本当に普通になれる?」
「頑張ってみましょう」
レオンが希望を込めて答える。
「きっと友達とも楽しく過ごせるようになりますよ」
三日後、ルナ専用の魔力安定装置が完成した。
美しい青いクリスタルが組み込まれた銀のペンダントは、技術的な機能と可愛らしさを完璧に両立させていた。表面には小さな星の模様が刻まれており、まさに少女のためのアクセサリーだった。
「できました」
エリアが完成品を丁寧に手渡す。
「ルナさんだけの特別な装置です」
「わあ、きれい」
ルナが感動の声を上げる。
「こんな素敵なペンダント、初めて」
装着テストが始まった。
ルナがペンダントを身に着けると、彼女の魔力が徐々に安定していく様子が、レオンの【古代視】で確認できた。感情の変化に合わせて、装置が優しく魔力を調整している。
「どうですか、ルナさん?」
「魔力の感じが変わりました」
「すごく落ち着いてて、安心する感じ」
「感情テストをしてみましょう」
「楽しいことを考えてみて」
ルナが笑顔になると、通常なら魔力が暴走するはずだったが、ペンダントが優しく制御している。魔力は安定したまま、彼女の感情だけが自然に表現されている。
「すごい」
ミラが感動の涙を浮かべる。
「娘の魔力が、こんなに安定してるなんて」
「これで学校も大丈夫ね」
ルナが希望に満ちた表情を見せる。
「友達と一緒に遊べる」
「ペンダントのお手入れ方法も説明します」
「簡単なメンテナンスで、長期間使用できます」
支払いを済ませて、母娘が帰っていく。
「本当にありがとうございました」
ミラが深い感謝を示す。
「娘の人生が変わります」
「また何かあったら、いつでもいらしてください」
「困ったことがあれば、遠慮なく」
「ありがとう」
ルナが元気よく手を振る。
「今度、友達も紹介するね」
母娘が帰った後、工房には満足感が漂っていた。
「良い仕事ができましたね」
エリアが振り返る。
「ルナさんが幸せになれて良かったです」
「技術で人を直接助けることができました」
セレスが技術の価値を実感している。
「これこそ技術の本当の意味ですね」
「技術の本当の目的ね」
アルカナが歴史的な意義を感じている。
「人を幸せにする、優しい技術」
「また困っている人がいたら、ぜひ助けたいです」
「技術は、目の前の人を幸せにするためのものですから」
夕食の時間、四人は今日の温かい出来事を振り返っていた。
「今日は本当に良い一日でした」
「技術者として、最も誇らしい瞬間でした」
「ルナさんの笑顔が印象的でした」
エリアが心温まる思い出を語る。
「技術で人の笑顔を作れるなんて」
「困っている人を助けるのが、私たちの本当の仕事よ」
「技術は人のためにある」
「これからも、目の前の人を大切にしていきましょう」
レオンが将来への決意を示す。
「一人一人に寄り添った技術開発を続けたいです」
夜が更けていく中、四人は明日からの新たな挑戦を話し合っていた。
「保存技術の研究も進めましょう」
「より多くの人に、長く使える製品を提供したいです」
「個別対応の技術も磨きたいですね」
「一人一人に最適な解決策を提供できるように」
「工房の対応力も向上させましょう」
「様々な困りごとに応えられる体制作り」
「技術の知識も、もっと活用したいわ」
「人を助ける技術は、まだまだたくさんあるかもしれない」
「明日も頑張りましょう」
レオンが仲間たちを見回す。
「困っている人がいたら、全力で助けましょう」
「そうですね」
三人が声を揃えて答える。
「技術で人を幸せにしていきましょう」
「ルナさん、きっと友達もたくさんできますね」
エリアが温かく言う。
「普通に学校生活を送れるようになって」
「そうね」
アルカナが微笑む。
「技術で一人の人生が変わった。それが一番嬉しいことよ」




