表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/99

6.村の子どもたち

 突然の衝撃に、つい変な声を出してしまった。


 後ろを振り返ると、小さな子供が立っている。気の強そうな男の子だ。どうやら、わたしに体当たりをかましてきたようだ。


「なんだお前」


「それはこっちのセリフ。ちょっと、突然何するのよ」


「ここから追い出そうなんて考えても無駄だからな!」


「……??なんの話?」


「は?じゃあお前一体なんでここにいるの?」


「なんでも何も……ただ考え事をしてふらりと立ち寄っただけなんだけど」


「ほんと……か?」



 男の子としばらく無言で顔をあわせていたが、祠の陰から別の子供が出てきた。


「ねえ、この人、アレクス様が森から連れてきたっていう女の人じゃない?」


「確かに……見たことない顔だな」


 なんとなく場の雰囲気が変わると、周りに隠れていたのか、数人の子供たちが出てきた。


「おねーさん、どこから来たの?」


「北の森から現れたって本当?」


「う、うん」


「すげー!やっぱり父さんの言ってた通りだ」


「ダイアウルフからアレクスが助けてくれたって本当?」


「アレクスのお嫁さんになるの?」


 急に質問攻め来たっ。


 さっきのデジャヴを感じつつ、同じように答えられる範囲で話した。数分前まで警戒心丸出しだった男の子も、すっかり興味津々でいろいろ話しかけてくる。


 それにしても……アレクスはじめこの村の人々は、こんな見ず知らずの人間によくもこんなに警戒心なく接することができるな……だって絶対あやしいよね、わたし。

 土地柄なのかしら。 


 なんてことを思いつつ会話しているうちに、何となくみんなで遊ぶ流れになり、そのままずるずるとわたしも参加することになった。


「ロン、見っけ!」


「そこにいるのは……エミリーちゃん!!」


「くそっ、ユーナかくれんぼ強すぎ」


「はははっ、子供の遊びといえど、容赦なく勝たせてもらおう。」


 世界が違えど、子供の遊びは大まかなルールで言うとほとんどわたしの知っているものと変わりなかった。

 隠れている子供たちを、鋭い観察力で次々に仕留めていく。


「これはマジで鬼だ……」


「おい、ユーナ、大人げないぞ!」


 などと楽しく会話しながらも(?)全力で遊んでいると、気づかないうちに相当時間が経っていたようだ。


「そろそろ、終わりにしようか」


「うん、またね、ユーナ」


 ほんの数時間遊んだだけだったけど、みんなわたしのことをばっちり仲間として受け入れてくれたみたい。


 気心の知れた友達とするように、また遊ぶ約束をして、みんなその場から元気に走り去っていった。


 残されたのは、わたし……

 と一人の男の子。


 子どもたちの中では一番控えめなテオという子だ。

(どうしたんだろう?帰りたくないのかな?)


「ユーナから出てるこのキラキラ……何?」


 少しの間をおいて、テオが話しかけてきた。


「え?キラキラ……」


 確かに、言われてみるとわたしの動きまわったところには光の糸がこんがらがっていた。これ、わたしから出ているのか……?


 でも、さっきまで遊んでいるときには、他の子たちには特に何も言われなかった。


 朝、アレクスに聞いた時も見えていないようだったし……


「テオには、見えるの?」


「うん、でも普段はあまり言わないようにしてる。変だと思われるし」


 見えるのは変……なのか。というかこんなの出してる時点でわたし相当変か。


「じゃあ、あの森に続いているのは?」

 

 テオの指さした方を見る。


 村の中心から祠まで来ているのはさっきわたしが通った道だとして。


「たぶん、最初にわたしがいた森……アレクスに連れてきてもらったから光の糸がつながったんだと思う」


 わたしから出ている光、というならそう考えるしかない。


「森の中って危険?ダイアウルフは狂暴なのかな?」


 テオの話題が少しずれたような気がする。

 わたしは昨日の夜のことを思い出してぞっとした。


「うん、すごく怖かったよ。偶然アレクスに助けてもらわなかったら、死んでたかもしれないもの」


「そう……」


それ以上テオは深く訊いてくることもなかったし、特にそれ以上の話もなく、別れた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