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明日も世界は回るから  作者: 白石ヒカリ
2章 ひとりじゃない
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1.待ち合わせ

翌日の水曜日。


平日にも関わらず私、美柳空ミヤナギ ソラは、学校の制服ではなく、外出用の私服に着替えた。

とにかく急いで、『忘れ物』だけに注意して準備をする今の私。


ちなみに今日の私服は、明るめのベージュのカーディガンに、白のブラウス。

そして明るい青色のフレアスカート。


今年の春に誠也さんと一緒に買い物に来たとき買って貰った、私のお気に入りの服だ。

ちょっぴり『大人になった気分』で、私は好き。


珍しく髪もセットしようかと思ったけど、めんどくさかったから、黒のニット帽をかぶってごまかした。


・・・・と言うより『寝坊』をして、髪のセットどころじゃなかった。


『待ち合わせ時間』はとっくに過ぎている・・。

 

午後九時十五分。


私は待ち合わせ場所である『水族館』まで全力でダッシュ。

私の家から歩いて二十分くらい。


まあでも、今日は『歩いている暇』なんてないけど・・・・・。


今は十一月下旬。


冬らしい『厳しい寒さ』を感じるようにはなったが、走ってきたから凄く暑い。

私の額には大量の汗が溢れているし、普段から運動を怠っている私は息も荒れている。


目的地まで走って十分で着いたはいいけど、不思議と帰りたい気分。


ちなみに待ち合わせ時間は午前九時。

『十五分の遅刻』だ。


だから顔を合わせた瞬間に、『相手に怒られる』と思ったけど・・・・・。


「おはよ、空ちゃん。昨日はぐっすり眠れたかな?」


そう言って私に笑顔を見せてくれるのは、私のお父さんの職場で『お寿司の修行』をする田中誠也タナカ セイヤさんだ。


いつも私に優しいお兄ちゃんみたいな人。

今年で『二十五歳』だっけ。


そんな誠也さんに、私は深く頭を下げる。


「ご、ごめんなさい!寝坊しちゃって」


誠也さんはまた笑う。


「珍しいね。空ちゃんが『寝坊』なんて。

でもぐっすり眠れたみたいだから、よかったんじゃないのかな?」


「よくないです!

その・・・・、誠也さんを待たせてしまったし」


「相変わらず空ちゃんは、自分より誰かの事を優先するよね。

ある意味、飲食業に向いているかも」


「へ?」


飲食業に詳しくない私は首を傾げた。

まだお父さんの店を手伝った事がないし。


誠也さんは私の背中を押してくれる。


「さあ、今日はいっぱい遊ぶよ。

まずは水族館。

ここの水族館、結構有名な水族館だし」


そう言った誠也さんは、予め買ってくれたチケットを私に渡してくれた。

多分私を待っている間に、チケットを買ってくれたのだろう。


何だか申し訳ない・・・・・。


「あ、ありがとうございます・・・・」


「どういたしまして」


私は笑顔の誠也さんを、改めて確認する。

黒のジャンバーに、お洒落な赤チェックのワイシャツに、黒のスラックス。


背も高く、短髪で爽やかな印象の誠也さんは、見ていて『モデルさん』みたいだった。

なんだかすっごくカッコいい。


そんな誠也さんに『右手』を差し出された。

誠也さんの表情は、さっきと変わらない笑顔。


それが何を意味するか、『恋愛』に鈍感な私には全く分からなかったけど、やがて私は顔を真っ赤に染めて、『誠也さんの彼女さんに悪いです』と言って否定する。


でも誠也さんは聞いてくれない。


それどころか、逃げる私の手を捕まえて、私の左手をしっかり握ってくれた。

凄く大きな手のひらで、『私の手を離すか』と言うように、強く握ってくれた。


何だか『カレシカノジョ』みたい・・・・。

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