嵐の章〜【強殖装甲】対【超存在】、開戦〜
〜時間は僅かに遡る〜
ゼクトール『うおぉぉぉ…!!』
咆哮しながら突撃するゼクトールの右前腕から突起…【高周波ソード】が展開、伸長し、そのまま眼前の相手〜【超存在】ギュオー〜を袈裟懸けに斬り倒さんと迫る!!
ギュオー『舐めるな!!』
迎え撃つギュオーも右肘の【高周波ソード】を展開、そのまま迎撃せんとする!
直後…名状し難い程の高音が辺りの空気を震わせ…思わずその場にいた五人…特に椛と文が耳を押さえてうめいた。
文&椛「きゃぁっ!?」「あうっ…!?」
アリス『ち、ちょっと…大丈夫!?』
魔理沙「物凄い音だな…なんなんだ?」
霊夢「わからないけど、二人のあの技だかなんかは、互角らしいわね…見て!」
二人の【高周波ソード】がぶつかり合い、轟音を立てた刹那…互いに刀身を離して距離を取ると、今度はギュオーが左拳にエネルギーを収束、【重力指弾】を解き放つ!!
ギュオー『喰らえぃ…!!』
ゼクトール『…チィっ!!』
負けじとゼクトールも左前腕の装甲を展開、四門の【粒子ビーム砲】を斉射して反撃!
互いの攻撃が交錯…が、【重力指弾】の方が出力が高いのか、ゼクトールの放った光線はそれを相殺しきれず、指弾は飛来する!
ゼクトール『!?(回避)』
ギュオー『…ほう、俺の【指弾】を半ば相殺する、か。大した出力だ…よほど強化されたと見える。ならば…そろそろ本気で行かせてもらうとしよう!』
ゼクトール(馬鹿な…かつては【生体砲台型】として、最強を誇った【超獣化兵】の…更に奴を倒すために全てを捨てて得たこの力が…ここまで通じん、だと!?)
ギュオー『貴様のその『力』…かつての俺ならば、確かに苦戦は免れまい。だが…今の俺は違う、ゼクトール…俺の額を良ぉく見てみるがいい…』
ゼクトール『…な、バカな!?そ…それは…!?』
ギュオーの額を凝視したゼクトールは、驚愕と戦慄のこもった叫びを挙げた…そこにあったのは、彼がかつて捕獲対象として追っていた存在…【強殖装甲】をその身に纏った者【殖装体】の…【制御装置】だったからだ!!
ゼクトール『ば…馬鹿な、だとしたら…き、貴様は!?』
ギュオー『ククク…その通り。俺は【獣神将】であり、そして【殖装体】…この二つを同時に体現した、全てを超越した存在…そう、【超存在】なのだ!!』
圧倒的、ともいえる殺気と悪意…そして、絶対的な力を持つ者がその身に纏う『闘気』…それらが綯い交ぜとなり、辺りに物理的な圧力すら伴って吹き荒れる…!
ゼクトール『…く、くくく…くはははは…!!』
霊夢•魔理沙「…え?」「お、おい…大丈夫なのか、ゼクトール…?」
ギュオー『…圧倒的な差を痛感して狂ったか。なら…せめてトドメをくれてやるのが、情けと…!?』
霊夢たちの心配をよそに、狂ったかのように笑い出したゼクトールに近づこうとしたギュオーの頬を、ゼクトールの粒子ビームが一条、迸り掠める!
ゼクトール『狂った?バカを言うな…あの時出来なかった雪辱を、まさかこんな形で果たせるとは…嬉しくてたまらんのさ。そう、『ガイバーへの復讐』をな!!』
ゼクトールは吠えながら猛然とギュオーめがけて突っ込むが、ギュオーは嘲りの気配を浮かべて呟いた。
ギュオー『ふん…舐めた事を…奴らと俺の差を、貴様のその思い上がりごと粉砕してやるわ…来い!』
椛「だ…大丈夫なんですか、あのでっかいカブトムシみたいな人…!?」
アリス「彼の名前は『ゼクトール』よ、とりあえず覚えておきなさいな。…けど、なんか引っかかるわね…」
魔理沙「何がだ…?」
文「(痛みに顔をしかめつつ)あの人…ゼクトールさん、でしたか…策もなしに突っ込んでるようには見えないんですよね、なんか仕掛けようとしてませんか…?」
霊夢「そうね…私もちょっと気になったのよ…なら、手伝いくらいはしましょうか…!」
魔理沙「…だな!」
突撃したゼクトールは、一つの策を思いついていた…が、その『策』を実行するにはギュオーの隙を突かねばならない…。
ゼクトール(ギュオーは今のところ、口調はともかく思ったよりも冷静だ…どうにか隙を見つけねば、長期戦でジリ貧になる!)
