第27話 量産体制の挑戦
第27話 量産体制の挑戦
翌朝、レオンはいつもより早く工房で目を覚ました。昨日の10台受注の余韻が残る中、今日は本格的な量産体制を整える必要があった。
「おはようございます、レオンさん」
エリアが朝食を持ってきた。彼女の表情にはいつもの穏やかさがあったが、目の奥に少し心配そうな色が見える。
「おはようございます、エリアさん。心配してるみたいですね」
「はい。10台という大きな受注、本当にうまくいくでしょうか」
レオンは作業台を見回した。昨日完成したばかりの共鳴増幅装置が、今日からフル稼働することになる。
「レオン、準備はどうですか?」
セレスが現れた。彼女の表情はいつになく真剣で、手には昨夜作成した生産計画表を抱えている。
「はい。一応、10台の製造スケジュールは考えてみました。ただ…」
「ただ?」
「現実的に考えて、2週間で10台は結構厳しいかもしれません」
その時、工房の中央からアルカナの声が聞こえてきた。
「みんな、おはよう!」
【魔核炉心】から現れたアルカナは、いつもより意欲的な様子だった。
「昨日は良い成果だったわね!久しぶりに技術で大勢の人を助けられそうで」
「アルカナさん、おはようございます」エリアが挨拶する。「でも現実問題として、2週間で10台は難しそうですが…」
「どうして?」アルカナが首をかしげる。「共鳴増幅法があるじゃない」
「でも物理的に厳しいでしょう」セレスが困った顔をする。「一度に処理できる数にも限界が」
「そんなことないわ!」アルカナが胸を張る。「もう少し工夫すれば、もっと効率的にできるかもしれないわよ」
レオンが興味を示した。「どんな工夫でしょうか?」
「処理台を増やすの!」アルカナが嬉しそうに説明し始める。「一台じゃなくて、二台、三台と並行して使うのよ」
「それは興味深いですが」エリアが現実的な問題を指摘する。「そんなに多くの処理台、この工房に入るでしょうか?」
「工房のレイアウトを変更すればいいのよ!」アルカナがさらに提案をする。
「レイアウト変更?」セレスが眉をひそめる。「どの程度変更するんですか?」
「えーっと」アルカナが指で測るような仕草をする。「今より二倍くらい効率的に?」
「二倍!」三人が同時に驚いた。
「無茶言わないでください」レオンが慌てて止める。「そんなに大幅に変更したら、使い慣れた配置が台無しです」
「でも効率は大事よ!」アルカナが無邪気に言う。「技術者なら効率を追求しなくちゃ!」
午前十時、工房での作業開始。
昨日と同じように、四人が集まった。しかし今日は具体的な量産計画について話し合う必要があった。
「それでは、10台の製造計画を確認しましょう」
レオンが計画表を広げると、みんなの注意が集まった。
「昨日の実験結果を踏まえ、どのような工程で進めるか検討してみました」
エリアが身を乗り出す。「それで、どんな計画でしょうか?」
「はい」レオンが資料を確認しながら答える。「共鳴増幅法を使って、5台ずつ2回に分けて製造するつもりです。各回7日間で、合計14日を予定しています」
「14日…」エリアが少し心配そうな表情を見せる。「予定より2日オーバーですね」
セレスが続けて質問する。「材料の調達はどうでしょう?」
「魔導金属10台分の調達は可能ですが」レオンが説明する。「高品質なものを揃えるには、少し時間がかかるかもしれません」
アルカナが不安そうに言う。「品質管理も大変そうね」
「はい、申し訳ありませんが…」
セレスも同様に心配すると、やはり難しいという答えが返ってきた。
工房に少し重い雰囲気が漂い始めた時、アルカナが手を挙げた。
「はい!私からも提案があります!」
皆がアルカナを見る。彼女は控えめに立ち上がった。
「もう少し効率的に作れるかもしれないわ」
「効率的に?」エリアが首をかしげる。
「そうよ!共鳴増幅法を改良すれば、もっと多くの装置を同時に処理できるかもしれないの」
三人の目が興味深そうに光った。
