第四話 男の娘が襲われている
安全地帯であるであろう魔法学校につく。校門前には、たくさんのアンドロイドが導線を剥き出しにして倒れていた。
辺りはコンクリートやアスファルトがボロボロに砕け、足場が悪くなっていた。凍りついたところや、熱で溶けて固まったような痕跡。それらがちらほら見える。
アンドロイドとアンドロイドの対抗戦力が戦った跡なのだろうと分析する。
――ジジッジー
「またあの音か。ちょっとうるさいな」
ラジオでよく耳にするような音が聞こえてくる。スピーカーからでているのか、時々響いているのだ。駅にいるときも聞こえてきたな。
呼吸を乱しながら、学校の敷地内に入る。指定避難所でもあるため、当然すごい数の人がいた。
パニックになっていて騒がしく、錯乱しているのか外に出ようとしている人もいる。そこに誰かが取り押さえて体育館ホールへ連れ込んだりしている。
今まで平和に過ごしていたところに、殺人マシーンがたくさん出現した。そのせいで情緒不安定になっている人が増えたようだ。
今何が起きているのか聞きたいんだが、こういう人から聞くべきではなさそうだ。
取り敢えず、落ち着いていそうな人から聞こう。
「とは考えたものの聞けそうな人が全くいない……」
慌てて作業しているか、情緒不安定な人や子供。それぐらいしかいない。こうなったら思い切って話しかけるしかなさそうだな。
そう考えていると、声が聞こえてきた。物陰の方からだ。
俺はそこにいるであろう人に話しかけに行く。
すると金髪ショートの女の子が目に入った。そいつは大きな体躯の男に絡まれている。
女の子は嫌々な顔で何かを話しているようだ。ナンパかこんな時に……。
「危なくなったら守ってやるから一緒にいようぜ」
「いや、やることがあるんで無理。それに勘違いしているようだからいうが、オレはこう見えても男だ」
「男?そんなわけ無いだろ。その顔と声で」
はぁ〜またやっている……。そこにいたのは俺の同級生であった。名前は須崎 幸。
あいつは見た感じ女の子に見えるが、言動どうり女の子ではない。
女の子に見える男なのだが、その容姿のせいで、たびたび男にナンパされている。いつもご苦労さま。
厄介事に巻き込まれないうちに、急いでそこから離れようと引き返す。しかし、俺の存在を察知したのか、呼び止められてしまう。
「お〜い。蒼汰!助けてくれぇ〜!頼む!頼むから!!!」
名前を呼ぶなよ。チッ!仕方ない聞けそうなやつはこいつしかいなそうだ。手を貸すか。
足を止めて、声の元へ振り返る。
「おい。そいつは本当に男だ。その証拠にあそこを触ればわかる」
「え……ちょっと!蒼汰!何だよそれ」
「ほぉーう。それは面白そうだな」
ああ、確かに面白そうだな。お前の顔が引きつるところが。男は幸のそこに手を伸ばす。そして届くと。
「お……おいおい……まじか」
「そういうことだ。そいつは男だよ。離れてやりな」
言われたとおり助けてやった。これで面倒事は去っただろう。
「ふふふふ」
なんだろうか。そこの男から恐ろしく低い声が響いてくる。よく見ると口角が上がっていた。引きつるどころか、ニヤけてやがる。
「(まさか男の娘が現実にいるとは)」
何か聞こえたような気がした。いや、聞こえた。
男の娘とは、女の子に見える男。いつであったか、漫画やアニメで出るようになり、世の男に新しい性癖を作り上げた存在だ。
どうもそれに興奮する者は、男女問わずこの世に、はびこっているらしい。現にこいつがよく狙われているからわかる。
まあ、こいつの場合は女には腐女子にしか興奮してもらえない良くわからない補正がある。可哀想に……。
「な……くるな……。蒼汰助けてくれ……何でもするから……」
ああ……泣き顔になってしまった。流石に良くないな。これは。俺はそこの男に目を向ける。
「あーそこのお前、これ以上は止めてやりな」
「蒼汰ぁぁ〜うぁぁぁぁ」
泣きすぎだ。耳が痛くなる。
「はぁ?嫌だね。男であろうと、せっかくこんなに可愛いい子が目の前にいるんだ。みすみす逃すような軽い男じゃないんだぜ俺はな!」
「そうかよ。一応、こっちもこいつに用事があるんだ。これ以上は言わなくてもわかるな」
そう言って両者とも喧嘩腰になる。周りは驚くほどに静まっていく。
やっちまった。このタイミング……このタイミングで喧嘩に持ち込んでしまった。今、俺の脚は走りまくったせいで疲労困憊。器用に動かすほどの元気はない。それどころか少し震えている。
それに対して相手はピンピンに立てているのだ。"能力が使えない今の俺じゃ勝機がない"。こうなったら勝てるやつを呼べばいい!
俺は息を大きく吸って大声を出す。
「助けてくれぇ!人がアンドロイドに襲われてる。誰か!誰か来てくれ!」
「おっおい!誰がアンドロイドだ」
「助け……」
俺の叫びによって周りの人は、混乱をしながら逃げ出す。そしてすぐさま、黒い制服を着た人達がやってきて男は取り囲まれたのであった。
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