ギュオー『バカの一つ覚えか…鬱陶しいわ…ぐぉっ!?』
嘲笑と共に【重圧砲】を放とうとしたギュオーの背中に、弾幕が複数直撃する!
魔理沙「食らえ…【魔符•ノンディレクショナルレーザー】!!」
アリス「行きなさい…【蒼符•博愛のオルレアン人形】!!」
霊夢「行くわよ…【夢符•封魔陣】!!」
椛「行け…【狗符•レイビーズバイト】ぉ!!」
文「(痛みに顔をしかめつつ)【旋符•紅葉扇風】!!」
五人分の弾幕が不意を突く形でギュオーに炸裂したものの…ギュオーのバリアをなんとか突破、かすり傷を負わせるのが手一杯だった!?
ギュオー『ちぃ…調子に乗りおって、小娘どもが…!?』
だが…その一瞬が致命的となる!
ゼクトールは全力でギュオーの懐へ飛び込み、頭部の角を突き刺す…というフェイントを仕掛け、左腕をソードもろとも、ギュオーの脇腹に突き込む…が!
間一髪…ギュオーへの一撃は脇腹を少し抉った程度で直撃を逸れ…逆にゼクトールは左腕を極められて動きを封じられてしまった!!
ギュオー『惜しかったな…その角、もしくは【高周波ソード】が当たっていれば…致命傷だったはずだが、な』
ゼクトール『確かに…な。だが!』
ギュオー『!?』
ゼクトール『かかったのはお前の方だ…こいつを持っていけ(超高熱放射&超高電圧放電)!!』
ギュオー『ぐがぁぁぁぁ…!?!?』
咄嗟に極めていた腕を離して逃げようとしたものの…間一髪で間に合わず、ギュオーは至近距離で地獄の業火と500万ボルトを超える超高電圧の直撃をもろに浴びてしまう!!
椛「な…!?」
文「凄い…!」
アリス「あんな技を隠してたの…!?」
魔理沙「すげえ…やるなぁ、ゼクトール!」
霊夢「…ま、待って…まさか!?」
ゼクトール『ぬぅ…っ!?』
至近距離から高熱と高電圧の直撃を浴び、失神して墜落するかに見えたギュオーは…ゼクトールの僅かな隙を見逃さなかった!
ギュオー『甘いわ…【超存在】と化した俺を甘く見るな!!』
ゼクトール『ぬおぁ…っ!?』
ギュオーの咆哮と共に放たれた【ヘッドビーム】の連発をマトモに食らったゼクトールは、苦痛の呻きを上げて距離を取る!!
魔理沙「そ…そんな、嘘だろ!?」
文「あ、あんな強烈な攻撃を食らったのに…!?」
アリス「冗談になってないわ…」
椛「な、なんて怪物ですか…!?」
霊夢(あんな勢いの攻撃を受けて反撃するなんて…アイツ…!?)
霊夢たちもあまりの事態に愕然とするしかない…よもや、五人ががりでかすり傷がやっと…など、流石にプライドが傷つこうというものだ。
が、この状況下で真っ先に冷静さを取り戻したのは霊夢だった…。
霊夢(…大技を繰り出せれば、あるいは…?けど、そのためにはさっきみたいに隙を作る必要がある…どうする?)
ギュオー『小虫風情と侮っていたが…数が集まれば傷も入る。ならば…ゴミから片付けるか』
冷静に呟くと、ギュオーは静かに着地し…霊夢達に歩いて接近する。その威圧感…いや、底の見えないドス黒い殺気と悪意に、流石の霊夢たちも戦慄を禁じ得なかった…。
ゼクトール『俺を無視するとは…舐めるなぁ!!』
ギュオー『…かかったな、マヌケが!!』
眼前でいきなり無視される形になったゼクトールが怒りも露わに突撃してきたところを、嘲笑いながらギュオーは【重圧砲】の時間差連射で迎撃!
ゼクトール『!?!?』
咄嗟の回避が間に合わず、ゼクトールは左足と左の羽根をもがれて墜落する…!
