導かれし者の帰還 その20
「あっ…あるわよ…」
消え入りそうな声で呟くおばさん。
…怪しいな。
「えっ?」
「あーもういいわ!1万!、1万ポッキリでいいわよ!!」
エリスの追求についに折れた。
「そう?元はタダなのに?」
なおも追求するエリス、なんだか頼もしく思えてきた。
「こっちも商売なのよ?これ以上は負られないわ!」
ありゃ?そっぽ向いた。
どうやらこれ以上は無理そうだ。
…うーん、どうしよう?ここまできて、金がない、なーんて言いづらいよなー…。
「どうするアレス?」
えっ?
…どうするか。
…くっ…しょうがないここは!
「今回は、パスだな」
金ないだけだけど。
残念!めっちゃ欲しかった!!
「そうかい?アレス専用特別仕様に仕立てておくよ?」
何!?
なおも食い下がってきた。
なんか凄そう!欲しいなぁ…けど持ち合わせが…。
しゃーない、ここは正直に言うしかないか。
「いや、今はそんなに持ち合わせがないんだ」
恥ずかしいー。
「そうなのかい…」
うっ!
おばさんの小バカにしたような目線が胸に突き刺さる!
「そうなの?…じゃー私が払うわ」
「えっ?」
いやいや!
「もちろん貸しだけど」
うっ!!
レディーに借りて買うなんて、男としてのプライドが許さないぜ!
「いやいいよ、お金貯めて後で買いに来るさ」
「そう?けどこの服、早くアレスに着てもらいたがってるわ」
「えっ?服の気持ちがわかるの?」
「まさか、ここにあるよりは、アレスに着て貰った方がいいわよ!…その方が父さんも喜ぶと思うし」
「そっか」
じーとおばさんを見つめるエリス。
目は口ほどにものを言うとは、まさしくこのことだろう。
「じゃ!決まりだね!お金が出来たらまた来なさい。それまでにちゃーんと仕立てておくわ」
「ああ」
さすが商売人折れなかったな。
…あっそうだっと。
「えーっと…」
店の奥へ戻ると黒くて丈夫な服と革の籠手を取って来た。
…まずは、鉄のナイフを売っぱらってからだな。
「これ買い取ってくれるかな?」
鉄のナイフを差し出す。
「どれどれ、こいつは450ダレルだね」
…少しは足しになったな、よし!
「それとこれ下さい」
「はいよ!…そうねぇ…今度大きな買い物してもらうから、2点で1000ダレルでいいわ」
そう?ラッキー!
「じゃこれで」
カードを手渡す。
おばさんがカウンターの脇に置いてあったブルーオーブにカードをかざすと一瞬、光輝いた。
あれで精算するのか。
「まいどあり」
カードを受けとって、雑貨屋を出る。
結局エリスは、何も買わなかったな。
…さーてこれからどうするか…。
「あのおばさんそっくりだったでしょう?」
「ああ、一瞬、解体屋のおばさんがなんでここに?って思ったよ!」
「フフフ、あの2人双子なのよ、だからそっくりなの」
「そっか、それにしてもそっくりだったなー」
「私も、久々に帰ってきたら、全然区別つかなかったわ」
「エリスでもか、なら俺はなおさらだな」
「フフフ、そうねー」
解体屋の看板を見上てる。
「…そろそろ終わったかな?」
歩きだした彼女の後を追って、解体屋へと向かっていった。
「おう!今鑑定し終わったところじゃぞい!」
中に入ると威勢のいいじいさんの声が響いてくる。
「そう?ちょーどよかったわね」
「なかなか珍しい鉱石もあったのう。久々に興奮したわい!まあわしとエリスちゃんの中じゃ、少し色をつけといたぞ?」
何!俺にも色をつけとけよ!このムッツリめ!
「ありがとう!鑑じいさん」
むっ!ニヤニヤするんじゃねぇ!
ドアを開け、作業場の中へ入ったがおばさんは、まだ解体の最中だった。
「ちょっと待ってね」
いったん中断して、カウンターへ移動したおばさんがブルーオーブに手をかざすとオーブが青く光りだす。
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