2.初めての友達』
一人でいることが好き。
不思議と『誰かと一緒に居たいと』思ったことは、あまりない。
昔からそうだった。
私はクラスメイトの輪に入らず、いつもひとりぼっち。
休み時間や登下校も、小学生の時からいつも一人。
でも実は私、『高校二年生』になってからは違った。
生まれて初めて『友達』が出来た・・・・。
今から七ヶ月前の、新学年の新学期のこと。
いつも通り一人で過ごす私に、声を掛けてきた二人組がいた。
クラスの男子から人気のある、優しい女の子の二人組。
「ねぇ、なんでいつも一人なの?」
「ちょっとりんちゃんストレート過ぎだって!」
そう言う二人組は、『一人でいる私をからかっている』のだと思った。
だから私は自然と下を向いてしまう。
無視するように、何も答えなかった。
と言うより、なんて言葉を返したらいいのか、分からなかった。
必死に考えても、友達のいない私には『超難問級のクイズ』のように思えて、何も答えられない。
二人組に『無愛想なやつ』だと思われる私。
それでも二人は優しかった。
こんな私にも、ちゃんと目を合わして話してくれる。
「ごめんごめん。あたしは北條燐だよ。一年の時はクラス違ったよね?
だから美柳さんと一緒に話をしたいな、ってさ」
そう言う北條さんは、私を見て優しく笑った。
綺麗な黒髪が印象的な、女優さんみたいに綺麗な女の子。
そしてもう一人。
本来校則違反のはずの、綺麗な金髪が似合う、ショートヘアの可愛い女の子。
「あたしは小坂花音花音か、のんちゃんって呼んでね!
馴れ馴れしくて子供っぽくて、うざいって言われるけど、気にしない気にしない」
とても明るい小坂さんは、もうすでに私の事を『友達』と思ってくれているみたいで、後ろから抱き付いてきた。
ちょっと馴れ馴れしい小坂さん。
そんな二人の『本音』は分からない。
なんで私なんかに声を掛けるのか、全く理解が出来ない。
だからここは、『また無視しようか』と思った。
そうしたらまた『今まで通りの自分』に戻れるし。
『一人の時間』が好きなら、そうするべきなんだけど・・・・。
いつの間にか私は顔を上げていた。
理由は、知らない・・・・。
「み、美柳空・・・。よろしく」
緊張しながら、短く私は答えた。
声は震えている。
一方の二人は、揃って私に『笑顔』を見せてくれた。
「空だね!仲良くしよ」
北條さんに『下の名前』を呼ばれて、私は戸惑った。私も『下の名前』で呼んだ方がいいのだろうか。
後ろから私に抱きついてくる小坂さんも、嬉しいのか急に力が強まる。
「いえーい!そらちゃんと友達になれた!
ってか、そらちゃんの髪綺麗だよね!
シャンプー何使ってるの?」
「って、花音はなんで空の頭の匂いを嗅いでるのさ!
変態オヤジか!」
呆れた顔を浮かべて北條さんは、私の髪を嗅ぐ小坂さんを見ている。
でも、ちょっと北條さんも嬉しそう。
ってか私、髪綺麗じゃないのに。
一方の私は、二人のペースに巻き込まれて困惑するだけ。
小坂さんはずっと私に抱き付いているから、立つことも動くことも出来ない。
だけど、二人が私の事を受け入れてくれたから、私も嬉しかった。
生まれて初めて出来た『友達』を前に、私から『小さな笑顔』が溢れる。
北條燐さんと小坂花音さん・・・・。
そんな二人と、気が付けばいつも一緒にいる私。
休み時間になれば、二人はいつも私の元へやって来るし、一緒にお昼ご飯も食べたりする。
放課後になれば、近くのショッピングモールで遊んでいた。
外が暗くなるまで、ベンチに座ってずっと仲良く話していたっけ。
そして何もかも『初めての経験』に私も楽しくて、いつの間にか一緒に笑っていた。
気が付けば、二人に心を開くようになった私。
他にも一緒にテスト勉強をしたりして、私や小坂さんの家に集まったりした。
テストの点数のいい小坂さんにビックリしたけど、三人で楽しく勉強出来たから、一学期の中間テストはいい出来だった。
逆に『今度のテストが楽しみ』になってしまうほど、三人の勉強会は楽しかったけ。
こうして、いつも私と一緒に過ごしてくれる北條さんと小坂さん。
学校も楽しくて、一学期もあっという間だった。
高校に入って二回目の夏休みも、スッゴく楽しかった。
部活に所属していない私達は、ほぼ毎日ように遊んでいたし。
夏休みの宿題も一緒に終わらせたし。
だから本当に、『いつも三人の楽しい夏休みだった』と振り返る。
そして『二学期もこのまま続けばいいのに』と思ったのに・・・・・。
神様は、それを許してくれない。