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ニノ章〜【厄災の超存在】咆哮す〜

〜隕石落着地点付近〜


萃香「この近く、みたいだねぇ…」

勇儀「…ああ、だけど…思ったのと違うような気がするんだけど」


隕石と思われたモノを見かけた萃香と勇儀は…幻想郷の中では一番乗りで落着地点に到着していた。

周りは衝撃と熱で荒れ果てているが、彼女らにしてみれば、熱は大したものではない。

衝撃で地面が荒れているが…まぁ、このくらいなら支障はないレベルなのか、さほど気にした様子はない。

しばらく周りを見渡しつつ歩いて行くと…彼女らの目に、妙なモノが見えてきた…。

勇儀「…ん?」

萃香「…なに、あいつ?」


おそらくは落着した場所であろうそこには、割と大きめのクレーターができていた。

その中央辺りに佇む…一人、いや…一匹の【鬼】のようなモノが立ち尽くしているのだ。

身長は間違いなく勇儀より高く、身体も一回りは大きいが、何よりその身体から異質な気配…というよりは『鬼気』や『闘気』、否…『殺気』を垂れ流しにしている。


そして、よくよく見るとそれは…身体の表面が焦茶色の装甲のようなモノで覆われ、身体のあちこちに宝石か水晶のようなモノが埋め込まれ、ヘソのあたりには金属の珠が埋め込まれている。

更には耳と一体化したような感じで大きな角が2本生えており、眉間の辺りにはこれまた金属の珠が、そして…その上辺りには大きな水晶がそれぞれ埋まっており…その上辺りから、長い角がこれまた1本生えている。

長い角の横あたりにはこれまた金属の珠が埋まっており、初見の萃香が思わず「あんなに身体のあちこちに石やらなんやら埋まってて、痛くないのかね…あれ」と呟いたほどである。


勇儀「降ってきたのは…アイツ、みたいだねえ」

萃香「私たちの同類ではないね…臭いが違う。アイツ…あの形で人間の臭いがするんだけど、どういうこと…?」

勇儀「聞いてみりゃいいさ…答えないなら、殴るけど。…お〜い、そこのデカいの、あんた一体何も…!?」

勇儀が声をかけた瞬間…そいつの額の金属球が突然発光、同時にその上にあった大きな水晶から、強烈な閃光を放ってきたのだ!!


2人『!?!?』

突然の反応、それも敵対的なそれに対して一瞬で反応し…閃光を回避した二人は、揃って物騒な笑みを浮かべて呟いた。


萃香「…問答無用、ってかね。舐められたもんだわ」

勇儀「私らが言うのもなんだけど…初対面の相手には礼儀くらいは尽くしなよ、本当に」


??『…なんだ、貴様ら…見たところ『獣化兵』でもなさそうだが、妙な反応をさせているな』

勇儀と萃香の言葉に反応したのかは分からないが、眼前の異形が口を開いた…声からするに、どうやら中年あたりの男らしい。

ただ、声がやたらと耳障りな金属質な音に聞こえるせいか、萃香は眉をしかめつつ質問してみることにした。


萃香「あんた…何者だい?こっちは普通にものを尋ねたってのにいきなり攻撃してくるなんて、殺されても文句なんて言えないよ?」

??『フン…人間でもない化け物風情が礼儀を語るか、世も末だな。まぁいい…ならば名乗ろう』

『俺の名はリヒャルト•ギュオー、【獣神将(ゾアロード)】…いや、【超存在(オーバーロード)】ギュオーだ!!』

異形…ギュオーは咆哮しつつ名乗るが、萃香も勇儀も顔を見合わせて困惑気味に言葉を漏らす。


勇儀「…頭でも打ってるのかね、アイツ?」

萃香「永琳のところへ放り込んだ方がいいかな、これは…」

??→ギュオー『さて…そこの女ども、俺は名乗ったぞ、貴様らも名乗れ…殺すまでは覚えておいてやる』

勇儀「…口の聞き方からなっちゃいないねぇ…!!」


ギュオーの物言いにカチンと来たのか、勇儀は一瞬で間合いを詰め、そのまま拳で殴りかかるが、次の瞬間…驚くべきことが起きた!!

なんと…ギュオーは勇儀の拳を、軽く片手で受け止めたのだ!しかもそのまま拳を掴み、握り潰そうとしてくる!!


