第二話 共生と社会と不穏なアンドロイド
登校する時間になり、ルナ姉と共に家を出た。
「帰りてぇ。ルナ姉、家に戻らないか」
「なに寝ぼけたこと言っているのよ?学校行くよ」
「面倒くせえよ。今の時代、学校に行く意味ないだろ。仕事もほとんどAIがやってくれるんだし、毎月給付金が貰えるんだから」
今、社会はAIが、ほとんどの仕事をやってくれる。なので、あらゆる職場は人が活躍の場を持つことが出来なくなっているのだ。
また、わからないことがあれば体内に入ったナノマシンが教えてくれるし、ある程度計算をしてくれる。学ぶ意味があるのだろうか。無いだろう。だから俺は帰りたかったのだが。
「蒼汰。学校は人とのコミュニケーションのためにも必要なんだよ。ほぼ働く必要のない社会だからといって、子供のうちから引きこもってばかりいたら、言葉すら喋れなくなるんだから」
確かにそうだ。だけどそれなら学校でなくてもいいのでないかと考える。例えば、サッカークラブや野球クラブなどでコミュニケーションを測ればいいのではと。それをルナ姉に言ったらこう言われてしまった。"学校の方がたくさんの考えに触れ合えるから、いろんな経験ができるでしょ"。納得した。
「確かにそうだな。さすがルナ姉」
「わかってくれたみたいね」
ルナ姉は満足そうに胸を張ってこちらを見る。本当にかわいい姉だ。姉扱いするとたまに機嫌が良くなっていい顔する。背伸びする子供みたいで尊い。
「まあ、それに私達の学校は"機工力者"が事故を起こさないようにするための施設でしょ」
「そうだな。野放しにすると危険だとかで学校を創ったんだったよな」
――ナノアビリティ
それはナノマシンを保持した極一部の人が、機工力という特殊な能力に目覚める。世界は彼等を機工力者と言われている。
政府はその機工力者を管理するべきと考えて俺たちが通う学校、通称:魔法学校を創設した。
ちなみに俺も機工力者だが、ルナ姉は違う。機工力を持っていない人も入学はできるようだ。
そんなことを考えていると身体が震えてくる。今日はいつもと違って寒い。俺は手を合わせながら温かい息を吹きかける。
「はぁ〜はぁ〜はぁ〜」
「コンビニでも寄ってカイロでも買う?」
「そうだな。このままだとやばいかも」
天気予報では、気温が2度にまで冷え込むらしい。寒くないはずがない。けどルナ姉は寒がっていない。男と違ってスカートだから身体が冷えると思うのだが、よく震えたりしないな。
もしも、俺の機工力が、身体が温まるものだったら寒い思いもしないのに。カイロのような人が知り合いでいたらいいのにな。そしたら冬も楽なのに。我ながら人をなんだと思っているんだろうか。
しばらく歩いてコンビニの中に入る。暖房がきいてて、もうここから出たくないと思ってしまう。しかし、そこに留まっているわけには行かない。俺は棚に並んでいるカイロを2つほど手に取り、コンビニの出入り口へ歩く。ナノマシンで出来る素通り決済をすると店員アンドロイドが少し不気味な声を出す。
「ゴゴゴ、購入ありがとうございます。す……」
若干裏声っぽく、少しばかりノイズが混じっていた。俺は、目も合わさずに無視するように店を出た。
「何か今のアンドロイド少し不気味だったね。壊れてるのかな?店の人に連絡するね」
「どうせ、まれにある故障だろ。後で誰かが連絡するだろうからほっとこうぜ」
「そうだね。時間かかるかもしれないし」
それに店長さんがやって来れば気づくだろう。そんな感じで心のなかで言い訳をする。実際はあまりアンドロイドに関わるのが嫌なだけだ。
長時間目にすると嫌なものを思い出しそうになるからな。このアンドロイドの多い社会が生きにくい。それにしても今朝のニュースやらさっきのことやらでアンドロイドが不穏に感じる。
俺は、白いため息を付きながら、さっき買ったカイロを出す。2つあるので片方はルナ姉に渡す。我慢は良くないぞ、と一言言って。
「ありがとう。すご〜く温かい。蒼汰の手もこれぐらい温かければ、カイロとして使えるのに。ザーンネン」
「俺から熱を持っていかないでくれ。それに手は冷たいけど、代わりに心は温かいんだよ。それで満足しろ」
「なら、手が温まったとき心が冷たいと言うことだよね。その時は、手を冷ましてあげないとね」
「やめてくれ冷え性になる」
とんだブーメランが返ってきてしまった。まあ、冗談だろうが、悪くないのかもしれない。いや、めちゃくちゃいい。っていやいや待て、俺は何を考えているんだ。それじゃ恋してるみたいじゃないかよ。確かにルナ姉は好きだがその気はない!
俺はカイロで手を温めながら、そんなことを考えるのであった。
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