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明日も世界は回るから  作者: 白石ヒカリ
1章 絶望の中の光
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3.恐怖

八月の夏休みが終わりに近付いてきた頃だった。


私は出先から家に帰る途中に、ある光景を目撃した。

遠く離れた場所から見た光景なんだけど、それは今でも鮮明に覚えていて、『見ていて気持ちのいい光景』ではなかった・・・・。


人気のないトンネルの中で、二人の女の子が複数の男女に絡まれ、暴行を受けていた。

逃げ回る女の子二人を追い掛け、複数の男女は殴るや蹴るなどの最悪な行動。


『やめて』と言う二人の女の子の悲鳴がトンネルの中で響き渡るけど、そのトンネルはあまり人の通らない静かな場所。


通行人なんて私くらい。


そんな目の前の、漫画でしか見たことのない『非現実』的なあり得ない光景に、私の足は震えていた。

恐ろしい光景に、思わず目を逸らしてしまう。


同時に『助けないといけない』って自分の中で感じたけど・・・・。


結局私、目の前の光景が怖くなって、逃げてしまった。

二人の女の子がいる人気のないトンネルは、私の『帰り道』なのに。


私はトンネル内を通らずに遠回りして帰った。

その現場の女の子を助けようとせずに、『自分の安全』だけを考えてしまった。


暴行を受ける女の子は『助けて』って叫んだ気がするけど、私は誰も助けも呼んでいない。


だからさっきの光景は、『自分の見間違え』だと、勝手に記憶を書き換えた。


そして自分の脳内から、その光景を削除した。


まるで、『最初から二人の女の子の暴行なんてなかった』かのように・・・・。


だって、知らない人達だし。

そもそも暴行されていた女の子も、暴行を加えていた人達も、私からしたら『知らない人達』だったし。


でも遠くから見ただけだから、しっかりとその人達の顔を見たわけじゃないけど・・・・。


だけどその二人の女の子、『北條さんと小坂さんに似ているな』って少し思ったから、 完全には記憶は消えなかった。


ずっと脳内からその日見た光景が離れなかった。


まるで、神様に『逃げるな』と言われているような気がして。

『なんでその記憶が消えないのか、お前自身は考えた事があるのか?』って問われている気がして・・・・・。


残りの夏休みは二人から『遊びの連絡』は一切来なかったから、私は震えて残りの夏休みを自分の部屋で過ごしていた。


夏休みが明ければ、また北條さんと小坂さんと会えて、『楽しい日々』が始まると言うのに。


『また三人で笑える日が来る』って言うのに。


・・・・あの出来事を見てから、不思議と学校に行くことが『嫌』に感じた。

胸が苦しくなった。


『私、とんでもない大罪を犯してしまったのではないか?』って、ずっと思っていたし。


『あの時に暴行を受けていた二人は、北條さんと小坂さんだったらどうしよう』って、ずっと考えていた私だから、なおさら・・・・・。

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