表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/62

第3話 古代技術の覚醒

第3話 古代技術の覚醒


「これで最低限の装備です」


エリアが大きなリュックサックを背負いながら息を切らしている。回復薬、解毒薬、緊急脱出用の転移石、防護結界の巻物……。


探検準備は、レオンの予想を遥かに超える大荷物になっていた。


「そんなにたくさん必要ですか?」


レオンがのんびりと首を傾げる。


「古代遺跡の見学でしょう?」


「見学って……」


エリアの声が高く裏返る。


「レオンさん、遺跡探索は命がけなんです。罠があったり、魔物がいたり……」


「そうですね。危険なこともあるかもしれませんね」


レオンが真剣な表情になる。


「エリアさんがこれだけ準備してくれるなら安心です」


エリアは少し安堵の表情を見せた。


【忘却の森】の入り口に着くと、エリアが慎重に周囲を警戒し始めた。


「魔力の流れが不安定ですね」


エリアが杖を構える。


「やはり普通の場所ではありません」


「面白いですね」


レオンがきょろきょろと見回す。


「どんな魔法陣が組まれてるんでしょう?」


レオンは地面に手を置いて、魔力の流れを感じ取ろうとした。すると、頭の中に複雑な魔法陣の構造が浮かび上がってきた。


「あー、これは侵入者を弾く結界ですね」


レオンが立ち上がる。


「でも、設計が古いから迂回できそうです」


「迂回って……」


エリアが目を見開く。


「レオンさん、結界の解析ができるんですか?」


「なんとなく、ですけど」


レオンが歩き始める。


「こちらの方向から行けば、結界に引っかからずに済むと思います」


エリアは半信半疑ながらも、ついてきた。確かに、レオンが選んだルートでは結界の反応が起きない。


「すごい……」


エリアがつぶやく。


「魔法学院でも、こんな高度な結界解析は上級生でないと……」


「そんなに高度ですか?」


レオンが振り返る。


「なんとなく魔力の流れを追っただけですが」


森の奥に進むにつれて、古代の魔法技術の痕跡がより濃くなってきた。木々に刻まれた古代文字、空中に浮かぶ光の粒子、そして――


「あれです」


レオンが指差した先に、苔に覆われた石の建造物が見えた。


「本当に遺跡が……」


エリアが息を呑む。


「図書館の地図は正確だったんですね」


建造物の入り口には、巨大な石扉があった。扉には複雑な古代文字が刻まれている。


エリアがそれを見上げて困惑していると、レオンは何の躊躇もなく文字を読み上げた。


「『真なる技術者のみ、この地に眠る遺産を継承せよ。知識を求める者には試練を、技術を極める者には栄光を』……だと思います」


「え?」


エリアが驚いて振り返る。


「今、古代文字を読んだんですか?」


「読めたような気がします」


レオンがごく自然に扉に手を置く。


「で、どうやって開けるんでしょうね、この扉」


レオンは扉を調べ始めた。表面には魔法陣のような模様が刻まれているが、これも理解できる。


エネルギー回路、認証システム、そして――


「あ、これは魔力認証ですね」


レオンが手を扉に当てる。


「特定の魔力パターンを要求してます」


「特定の魔力パターン?」


「古代魔導工学を理解している人の魔力パターンです」


レオンが魔力を扉に流し込んだ。


「つまり……」


すると、扉の文字が青白く光り始めた。


「こんな感じでしょうか」


ゴゴゴゴ……という重厚な音と共に、石扉がゆっくりと開き始めた。


「うそ……」


エリアが後ずさりする。


「本当に開いた……」


「思った通りでした」


レオンが嬉しそうに笑う。


「さあ、中に入ってみましょう」


地下に続く階段の先に、淡い青光が見えた。レオンが足を踏み入れると、自動的に照明の魔法陣が起動した。


「自動照明システムですか」


レオンが感心する。


「三千年前の技術とは思えない精密さですね」


地下室は想像を遥かに超える、まさに奇跡のような光景だった。


浮遊する魔道具、自動で動作する機械装置、そして中央に荘厳に鎮座する巨大な青い結晶。


「これが……」


エリアが完全に息を呑む。


「古代魔導工学の工房……」


レオンは、まるで導かれるように中央の結晶に近づいた。それは【魔核炉心】と呼ばれるものだと、なぜか直感的に理解できた。


古代文明の魔導技術の究極の集大成。


『ようこそ、若き技術者よ』


突然、頭の中に声が響いた。【魔核炉心】から発せられる意識の声だった。


「あ、こんにちは」


レオンが手を振る。


「すごい工房ですね」


『汝は……興味深い』


声が続く。


『古代の叡智を理解しているようだが……』


「理解してます」


レオンが結晶に手を触れる。


「というか、これって現代の技術より効率的ですよね?」


『……』


しばらく沈黙があった後、声が再び響いた。


『汝の内に眠る【古代視】を覚醒させよう』


突然、レオンの頭の中に膨大な情報の洪水が押し寄せてきた。


魔導回路の設計図、失われた古代文字の意味、そして何より――この工房のすべての技術と、それを超える可能性。


「おお……」


レオンの瞳が青い光を帯びて輝く。


「これは本当にすごい知識ですね」


レオンの視界が完全に変化した。工房の設備一つ一つの機能、使い方、そして隠された真の可能性が、まるで長年親しんだ道具のように理解できる。


まるで古代の技術者の魂が彼の中で目覚めたかのように。


「レオンさん?」


エリアが心配そうに近づく。


「大丈夫ですか?」


「大丈夫です」


レオンが振り返る。その目には新しい光が宿っていた。


「むしろ、すごく調子がいいです。エリアさん、見てください」


レオンが工房を見回す。


「この工房の技術を使えば、今まで誰も作ったことがない魔道具が作れるかもしれません」


「誰も作ったことがない……」


エリアがつぶやく。


『汝はこの工房の新たな主となる』


【魔核炉心】の声が響く。


『古代の技術を現代に復活させるのだ』


「復活ですか……」


レオンが首を傾げる。


「でも、復活させるだけじゃもったいないですよね。もっと発展させたいです」


『発展?』


「古代の技術は確かに優秀ですが」


レオンが工房の装置を見回す。


「現代の知識と組み合わせれば、もっとすごいものが作れるかもしれません」


どれも素晴らしい技術だが、レオンの知識と組み合わせれば、さらに向上させることができる。


「エリアさん」


レオンが振り返る。


「ここを新しい工房にしませんか?」


「新しい工房って……」


エリアの声が震える。


「レオンさん、ここは古代遺跡ですよ? 勝手に使っていいんですか?」


「【魔核炉心】が許可してくれました」


レオンが結晶を撫でる。


「それに、ここの技術を現代に活用するのは、古代の人たちも喜んでくれると思います」


『その通りだ』


【魔核炉心】の声が響く。


『技術は使われてこそ価値がある』


エリアはレオンと【魔核炉心】を交互に見て、深いため息をついた。


「レオンさんと一緒にいると、本当に常識が通用しませんね……」


「新しいことを試すのは楽しいですよ」


レオンがにっこりと笑う。


エリアはまたため息をついたが、その表情には呆れと同時に、微かな期待も混じっているように見えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