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第11話 防御システムの構築

第11話 防御システムの構築


「ガレスの件で分かったことがあるわ」


翌朝、工房の朝食テーブルで三人は昨日の件について改めて話し合っていた。


セレスが上品にパンを小さくちぎりながら切り出す。


「思っていた以上に、この工房の存在が広まってるわ」


エリアがカップを両手で包み込むように握り、不安そうな表情を浮かべる。


「また、ああいう人が来るんでしょうか……」


「残念だけど、必ず来るでしょうね」


セレスが美しい顔に憂いを浮かべながらため息をつく。


「善意の人もいるだろうけど……」


レオンが眉をひそめる。


「ガレスみたいな調査目的の人間も確実に現れる」


「セレスさん、何か対策はあるでしょうか?」


レオンが真剣に尋ねる。


「まず、現在の工房の防御能力を確認しましょう」


セレスが現実的な提案をする。


「現在の防御能力?」


レオンが首を傾げる。


「古代遺跡としての自然な防御機能がどの程度残っているかです」


なるほど、確かに古代遺跡なら何らかの防御システムがあるはずだ。


レオンは【魔核炉心】に聞いてみることにした。


「【魔核炉心】、この工房の防御機能について教えていただけますか?」


『基本的な侵入者排除機能はある』


古代の声が工房に響く。


『しかし、長期間の放置で劣化している部分も多い。現在の性能は本来の三割程度だろう』


「三割ですか……」


レオンが心配そうに考え込む。


「それでは不十分ですね」


『修復すれば、本来の性能に戻すことは可能だ』


【魔核炉心】が続ける。


『レオンの技術があれば、古代以上の防御力も実現できるかもしれない』


「古代以上?」


セレスが身を乗り出す。


「具体的にはどのような?」


『多層防御結界、自動迎撃システム、侵入者識別機能……』


【魔核炉心】が列挙する。


『そして、最も重要なのは隠蔽機能だ』


「隠蔽機能?」


エリアが聞き返す。


『工房の存在自体を隠す。認識阻害の結界だ』


「それは……良いアイデアかもしれません」


レオンが慎重に答える。


「発見されなければ、問題を減らせるかもしれませんね」


「でも、そんな高度な結界を本当に張れるの?」


セレスが心配そうに眉をひそめる。


「やってみないと分からないですが……」


レオンが困ったような表情を見せる。


「試してみる価値はあるかもしれません」


「まずは現在の防御システムを確認してから」


セレスが現実的な提案をする。


三人は工房内を歩き回って、古代の防御システムの痕跡を探し始めた。


「ここに何かありますね」


エリアが床の一角を指差す。


そこには、魔法陣らしき模様が薄っすらと刻まれている。


「これは……侵入者感知の魔法陣でしょうか」


レオンが魔法陣に手を触れる。


すると、陣の線が淡く光り始めた。


「まだ少しは機能しているようですね」


「でも、反応が鈍いわね」


セレスが魔法陣を調べる。


「魔力供給が不十分なようです」


「もしかしたら修復できるかもしれません」


レオンが申し訳なさそうに提案する。


「試してみてもよろしいでしょうか?」


セレスとエリアがうなずくと、レオンが慎重に作業を始める。


魔法陣の線を辿り、損傷した部分を見つけて修正していく。


一時間ほどで、魔法陣が本来の輝きを取り戻した。


「これで侵入者感知は改善されたと思います」


レオンが控えめに答える。


「次は認識阻害結界を試してみませんか?」


レオンが工房の出入り口に向かう。


「エリアさん、もしよろしければ【共鳴金属】を持ってきていただけますか?」


「はい」


エリアが材料を運んでくる。


レオンは【共鳴金属】を使って、特殊な魔力アンテナを作り始めた。


「これを工房の四隅に設置してみます」


レオンが作業を進める。


「四つのアンテナが連動して、認識阻害フィールドを形成できるかもしれません」


「認識阻害フィールド?」


セレスが質問する。


「中にいる人には影響ないの?」


「理論上は、外から見た時だけ効果があるはずです」


レオンが説明する。


「森の一部として認識されるので、工房があることに気づかなくなるかもしれません」


二時間で、四つのアンテナが完成した。


工房の周囲に設置すると、すぐに効果が現れる。


「すごい……」


エリアが工房の外に出て確認する。


「本当に森にしか見えません」


「これで、偶然の発見は防げるかもしれませんね」


セレスが少し安堵の表情を見せる。


「でも、まだ不十分だと思います」


レオンが心配そうに腕を組む。


「本格的に探している人には通用しないかもしれません」


「そうですね。段階的に強化していく必要があります」


セレスが現実的な提案をする。


『良い判断だ』


【魔核炉心】が賛成する。


『多層防御が基本だ』


「次の段階では、もっと本格的な対策も考える必要がありますね」


レオンが工房全体を見回す。


「でも、今日はひとまずこれで少し安心できるかもしれません」


エリアが控えめな安堵の笑顔を浮かべた。


「三人で力を合わせれば、きっと良い方法を見つけられますね」


そう言うエリアの笑顔は、最初に工房を訪れた時の困惑した表情とはまるで違っていた。


セレスも、レオンの常識外れな技術に最初は困惑していたが、今では彼の信頼できる協力者となっている。


セレスが【魔核炉心】を見上げる。


『その通りだ。君たちなら必ずやり遂げられる』

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