「それは素晴らしいです」セレスが期待を込めて言う。「期間はどの程度短縮されるでしょうか?」
「うまくいけば!12日で全部完成できるかもしれないわ」アルカナが希望を込めて言った。
「12日で10台全てが?」レオンが期待する。
「ちょっと待ってください」エリアが慎重に確認する。「そんなに効率を上げても、品質は大丈夫でしょうか?」
「品質も向上するかもしれないわよ!」アルカナが控えめに提案をする。「共鳴パターンを最適化すれば」
「最適化?」セレスが驚く。
「つまり、共鳴増幅法をさらに改良して、より効率的な製造方法を開発するということでしょうか?」エリアが確認する。
「そういうことよ!」アルカナが嬉しそうに頷く。
三人が顔を見合わせる。レオンは技術者として興味を示していた。
「アルカナさん」セレスが現実的な問題を指摘する。「そんな改良を今から始めて、間に合うでしょうか?」
「え?」アルカナがきょとんとする。「時間?」
「改良には実験が必要ですし…」エリアが心配を示す。「かなり時間がかかりそうですが」
「あ…そうね」アルカナがしょんぼりする。
しかし、レオンが興味深そうに言った。
「やってみる価値はあるかもしれません」
「そうですね」セレスも同意する。「これだけの技術改良ができるなら、挑戦してみたいです」
エリアも前向きに計算を始めた。「改良にかかる時間を考慮しても、最終的には効率化できそうです」
「技術的な向上を考えれば」アルカナも前向きな意見を示す。「挑戦する価値は十分にあるわ」
レオンは嬉しくなった。みんなが技術改良に前向きな姿勢を示してくれている。
「えーっと」レオンが慎重に言う。「本当にそんな改良ができるでしょうか?」
「やってみなければ分からないけど」エリアが真剣な表情で答える。「挑戦してみる価値はありそうです」
アルカナが再び手をぱたぱたと振る。
「そうよ!そうすればみんなで良いものが作れるわ!」
「でも具体的にはどうするんですか?」セレスが実務的な問題を指摘する。「改良の方法が…」
「それなら」アルカナが提案する。「共鳴パターンの数学的最適化を試してみましょう」
「それは良い案ですね」エリアが同意する。
レオンは技術者として興奮していた。朝の時点では「厳しいかも」と考えていたのに、いつの間にか技術改良の話になっている。
「あの…」レオンが期待を込めて言った。「本当に実現可能でしょうか?こんな改良…」
「分からないけど」アルカナが控えめに答える。「やってみる価値はあるかもしれないわ」
「でも理論計算とか、実験とか、色々と手順が…」セレスが心配そうに言う。
「そういった技術的な問題は」レオンが請け負った。「【古代視】で詳細に確認してみます」
「測定データも」エリアが付け加える。「精密に記録して分析しましょう」
あっという間に改良計画がまとまりそうな雰囲気になってきた。レオンは技術者として興奮する半面、責任の重さも感じていた。
「それじゃあ」セレスが提案する。「まずは理論的な検討から始めましょうか」
こうして、レオンの工房での量産計画は、いつの間にか技術改良プロジェクトに発展していた。
夕方、作業を終えた後、四人は工房で一日を振り返っていた。
「今日はいい検討ができましたね」レオンが満足そうに言う。
「アルカナさんの提案、実現できそうでしょうか」エリアが期待を込めて言う。
「みんなで協力すれば」セレスが前向きに分析する。「不可能ではないと思います」
「頑張りましょう!」アルカナが相変わらず意欲的だった。「きっと良い結果になるかもしれないわ」
レオンは作業台を見ながら、これから始まる技術改良について考えていた。技術者として、とても興味深いプロジェクトになりそうだった。
「でも、焦らずに一歩ずつ進めましょう」
レオンが慎重に言う。
「確実に品質を保ちながら、効率化を図りたいですね」
「そうですね」
三人が声を揃えて答える。
「無理をせず、でもより良いものを目指していきましょう」




