コロナ脳な私は間違っていますか
「あぁ、2週間も休めないよ」
朝のNEWSで、今日の感染者数が1000人を超したと、タレントが嬉しそうに話している。
アイツはきっと、頭がおかしいのだろう。
俺は自他ともに認めるコロナ脳。
コロナと聞けば、何をおいても回避行動をとる。
最近は、親戚の集まりにすら、顔を出さない。
「コロナが心配だからさ」
そう答えると、皆呆れた顔をする。
どんな顔をされたとしても、俺は態度を変えることはない。
働き盛りと言われる年になるまで、何とか頑張って働いてきた。
名ばかり管理職まで上り詰めた会社は、あっさりとコロナに駆逐された。
サービス業で下げ続けた頭を、さらに下げてハローワークに通う。
受付には失業者があふれている。
数少ない求人を奪い合い、やっとのことで見つけた工場の仕事。
どんどん条件をさげながら、面接は実に20回目で、ようやく仕事にありついた。
慣れない力仕事。
寒い冷凍倉庫での作業もある。
土曜日は仕事、祝日と日曜は休みだけれど、ちょっとだけ仕事。
平日に代休あるけど、その分の仕事は終わらせてないと休めない。
いまどき残業代も出ない仕事ではあるけれど、やっとありついた仕事である。
我慢、我慢と言い聞かせる。
コロナが何とかなるまでは、我慢するしかない。
そんな状況で行われるオリンピック。
比例して増える、感染者。
恐ろしく感じて、全然見る気もしない。
開催を決めた奴は、家でのんびりと観戦しているのだろうか。
こちらは、今感染したとして、2週間も休めない。
休んだとしたら、給料はどうなるんだろう。
そもそも、仕事は継続して雇用されるのだろうか。
法律上のルールがあるのはわかっている。
しかし、日本の労働基準法は、あるようでないようなものだ。
だから、コロナと聞くと、身震いしてしまう。
オリンピックもしてほしくなかった。
マスクしない奴は、人でなしに見える。
納豆が予防にいいと聞けば食べ、イソジンがいいと聞けば嗽をして過ごす。
「コロナなんてものは、大げさに騒ぎすぎなんですよ」
どこかの、賢いと有名なコメンテーターが、鼻で笑うように話す。
本当はそうなのかもしれないが、そんなことはどうでもいいのだ。
テレビの画面をにらみつけ、苦くつぶやく。
「少なくとも俺は殺せるさ」