フォトコンテスト挑戦!
窓の外を流れる景色は、見慣れたコンクリートジャングルから、緑豊かな住宅街の合間に古い瓦屋根の家が見えるようになった。
僕は鎌倉へ向かう電車の中で、3日前の出来事を思い出していた。
――
『フォトコンテストに参加してみませんか?』
画面に表示されたメッセージの送信者は、一条さんだった。
(古都の魅力再発見!か……)
添付されていた募集要項にざっと目を通す。
募集要項には、古都の風景、文化、人々の暮らしなど、幅広いテーマが挙げられていた。
『ええやん!皆で参加しようや!』と、田中のエセ関西弁で返信があった。
いつものことながら、こういうイベント事には誰よりも早く食いつく。
僕はというと、正直乗り気ではなかった。
写真が好きという気持ちは確かに少しある。
でも、それはあくまで趣味の範囲で、誰かに評価されることを意識して撮っているわけではない。
それに、最近は陽菜のことで頭がいっぱいで、他のことに集中する余裕がなかった。
『鷹司くんはどうする?』
一条さんからのメッセージは、僕の名前入りだった。
どこか逃げ道を塞がれたような気がした。
『いいよ』と簡単に一文そう返した。
本当は気が進まなかったけれど、2人が乗り気になっているのに、水を差すわけにはいかなかった。
『場所はどこがいいと思う?』
『関東で古都といったら、やっぱり鎌倉やない?』
一条さんと田中の間では、話がどんどんと進んでいった。
まあ、僕も鎌倉は嫌いじゃない。
何度か行ったことがあるし、落ち着いた街並みは好きだ。
『鎌倉は僕も好きだ。賛成だよ』
どうせ行くなら好きなところに行きたかったので主張をした。
『そっか!じゃあ、決まりだね!3日後の土曜日に鎌倉行こう!』
一条さんによって、猫のスタンプが付け加えられ、グループメッセージのやり取りは一旦そこで途切れた。
――
「まもなく、鎌倉、鎌倉に到着いたします。お出口は右側です」と車内アナウンスが流れた。
長時間電車に揺られていたせいで、身体が重く感じた。
僕は重い腰を上げ、リュックを掴んだ。
扉が開くと、むっとするような熱気が肌を刺した。まだ、5月なのに随分な暑さだ。そして、駅のホームには、観光客らしい人々で溢れていた。
改札を出ると、一条さんと田中が待っていた。
一条さんはにこやかに微笑み、田中は大きな声で僕の名前を呼んだ。
「おー、飛鳥!遅かったやん!」
「ごめん、ごめん最寄駅までのバスが遅延しちゃって」
僕は苦笑しながら答えた。
「ううん、私たちも今来たところだから」
「美月ちゃん!それデートで言うやつ~」
珍しく田中が一条さんにツッコミを入れた。
一条さんは口元に手を当て、目を細めて微笑んだ。
「ほな、それじゃあ鎌倉観光、スタートや!」
「まずはどこに行こうか?」
一条さんが、駅前の観光案内所で手に入れたらしい地図を広げながら言った。
「やっぱり、鎌倉と言えば鶴岡八幡宮やろー」
田中が即答した。
「そうだね。私もそう思ってた。じゃあ、まずは鶴岡八幡宮に行ってみようか」
「鶴岡八幡宮か……中学ぶりだなぁ」
僕は小さくそう呟いた。
「え、飛鳥、中学の時に鎌倉来たことあるん?」
田中が驚いたように尋ねた。
「ああ、まあね。でも、ほとんど覚えてないけど」
僕は田中の右上に視線を外した。
中学の校外学習で一度来たことがある。
その時、陽菜も一緒だったことを思い出し、話がややこしくなるのを避けるため、僕は覚えていないと嘘をついた。
「そっか。じゃあ、ある意味新鮮やな!」
田中は明るく言った。
(田中、嘘ついてごめんな。)
僕らは鶴岡八幡宮へと向かった。駅前から続く若宮大路は、多くの観光客で賑わっていた。
両脇にはお土産屋や飲食店が軒を連ね、活気にあふれている。
「お、美味しそうな団子屋があるぞ!」
田中が早速寄り道しようとした。
店頭に並んだみたらし団子やあんこ団子を見つめる田中の目は、完全に猿のそれだった。
「3人で食べない?お腹空いたわぁ」
「そうだな。僕も朝から何も食べてないから少しお腹が減っちゃった」
一条さんに目を向けると、首を横に振っていた。
「もうそろそろお昼だから私は我慢しようかな」
携帯で時間を確認すると、まもなく12時になろうとしていた。
団子を食べながら若宮大路を進み、大きな鳥居をくぐると、鶴岡八幡宮の境内が広がっていた。
広い境内は、多くの参拝客で賑わっていた。
「わあ、広いね!」
一条さんが声を上げた。
「ほんまや!さすが鎌倉のシンボルやな!」
田中も興奮気味に言った。
本殿に到着し、参拝を済ませた後、境内を散策することにした。
境内には源氏池や、樹齢千年を超える大銀杏など、歴史を感じさせる風景が広がっている。
「すごい大木だね……」
一条さんが大銀杏を見上げながら言った。
「圧倒されるな……」
田中も感嘆の声を漏らした。
僕は、大銀杏の写真を何枚か撮った。
木漏れ日に照らされた大銀杏は、荘厳な雰囲気を醸し出していた。
「そうだ、今日はフォトコンテストのために来たんだった。写真、撮らなくちゃ。」
一条さんは、思い出したと言わんばかりにポンと手を叩いた。
「じゃあ、12時45分まで各自自由に写真を撮って、その後お昼にしようか」
田中が、そう提案をして僕たちは三手に分かれた。
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