アリス「ゼクトールさん…!?」
文「ま、まずい…あの落ち方は!?」
椛「…く…!!」
魔理沙「こ…この野郎、ふざけるな…【魔符•スターダスト•レヴァリエ】!!」
ゼクトールが撃墜された様を見た魔理沙は逆上し、問答無用とばかりに仕掛けるが…ギュオーのバリアを貫通できない!?
〜実はこれの理由が、ギュオーのバリアをはじめとする全ての能力が【強殖装甲】を殖装したことによる増幅が原因である、と判明したのは…しばらく後の話である〜
ギュオー『ふん…小賢しいな。まだヴァモアのレーザーの方が威力があるぞ?まぁいい…纏めて掃除してやるとするか』
魔理沙「な、なんて奴だ…」
アリス「簡単にやれるなんて思わないで…これはどうかしら!【闇符•霧の倫敦人形】!!」
アリスの影から人形が複数飛び出し、そのまま猛烈な勢いで弾幕を撃ち出すが…本当にバリアを突破できないで無数の火花を散らすだけである…。
ギュオー『数を撃てば良い、というモノでもないのだが…なかなか面白い真似をするではないか、ん?(嘲笑)』
アリス「…(驚愕)」
流石にここまで通じないとは思いたくなかったのか、アリスも愕然とした表情を浮かべる…眼前に在る【超存在】は、本気で悪夢の具現化としか思えなくなってきていた…。
ギュオー『さて…そろそろ終わりにしてやろ…!?』
ゼクトール『させるかぁ!!』
ギュオーが何かをするべく身構えた刹那…ゼクトールが低空飛行しながらの突撃を敢行、ギュオーへ体当たりをかましてギュオーにしがみつくと、霊夢達に向けて吠えた!
ゼクトール『お前ら、さっさと逃げろ…今のコイツに、お前らでは勝てん!!』
魔理沙「ぜ…ゼクトール、あんた!?」
ゼクトール『俺の事は構うな…俺は元々、ここへ来る前に死んでいたはずの身だ、今更生命など惜しくはない!』
文「ど…どういうことです、それ!?」
ゼクトール『説明している暇はない…さっさと行けぇ!!』
霊夢「悪ふざけは大概にしなさい、ゼクトール…私の目の前で、生命を粗末に扱おうなんて絶対に許さないわ!」
ゼクトール『!?』
ギュオー『戯言は地獄でやれ、馬鹿者どもが…!』
ギュオーはただ筋力だけでゼクトールを引き剥がすと、そのまま霊夢達の方へ無造作に放り投げ、そして…明らかに異様なまでのエネルギー集中を始めた!
ギュオー『茶番は終わりだ…まとめて死ね!!』
霊夢「…させない、【夢符•二重結界】!!」
ギュオーが何かの大技を放つより早く、霊夢の切り札がギュオーに襲いかかる!!
ギュオー『むぅ…っ!?』
ギュオーの呻き声が微かに聞こえた…その刹那、ギュオーを中心とした範囲が凄まじい量の弾幕に包まれ…そして、空間が反転…そのまま押し潰されるように弾ける!!
…数瞬の後、辺りには物凄い量の土煙が立ち込め、視界すらマトモに効かない程の惨状を呈していた。
荒い息をつきながら霊夢は、近くに吹き飛ばされて転がってるゼクトール(左足と羽根が千切れていて、まともに立てない)に向けて怒鳴っていた。
霊夢「あんたね…自分の生命を粗末にするんじゃないわよ!!そんな真似して、誰が喜ぶのよ…バカも大概にしなさい!!」
ゼクトール「な…ば、馬鹿とはなんだ!?俺は…!」
霊夢「うるさい!!!あんたがどこで何をしてたか、そんな事はどうでもいいわ。でもね…ここへ、幻想郷へ来て、私たちと出会ったのなら…貴方は、私の…私たちの仲間よ。それを無視して…勝手に生命を投げ捨てるような真似なんてしないで、いいわね?」
ゼクトール『……』
魔理沙「そうだぜ、せっかく出会えたってのに…そんな真似すんなよ、ゼクトール…」
椛「助けてくれた事のお礼も言えないで、そんな風にいなくなられるのは…嫌です」
アリス「そういうことよ…せめてもう少しだけ、命は大事になさいな」
文「やれやれ…思ったよりも無茶苦茶する人ですねぇ…って、危ない!?」
次の瞬間…文の悲鳴と、【ヘッドビーム】の閃光が霊夢の右脇腹を貫いたのは…ほぼ同時だった。
霊夢「え…?(地面に倒れる)」
魔理沙「霊夢!?」
椛「霊夢さん!?」
アリス「霊夢!?」
文「な…まさか!?」
ギュオー『…驚いたぞ、まさか俺のバリアを貫通してくるとは、な…。だが、敵を確実に仕留めたかの確認を怠るようでは…な!』
土煙が晴れ…そこには、全身に傷を負ったものの、凄まじい速度で傷が再生していくギュオーがそこにいた。
ギュオー『少し驚いたが…そのまま死ね、【地裂振動破】!!』
全員「!?!?」『!?』
ギュオーの咆哮と共に凄まじい程の振動〜地面ごと、辺りの空間が猛烈に揺れ動くレベルのそれ〜が発生、無差別に周囲を破壊しつつ霊夢とゼクトール達を飲み込んだ…!!
