プロローグ 死が近づく。そして生が近づく
2050年冬
(あー!どうしてこうなるんだよ!!!)
日が照りにくい道で、一ノ瀬 蒼汰は鬼ごっこをしている。しかし、誰もが知っている鬼ごっこではない。捕まれば殺されてしまう鬼ごっこである。しかも鬼は一体ではない。
蒼汰は、息を切らしながらも兎に角、走り続ける。後ろを振り返るとドンドンと、とても重く硬い物を床にぶつけているような足音を鳴らす人影。それらは自転車ぐらいの速さで走り寄ってくるのがわかる。
滝のような量の汗が流れていくのが鬱陶しい。
(ヤべー!このままじゃ追いつかれる)
時々ふらっとしてしまうが、死にものぐるいで駆け逃げる。無理もない。何せ、1、2時間は走り続けているのだから。それなのに何故追いつかれないのか。それは相手も同じく疲れているからではない。
相手は、自転車ぐらいに足が速い。蒼汰はその速さに弱点があることに気づいたのだ。それは――曲がり角を曲がることだ。
相手は速い分、上手く曲がることが出来ない。身体がスピードの処理に追いついていなかったのだ。それに気づいて今まで逃げてこられたのだ。
しかし、その逃走法も限度があった。追手達は曲がり角辺りで速度を落とすようになり、曲がる際の動きが改善されてきているのだ。
また、こちらの体力も減り続けているため距離を離すことが出来なくなっていた。
(どうにかしないと殺されるぞ!)
蒼汰は作戦を見直すことにする。辺りは住宅街にマンション。そして今の時代にめずらしい古本屋が建物の隙間からわずかに見えた。蒼汰は迷わずに古本屋を選択する。
(間に合ってくれよ!)
この状況を脱する希望が見えかけ、後の体力を無視して全速力で走る。口から酸の味が出てきて、そろそろ身体が限界を迎えようとしているのを感じる。
険しい表情のなか、死ぬわけにはいかないと言っているかのような強い瞳が古本屋を刺す。
ドンドンドンドン!
さらに追っての足音がさっきよりも増えている。しかし、気にせずに向う。通り道にあるゴミ箱を散らして、足のふみ場を減らし、少しでも相手の動きを鈍らせる。
そして、蒼汰は古本屋のなかに入り、ある物を掴む。
「ハァハァ……へへ!俺の勝ちだ!アンドロイド!」
そのある物は電子機器の敵とも言えるもの――消火器であった。蒼汰は安全ピンを抜いてアンドロイド達に吹きかける。
店内で噴出したことで、消火器の粉が充満してしまう。およそ10秒たったあたりで粉の出る勢いが消える。
ガタン!ガタン!ガタンドスン!
次々と何かが倒れていく音がする。それは蒼汰が狙っていたことが起きた証であった。しばらくして少しづつ粉が晴れていくのを持つとそこには、アンドロイド達が倒れていた。
(成功だ!)
アンドロイドや複雑な機器は、構造上、高熱を発生してしまう。そのため冷却装置が取り付けられている。
冷却装置は、フィルターから風を通して熱を逃がすようになっているが、そのフィルターを粉で塞いでしまえばどうなるか。
高温によるオーバーヒートを起こして機器が使えなくなってしまうのだ。
「フゥー。とりあえず休むか」
蒼汰は、ヘトヘトな身体を壁につけて床に座る。そして、店内にあるこの世界には、めずらしいアナログ時計がある。昼前の時刻を指していた。
「はぁ〜。もう昼になんのかよ。ルナ姉はどこにいるんだよ」
蒼汰には、大切な姉がいる。その姉を必死に探していた。しかし、そんな中に命を狙うアンドロイドに出くわしてしまったのだった。
「もう一回GPS開くか。さっきみたいに場所、わかるかもしれねえからな。デ――」
「再起動します」
「ンパ……え?」
不意に無機質な声が耳に入る。音の出どころはそこで倒れているアンドロイドからであった。
「えーと……これは……壊れてはいないな……」
「再起動します」
「再起動します」
「再起動します」
「ヤベェェ!」
蒼汰は体重を足にかけて立ち上がろうとするが、グラついてしまい上手く動けない。
そうこうしているうちにアンドロイド達は、次々と再起動音声を流し、徐々に立ち上がると――
「「発見しました」」
と一言いい、一斉にアンドロイド達はこちらに顔を向ける。そして、死が近づいてくる。
それと同時に、蒼汰は生が近づいてきていたのがゆっくりと見えたのだった。
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