勇儀「…!?」

何とか拳を外し、慌てて間合いを取った勇儀だったが…一瞬で思考を切り替えるも、その脳裏には疑問が渦を巻いていた。

勇儀(なんだい…コイツ、私の拳を余裕綽々で掴んで、挙句に握り潰そうとしてくるなんて…。しかも、まるで本気にすらなってない…人間の臭いはするってのに…どういうこと?)

萃香「勇儀!?」

勇儀「気をつけな萃香…コイツ、変化の術で人間が化けた、なんて代物じゃないよ。【ぞあろーど】だか【おーばーろーど】だか知らないが…なんか変だ」

萃香「だね…臭いんだよ、コイツ。人間の臭いを掻き消すくらい…っと!?」

ギュオー『…フン…甘いわ!』

互いが言葉を交わす程度…その刹那にすら撃ち砕けろ、と言わんばかりに、ギュオーの左右の拳から強烈なエネルギー弾【重力指弾(グラビティブレッド)】が連続で放たれる!!

二人「…!?(難なく回避)」

とりあえず回避しながら距離を取ったものの…二人の背中に、文字通り冷たい汗が流れる…。


萃香(…まずいね、アイツの手の内が読めない。これは魔力や呪力の類じゃない…この力は、一体?)

勇儀(私の拳を余裕で受けて反撃してくる時点で、アイツの肉体はハンパじゃない…挙句、これでも余裕すら感じるが…なんなんだい、アイツ?)

ギュオー『どうした…もう終わりか?ならば…こちらから行くぞ』

しばしの逡巡…それすら隙と感じたか、ギュオーが猛烈な勢いで突進してくる…狙いは、萃香!

ギュオー『そこの小娘…貴様から潰してくれるわ!!』

萃香「お舐めでないよ、逆に潰してやる!」

ギュオーの挑発めいた咆哮に、萃香は瞬時に受けて立つ決意を固めて突進、正面から拳を叩きつけ…ようとした刹那、慌てて拳を引っ込め、更に飛び退いて距離を取った!

ギュオー『…ほう、貴様は馬鹿ではないようだな。よくぞ気づいた…褒めてやろう』

よく見れば、ギュオーの左右の(てのひら)にエネルギーの塊〜ワームホール〜が展開している。それに気づいた萃香は、言いようのない危険を察して回避したのだ。

萃香(…なんだい、あの掌の穴みたいなの?)

勇儀「よそ見してんじゃないよ…こっちにもいるのにさぁ!!」

隙を突いた形で、勇儀が一瞬で間合いを詰め…今度こそは、と鉄拳を繰り出す…


が…次の瞬間、とんでもない事が起きた!!


ギュオー『甘いわ!!』

勇儀「がぁぁぁぁ!?」

萃香「勇儀!?」

なんと、ギュオーの掌が勇儀の右拳に触れたように見えた刹那…勇儀の拳が「消えた」のだ。

まるで…見えない獣の顎に咥えられたか、それとも消しゴムをかけられたかのように…そして、僅かに遅れて拳の消えた腕から、猛烈な勢いで血が噴き出した!!


勇儀「ちぃ…っ!」

ギュオー『ぬぅ…!?』

己の腕から吹き出す血を目潰し代わりに浴びせ、慌てて距離を取りつつ…勇儀は一瞬で思考を巡らせる。

勇儀(コイツ…下手に触れられたらマズい、という事か。しかし…それだけじゃないね、なんだい…この違和感は…)

ギュオー『なるほど…咄嗟に己の血を目潰しにする、か。なかなか大した度胸と勝負勘だ、褒めてやろう』

勇儀「…そりゃどういたしまして。けどアンタ…何者なんだい?『ぞあろーど』だか『おーばーろーど』だか知らないが…人間にしては異質過ぎるんだよ、アンタ」

勇儀の問いに、ギュオーは嘲りの笑みを浮かべた刹那…勇儀ですら驚く程の速さで間合いを詰めたかと思うと、猛烈な速さと勢いの前蹴りを叩き込んできた!!

ギュオー『時間稼ぎに乗ってやる…と言った覚えはない、そのまま死ねぃ!!』

勇儀「ぐぉ…!?!?」

萃香「勇儀ぃ!?おのれ…怪しい力如きで思い上がりおって!喰らえ【萃鬼(すいき)•天手力男投げ(たぢからをな)】!!」

ギュオーに蹴り飛ばされてかなりの距離をすっ飛ばされた勇儀の様を見て、さしもの萃香も怒りを露わにして吠え…呪力で巨大な岩を召喚、そのままギュオーへ投げつける!