…振動が収まると、そこには先ほどよりも凄まじい破壊の痕跡が広がっていた…。もはや形あるものを探す方が大変な程の惨状の中心に傲然と立っていたギュオーは、哄笑を上げていた。
ギュオー『フ…フフ…フハハハハ…!!思い切ったか、虫けらどもが!!これこそが【超存在】の威力よ!!俺の邪魔をする全ては、この力で砕き散らしてくれるわ!!』
……が、そんな破壊の嵐が吹き荒れた大地に、動くものが複数あった。
それは…ゼクトールと霊夢たちである。
咄嗟にゼクトールが霊夢達を抱えて背中でガードしたのと、魔理沙達が障壁を展開したことで…なんとかダメージをこらえる事はできたのだが、まずいことに霊夢と魔理沙達、ゼクトールがバラバラに飛ばされてしまったのだ。
流石にダメージが大きく、魔理沙達も立ち上がれない…ゼクトールに至っては背中の鞘羽が砕け、翅が無残に千切れてしまっていた…。
霊夢「う……」
ギュオー『…ほう、まだ息があるとは…しぶといものだ。まぁいい…お前から地獄へ送ってやる』
その様子に気づいたギュオーはわざとゆっくり地面に倒れている霊夢に近づき、頭を鷲掴みにして自身の目線の高さにまで持ち上げ、嘲笑含みの声をかけた。
ギュオー『さて…小娘、お前が地獄への先触れを務めるがいい。なぁに…すぐに周りの奴も後を追うから寂しくはなかろうよ!』
ゼクトール『ま…待て、ギュオー…殺るならば、まずは俺からにしろ…!!』
ゼクトール『喧しいわ…くたばり損ないはそこで見ているがいい。お前は最後に、お前以外を皆殺しにしてからじっくりと嬲り殺してやる…楽しみに待っていろ!!』
ゼクトール『お…おのれ、おのれぇぇぇ…!!』
ゼクトール(くそ…またか、またなのか?俺は…俺は、また仲間を失くすというのか、何もできず…!?)
アリス(だ…誰か、霊夢を…)
文(たすけて…誰か、霊夢さんを…)
椛「お願い…だれか、たすけて…」
魔理沙「お、ねがい…れい、むを…助け、て…」
ギュオー『さぁ…お別れだ!!』
ゼクトール『やめろおぉぉぉ!?』
"…斬…!!"
ギュオー『ガァァァァ!?』
全員「え…!?」『な…!?』
ギュオーが哄笑しながら霊夢の頭を握り潰そうとした瞬間…なんと、ギュオーの右腕が肘から切断されて吹き飛んだ!!
