導かれし者の帰還 その12
「うん!スゴかったわよー?エリ姉」
「そうなんだー!ティア?私が着いた時は、ヤバイ!って思って、とっさに剣を投げたんだけど、余計なお世話だったかしら?」
いたずらに笑みを浮かべ、問い掛けるエリス。
…イヤイヤ、確かにあの時は、もう終わった…と思った。
「ゴックン、いやー、あの時は助かったよ」
「そう?それは良かったわ」
…可愛い…なんて素敵な笑顔だ…。
「ほんとスゴかったぜぇー!さすがは、勇者様だよなー!」
……んっ!?ユーリ、今なんて?
「勇者?」
そう聞いてきたエリスの表現は、ポカーンと目を見開いていた。可愛い!
…じゃなくて!
「…いやー…」
「フフフ、アレスったらまだそんなこと言ってるの?…そうね。盗賊を気合いだけで倒すなんて…まんざらでもなさそうね?」
「えっ?」
…いや!ナキまで。
「確かに…石ころ一つで相手の動きを止めるなんて、私には思いもつかない芸当だったは…本当に勇者だったりして?」
…おいおい、そんな真顔で言われたら何て言ったらいいか…まあでも嘘はついてないし。
…だがあの時は無我夢中で、アメーバから魔晶石を取るために手を突っ込んだ時は、ゾッとしたな。…寒気がする。
…けど元野球部出身だからコントロールには自信があったんだ…まあ目に当たったのはたまたまだが。
…しかしエリスがそんなふうにとらえていたなんて、なんかラッキー♪
「…いやー、まいったな…」
「「「ハハハハ!」」」
…色々あったが、せぇ一杯やっといて良かったな…。
なんだか心配そうにエリスが声をかけた。
「…あれ?村長?どうしたんですか?なんか浮かない顔して、食欲もないみたいだし」
…確かにさっきから黙りこくって、ほとんど食べ物にも手をつけてないな。
「ん!?…いや…」
言いよどむ村長の代わりにナキが察したように問いかけた。
「…あっ!もしかして、村の食料の事が心配で、食べれないんじゃないの??」
「…ん??…そうじゃ、そうそう、ワシみたいなじいさんが…なんだか申し訳なくてのう」
…えっ?そこまで深刻だったのか?
「えっ!?そんなに厳しいの??…私がしばらく留守にしてたから…あっ!そうそう、みんなが喜ぶと思って、鹿を一頭狩っておいたんだけど、少しは足しになるかな?」
「そうなの!?それは良かったわ!ねえ村長?」
「おう!助かるわい!」
「そう?良かったー!」
…さすがはエリスだな!けど鹿って、ウサギより遥かに強そうだな…。
…おっ鹿と聞いて子供達も喜んでるな。
「…あっ!そーいえばさっき急いで来たから、地下の食糧庫に置いてきたんだっけ、アレス?後で解体屋へ運ぶの手伝ってくれない?」
…ん?解体屋?ギルドじゃなくて?
「ん?いいよ。でも解体屋ってなんだ?捕ってきた獲物は、そこに運ぶの?」
「えっ?そうよ?当然じゃない!」
…そうなのか…けどそんな驚かなくても…俺この世界の事、全然知らないんだけどなー…。
「…ああ、アレスは、記憶喪失みたいなのよ」
「記憶喪失?そういえばさっきナキ姉、彼が村の前で倒れてたとかなんとかって?」
「そうそう、だから一から教えないとダメなのよ」
…そうそう、説明するの面倒だからそうしてるんだが…。
「そうなの?」
…うっ…そんなに見つめられたら。
…だが今さら面倒だならそういうことにしてんだ。なーんて言える訳ないよ。
「…ああ、名前と歳くらいしか覚えてないんだ…」
「そう…なんか訳ありみたいね?…まあ、わからないことがあったら、遠慮なく聞いてちょーだい?」
「ああ、よろしく頼むよ」
…良かったー。だがそんなまじまじと見つめられたら照れくさいなー。
……ん!?これって?…エリスと仲良くなるチャンスじゃ!?
「おっほん!お二人さん?依頼に関する事なら、ここにギルドの者がいるんですが?」
「「あっ!」」
ミューネのもっともな意見にふと出た声がエリスと被ってしまった。