ギュオー『甘いわぁ!!』

ギュオーの咆哮が轟き…なんと、刹那で飛来した巨岩が粉砕、チリとなって消滅したのだ!

萃香「…!?な、なんだい…コイツ?」

萃香(今…咆哮したと同時に口の球が変な動きをして、それが岩を砕いたように見えた。アイツ…掌の力とか怪力だけじゃない、って事か…厄介だね)

萃香の脳裏に危険信号が点滅する…こんな事は数百年ぶりだ。そして…瞬間的に萃香は思考をまとめ上げる。

萃香(多分、勇儀も何か感づいたから戻ってこない…。となれば、悔しいが仕切り直すか…)


萃香「…【疎符(そふ)六里霧中(ろくりむちゅう)】…!」

静かに萃香が呟くと…その姿が崩れ…そして、辺りに霧が満ちていく…。

ギュオー『む…なんだ、これは?』

萃香「悪いが…アンタの相手は飽きた。だから帰るよ…」

ギュオー『…ちぃ…!』

萃香の声が辺りに響いたものの、ギュオーはその姿を見つける事ができなかった〜後で聞いたところによると、頭部の金属球が動いていたのは霧となった萃香も目撃したが、「なんか気持ち悪い」という感想しか出てこなかったそうである〜…。


…一方、前蹴りを食らって吹き飛ばされた勇儀は、かなりの距離を吹き飛ばされた挙句、肋骨が砕け、更に内臓が破裂するダメージを負って呻いていた。

勇儀「ち…油断した。というより…私より力がある奴が…まさか巨大化した萃香以外にも居るとは、ね…」

勇儀(…人間の臭いがする割に、あんな訳の分かんない力まで備えてるなんて、アイツ…本当になんなんだ?)


と…治癒に全力を注いで大人しくしている勇儀の傍らに霧が立ち込めたかと思うと、一瞬で萃香の姿になる。


萃香「思ったより酷い有様だね…大丈夫かい?」

勇儀「このくらいなら…まだ何とかなるさ。あんたがここへ来た…って事は、奴はどうしたのさ?」

萃香「置いてきた…というより、こないだ吸血鬼の嬢ちゃんからの使い、来てたろ。アレを思い出してね…」

勇儀「…思い出した、確かに来てたね…って、まさか!?」

勇儀が驚いた様子で萃香を見ると、萃香は静かに頷き、言葉を続けた。

萃香「そういうこと…『異変』だか『災厄』が来るかも…ってのは、アイツのことだったのかもしれない、と思ってさ」

勇儀「しくじった…。なら最初から本気でやれば良かったか、仮に暴れても文句言われなくて済むしねぇ…」

萃香「そりゃそうだね…となると、一寸様子見して、それからやり返しに行くとしようか」

勇儀「それも悪くないねぇ…って、そういや気付いてたかい?天狗の小娘たちが近くで見てたの」

勇儀の問いに萃香は頷き、そして彼方…ギュオーのいるであろう辺りを見ながら呟いた。

萃香「あぁ、いたね…確かに。けど…あの天狗たち、何を仕掛けるつもりなんだか…?」

勇儀「ついで、と言ったらなんだけど…(ゆかり)、だったかな、あのスキマ妖怪。【五大老(ごたいろう)】なんて抜かしてた割にずいぶん静かだね…まさか、寝てんのかな?」

萃香「さぁ…?」


〜一方…同時刻の紅魔館、地下室へ至る廊下〜


??「くしゅん!…嫌ねぇ、夏風邪でも引いたのかしら…」

紅魔館の地下にある薄暗い廊下を歩きながら、紫の装束に身を包んだ麗人『八雲紫(やくもゆかり)』はぼやいていた…。

先日届いたパチュリーからの手紙…『近い内に、異変が天から降ってくる』という内容に不穏なモノを感じた彼女は紅魔館の当主レミリアと手を組み、その対策を講じていたのだ…。


紫(本当にやってきたあの異変、いえ…災厄を一刻も早くどうにかしないとならないけど…間に合うかしら)