そして、霊夢の身体と切り飛ばされた右腕はそれぞれ明後日の方向へかなりの速度で吹き飛んでいき、更に…霊夢が空中で静止したかと思うと、あり得ない挙動でアリスや魔理沙達のところへ飛んでいったのである。
??〘なんとか、間に合った…!〙
その声が虚空に響くと同時に…霊夢を抱えた怪人がその姿を現す。
全体的なフォルムは人型なのだが…名状し難い姿をしている、不思議な怪人である。
ギュオー『ぐ、おぉ…き、貴様ぁ…!?』
切り飛ばされた右腕を押さえ、ギュオーが驚愕と憎悪丸出しの声で呻く。が…怪人はそれを無視すると、霊夢をそっと地面に下ろし、近くにいた魔理沙に声をかける。
怪人〘えぇと…君が『霧雨魔理沙』さん、だね?〙
魔理沙「そ…そうだが、誰だあんた?」
怪人〘詳しい話は後で…。俺達は『八雲紫』さんに頼まれて、ここへ来たんだ。あと…コレを渡せ、と『レミリア』さんから預かってる…使ってくれ(腰の後ろに付けてきた袋を渡す)〙
魔理沙「あ、あぁ…」
呟きながら袋を受け取る魔理沙を見ながら、アリスと文は呆然としていた。
文「…な、なんなんですか、ホント…?」
アリス「紫とレミリア…どういうこと?」
椛「……(警戒心丸出しで唸る)」
怪人〘…アイツは、ギュオーは俺達が倒す。君達は一刻も早くここから離れてくれ!〙
唸り声を上げる椛に少し引き気味に、怪人は言葉をかける…と、ギュオーが憤怒の咆哮を上げて襲いかかる!
ギュオー『お…おのれ貴様、よくも邪魔してくれたなぁぁぁ!!』
咆哮を上げつつ放った【重圧砲】を、なんと怪人は片手で弾き散らす!!
ギュオー『…!?』
怪人〘分かってても…とんでもない出力だな。けど…お前の手の内はわかってるんだ、ギュオー!!〙
ギュオー『き、貴様…何者だ?』
怪人〘…行くぞ、ギュオー!!〙
ギュオーの困惑を無視し、怪人は一気に間合いを詰めると前腕の突起を伸ばし、そのまま突きかかっていく!!
ギュオー『チィ…っ!』
咄嗟に避けて間合いを取り、牽制とばかりに【重力指弾】を乱射するギュオー。
無差別にばら撒いた指弾が辺りに土煙を上げ、簡易の煙幕となる。
ギュオー(奴は…まさか!?)
ギュオーの脳裏に、一つの記憶が蘇る…かつて遭遇した、屈辱と驚愕の記憶…。
ギュオー『お…思い出した、奴は…!?』
??『ギュオー…覚悟!!』
その刹那、土煙の向こうから放たれたそれは…ギュオーの放つものと同じ【重圧砲】だ!
ギュオー『!!(バリア展開)』
咄嗟にバリアを展開して凌いだギュオーの…晴れていく土煙の向こうに現れたその姿を、ギュオーは忘れる事ができなかった。
ギュオー『き…貴様、【ガイバーⅠ】!?な、なぜここに…!?』
土煙の向こうから現れたのは…両手を【重圧砲】の発射態勢で構えていた、1本の角を頭から生やし、額に輝く金属球を持つ、青みがかった装甲に包まれた異形の怪人…そう、彼が知る自分を除いた三人の『殖装体』のうちの一人…【ガイバーⅠ】その人だった!!
ガイバー『そんな事はどうでもいい…今度こそ、確実にお前を倒す!(突進)』
ギュオー『く…だが、今の俺は貴様より全てが上回る。かつての俺にもロクに歯が立たなかった貴様に負ける道理なぞ…!?』
??『誰が一人だと言った?貴様を倒す理由があるのは…晶だけじゃないぜ、ギュオー!!』
と、突如咆哮を上げ、虚空から別の怪人〜青く輝く、虫とも魚ともつかぬ不思議な姿をした怪人〜が左前腕から突起を伸ばして突きかかってきた!!
ギュオー『ぬう…っ!!』
ギュオーは咄嗟に左腕の【高周波ソード】で打ち払うように振るい、怪人の突起とソードが接触した瞬間…
周囲に凄まじい音…先刻、ゼクトールとギュオーがソードのぶつかり合いに発したのと同じ音が発生し、辺りの空気を激しく裂いた!!
