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第16話 迫りくる脅威

第16話 迫りくる脅威


「すぐそこまで来ている?」


アルベルトの顔から血の気が引いた。王国最高位の魔導技師であっても、この状況には動揺している。


「はい!森の向こうに魔力反応を確認しました!」


部下の緊迫した報告に、工房内の空気が一瞬で氷のように凍りついた。エリアが無意識にレオンの袖を掴んだ。


「人数は?」


アルベルトの声が緊張でかすれている。


「約二十名!完全武装の調査部隊です!」


セレスの美しい顔が心配そうに青ざめる。


「二十人……昨夜より多いですね」


彼女の声が不安で震えていた。


レオンが心配そうな表情で防御システムのコントロールパネルに駆け寄る。彼の手がわずかに震えていた。


「第二層、第三層を同時起動した方がいいでしょうか?」


「まずは様子を見ましょう」


アルベルトが慎重に提案する。


「話し合いの余地があるかもしれません」


「話し合い?」


エリアが不安そうに聞く。


「相手の正体も確認したいですし」


その時、工房の外から太鼓の音が響いた。


ドンドンドン!


「何の音?」


「組織の合図かもしれません」


アルベルトが窓の外を見る。


「あの人たちが来ますね」


森の向こうから、黒い装備を着た人々が現れた。隊列を組んで、整然と工房に向かってくる。その行進は威圧的だった。


「どんな組織なんでしょうか……」


セレスが美しい体を小さく震わせる。彼女の瞳に、恐怖と心配が混じっていた。


先頭を歩く男性が前に出て、大声で叫んだ。


「古代遺跡の住人に告ぐ!特別調査機関のドラゴフである!」


レオンが窓から恐る恐る顔を出す。その声には、必死に勇気を振り絞った震えがあった。


「何の用でしょうか?」


「機関の命により、この遺跡と技術者の身柄を確保する!抵抗すれば強制的に対処する!」


アルベルトが毅然とした威厳で前に出る。王国最高位の魔導技師としての責任が、彼の背筋を伸ばしていた。


「そちらの組織に告ぐ!ここはグランディア王国の領土である!即刻退去せよ!」


「グランディア王国の技師団長アルベルト・フォン・シュタインか」


ドラゴフが冷たい笑みを浮かべて冷笑する。


「邪魔をするなら、まとめて始末する」


「始末?」


「古代技術は我々の組織のものだ。邪魔する者は敵とみなす」


工房の中で、レオンが困った表情で深呼吸してから、おそるおそる決断を下した。その瞳に、古代技術者としての責任感が宿っていた。


「防御システムを起動してみましょうか?」


レオンが申し訳なさそうに提案する。


瞬間、工房全体が柔らかい光に包まれた。


第一層の探知システムが相手の位置を把握し、第二層の混乱システムが周囲の環境を少し歪める。


「何だ、これは?」


調査機関の人々が困惑し始めた。


「道が……よく分からない」


「コンパスが少し狂ってます」


「隊列を保て!何らかの妨害だ!」


ドラゴフが部下に指示を出すが、第二層の効果で隊列は少し乱れ始めている。


「技師団長、これは……効果があるようですね」


アルベルトの部下が控えめに言う。


「古代技術のようですが……」


しかし、ドラゴフは経験豊富な指揮官らしく慌てない。


「対策装備を装着しろ!」


調査機関の人々が一斉に銀色の装置を身に着ける。


「あ……対策されてるかもしれません」


セレスが美しい顔を歪めて心配そうに呟く。困ったような表情が浮かんでいる。


効果が徐々に弱くなっていく第二層を見て、レオンが第三層の起動を考えた。


「第三層も起動してみましょうか?」


レオンが遠慮がちに提案する。


工房周辺の魔力レベルが少し上昇する。


「隊長!魔力レベルが上がっています!」


「構わん!前進しろ!」


ドラゴフが前進を命じた瞬間だった。


第三層の麻痺魔法が発動した。


「うわっ!」


最前列の数名が動けなくなって倒れる。


「睡眠魔法も同時発動!」


さらに数名が意識を失って地面に崩れ落ちた。


「思ったより……効果があるようです」


アルベルトが王国最高位の技師としての経験でも驚く威力に、控えめに驚嘆する。


しかし、調査機関も黙っていない。


「魔法対策班、前進!」


特殊な装備を身に着けた人々が前に出る。


「対魔法結界、展開!」


人々が結界を張ると、第三層の効果が大幅に減少した。


「やはり、準備してきてますね」


レオンの額に玉のような汗が浮かんでいた。必死に冷静さを保とうとしているが、心配が漏れている。


『レオン、転移魔法を使ってみるか?』


【魔核炉心】が古代の知恵で助言する。


『相手を分散させるのだ』


「やってみます」


レオンが申し訳なさそうに転移魔法を発動すると、調査機関の人々の半数が突然消えた。


「転移魔法だと?」


ドラゴフが初めて驚愕の表情を見せる。


「まさか、空間魔法まで使えるのか!」


しかし、戦況はまだ決着がついていない。


残った人々は十名以上。まだ十分脅威的な数だった。


「技師団長、どうしましょうか?」


アルベルトが心配そうな表情で部下に相談する。


「王国魔導兵団も、何とか対応してみますが……」

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