考えつつ廊下を歩み、地下室の扉を開く…と、そこは予想以上に広々とした空間であった。

この地下室…とにかく広い。天井も壁も見えない…それがなによりも驚異的である。

その中央と思しき辺りには…ぼんやりと光を放つ大きな魔法陣が存在しており、その傍らにはパジャマのような衣装を着た、儚げな少女〜『パチュリー•ノーレッジ』〜が佇んでいた。


パチュリー「準備はできたわ、紫…」

紫「助かったわ…。あの災厄、というか…異変に鬼が二人…偶然しかけたようだけど、手の内が読めなさすぎて様子見する気みたい」

パチュリー「珍しいわね…よほど奇妙な奴だったのかしらね、あれ…」

軽く咳き込みつつ、パチュリーが呟く。

紫「ただ…召喚はもう少し待って。レミリアと…あと一人必要だから」

パチュリー「…徹底してるわね。となると…あの二柱はどうするの?」

紫「話はもう通してあるから…もう異変の対応に回ってもらってるわ」

紫の言葉に、表向きは無表情を通したが…パチュリーは内心舌を巻いていた。

パチュリー(大したものね…それだけ、この幻想郷(ばしょ)が大事…か。でも…この未来を見て、伝えたからには私も責任くらいは取らないと…ね)

紫「大丈夫…?」

パチュリー「…問題ないわ…ん?」

紫「どうしたの…?」

パチュリー「魔理沙が動いたわ…となると、霊夢もじきに動くわね」

紫「…できれば急いだ方がいいわね、彼女を呼んでくる」

紫は少し焦った様子で、自身の能力である『スキマ』を開き…目的地である守矢神社へ飛んだ。彼女〜守矢神社の巫女『東風谷早苗(こちやさなえ)』〜を連れてくるためだ。

紫(急がないと…けど、本当になんなのかしら、あいつ)


〜ほんの少し前、博麗神社の境内〜

博麗神社…それは、幻想郷における異変解決の専門家…と思われている巫女『博麗霊夢(はくれいれいむ)』のいる神社である。

彼女は夕涼みのために外に出てきていたが、天から降ってくる隕石のようなものを目撃した瞬間から、言いようのない不吉さを感じていたのだった…。


霊夢(…なに、この悪寒?凶兆のきざし…って奴かしら。だとすると、面倒が大きくなる前にどうにかした方がいいかしらね…)

と…考え込んでいた霊夢の耳に、微かな足音が聞こえてきた。

その足音の主は…霊夢のよく知る魔法使いの少女の一人『アリス•マーガトロイド』である。


アリス「珍しいわね…私を出迎えてくれるなんて」

霊夢「偶然よ、で…何か用かしら?」

アリス「さっきの隕石だか流れ星…変だと思わない?あれ…どうもパチュリーが占星術で言ってた【異変】らしいのよ。で…魔理沙が一足先に飛び出して行っちゃてね、貴女のところに来たのかと思ったんだけど」

霊夢「魔理沙は来てないわ…昼間に会ったけど。そういえば魔理沙、一人で行ったの?」

霊夢の問いに、アリスは首を横に振りつつ答えた。


アリス「いいえ…こないだ現れた『迷い人』と一緒みたい」

霊夢「『迷い人』って…あの変な妖怪みたいに変身するおじさんのこと?大丈夫なの…?」

アリスの言葉に、僅かに霊夢は驚いたように声を発した。

アリス「あのおじさん…割と無口だけど人は良いみたいだしね。魔理沙も割と話しやすい、って言ってたわ。貴女もそう感じてたと思ったけど…違うの?」

霊夢「彼の人となりの問題じゃないわ…異変に首を突っ込むって、そんな甘いことじゃないわよ。それはアリスも知ってるでしょ…なら急がないと不味いわ、変に怪我なんてされたら寝覚めが悪いもの…!」

アリス「…なら話は早いわ、一緒に行きましょう。私もこの件…少し気になるのよ」

アリスの言葉に、訝しげに彼女の顔をみた霊夢だったが…とりあえず思考を切り替える。

霊夢「…まあいいわ、なら急ぎましょう…!」

アリス「ええ…!」

霊夢はアリスに向けて頷くと、一気に飛び上がる…そして、アリスもポーチに格納していた箒を取り出し、そのまま跨って霊夢の後を追う…幻想郷側の役者は、揃いつつあった…。

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