魔理沙「きゃあっ!!」
アリス「っ…!!」
椛(耳を押さえて呻く)
文「…(顔をしかめつつ)さっきのゼクトールさんと、同じ…彼らは一体?」
ゼクトール『ば…馬鹿な、奴は…奴らは…!?』
魔理沙「ゼクトール…あの二人、知ってるのか?」
レミリアからの預かりもの〜高級な回復の霊薬の瓶が複数入っていた〜を霊夢に振りかけ、自身も飲んで回復を図っていた魔理沙が、霊薬をかけられて回復した(変身していると、ゼクトールは飲食できないためである)ゼクトールに問いかける。
ゼクトール『ああ…かつて俺が組織にいた頃、捕獲か抹殺する対象として追いかけていたのが…あのガイバーⅠこと【深町晶】だ。アイツは今のギュオーとだいたい同じ能力を持っている…だが、もう一人は…まさか!?』
ゼクトールの声に驚愕が混ざり…そして、その気配に明らかな怒気が混ざる。
ゼクトール『まさか…奴は、【アプトム】なのか?だとしたら…奴のあの姿は一体…?』
アリス「ゼクトール…さん?」
ゼクトール『…む、すまん。あの二人は、間違いなくギュオーの敵だ。問題は…ガイバーⅠの方はともかく、あのアプトムは…』
ゼクトール(まさか…俺だけでなく、奴までここへ来るとは…どういう事だ。しかし、この好機を逃す訳にはいかん、どうする…?)
椛「あ…れ、霊夢さん!?」
霊夢「う…うう(覚醒)…」
魔理沙「れ…霊夢、目が覚めたのか!?」
文「よ…良かった…!」
アリス「レミリア達に、後でお礼を言っておかないとね…」
霊夢「…こ、ここは…って、奴らはどうなったの!?」
覚醒していきなり跳ね起きた霊夢の勢いに驚きつつ、アリスと魔理沙が順に説明する…。
アリス「あのあと、あんたが気絶して頭を握り潰されかけたら…」
魔理沙「紫とレミリアに頼まれて来た…って、あの二人が助けてくれたんだ(指をさしつつ)。ただ…あの二人をゼクトールは知ってるみたいでな」
霊夢「(顔をしかめつつ)ゼクトール…どういう、こと?」
ゼクトール『無理をするな…と言いたいが、そうも言ってはおれんか。簡単に言えば…奴らは俺にとって因縁の相手だ。特にあの青い魚だか虫みたいな奴は、な…』
椛「そ、そうなんですか…。けど、いきなり二人になりましたし、そもそもあの二人からも人間の匂いがしますけど…?」
魔理沙「あの一本角の方…なんかギュオーに似てるな。アレ、本当に人間か…?」
文「あと、青い魚だか虫みたいな方の人…気配からすると人間じゃないですよ、もう…」
乱入してきた二人が、ギュオーとの戦場を離して行くような動きを取っているため…安全圏にいる形の霊夢とゼクトール達は、警戒しつつ情報を確認している。
ギュオー『貴様…アプトムか?ずいぶんと姿が変わったものだな。それにその戦力…前の俺なら、確かに負けていたやもしれん。だがな…!!』
ギュオーは嘲笑を浮かべ、ガイバーⅠとアプトムの二人をバリアを応用した衝撃波で吹き飛ばす!
ガイバー『うわっ…!?』
アプトム『ちぃっ…!?』
衝撃波に跳ね飛ばされるもそれを利用する形で、二人は距離を取る。
アプトム『わかってはいたつもりだが…洒落にならんな、流石に』
ガイバー『ああ…かつて村上さんが言ってたのは、この事だったんだ。こんな奴を野放しにはできない…!』
アプトム『…晶、俺が少しの間席を外しても、奴を相手に時間を稼げるか?』
ガイバー『…どうする気だ?』
アプトム『そろそろ準備ができたからな…そのためだ。だからしばらく頼むぜ!!』
そう吠えるなり、アプトムはギュオーに真正面から突っ込んで行く!!
アプトム『死んでもらうぜ、ギュオー!!』
ギュオー『小賢しいわ!!』
突進してきたアプトムに嘲笑を浮かべつつ吠えたギュオーの左手に、【重圧砲】の気配が宿る…。
それを読んでいたアプトムは、そのままコースを寸前でずらし…ギュオーの右から仕掛ける!!
アプトム『貰った!!』
ギュオー『…馬鹿め!!』
そう叫んだギュオーが放ったのは…『再生した右腕からの【重力指弾】』だった!!
アプトム『な…!?』
アプトムは指弾の直撃を食らい、下半身と右腕を吹き飛ばされてしまう!!
ガイバー『アプトム!?』
アプトム『俺に構うな…ヤツを倒せ、晶!!』
ギュオー『フハハハ…ガイバーⅠ、貴様なぞ今の俺の敵ではない。この俺【獣神将】を超えた【超存在】となったのだからな…数多の屈辱、まとめて返してやるわ…死ね!!』
ガイバーⅠにピンチが迫る…!!