それぞれの居場所①
食事が終わったフォザリアとフォーラはサルジュが用意してくれた部屋でくつろいでいた。しばらく昔の話で盛り上がっていたがお腹がいっぱいになったのと安心したのか、フォーラが居眠りを始めた。フォザリアはそっと座っていたソファーに横たえさせ、側にあったブランケットをフォーラにかけた。
寝息をたてはじめたフォーラにフォザリアは囁いた。
「無事で本当によかった」
しばらく眺めていたフォザリアはそっと部屋をでて、ルカルナがいる部屋に向かった。実は食事が終わるともうひと仕事残っているとすぐに席を立ったルカルナだったが、席を立つ時フォザリアの耳元に落ち着いたらこの部屋に来てくれという紙をもらっていたのだ。その部屋は二人がいる部屋の三つ隣の部屋のようだった。扉をノックしたフォザリアに中からどうぞという声が聞こえてきた。
中に入るとリアムスと後数人の騎士たちが話をしていた。
「フォーラは寝たのか?」
「ええ、ベッドに寝たらって言おうと思ったんだけど、気持ちよさそうにしていたからそのままソファーで寝かせました。きっと疲れてたと思うから」
「そうだろうな、お前が意識がない間休むようにいったんだけどな、目が覚めるまで食事もとろうとしないし、ずっとみていたようだったからな。お前とよく似ているようだな」
「そうかな・・・」
「あのルカルナ様」
フォザリアがルカルナに気になることを聞こうとした時、扉が再びノックされた。リアムスが扉に向かい扉を開けるとそこにはサルジュの侍女が立っていた。
「あのこちらにフォザリア様はいらっしゃいますでしょうか?」
「はい、いらしております」
リアムスがそういうと、侍女を中に通した。サルジュの侍女は中に入るとフォザリアに向かって言った。
「明日、一緒にみていただきたい場所があるそうなので、お昼過ぎになりますがご準備を整えて置いていただけますでしょうか?」
「えっ、私すぐにトルマーバルトに帰れるんじゃなかったんですかルカルナ様?」
隣にいたルカルナに視線を向けながらたずねると、ルカルナは曇った顔をして首を振った。
「いや、僕も一緒に戻りたいのはやまやまなんだがそうもいかないようだ」
「どうしてですか?」
「いやその・・・」
なんともハギレの悪いあいまいな返事しかしないルカルナにフォザリアはリアムスに視線を向けたがリアムスも何も答えてはくれなかった。
「じゃあフォーラは?」
「ああ彼女は僕が責任をもってトルマーバルト行きの船に乗せるから安心しろ。どうせお前の事だから自分の店で働かないかとか誘っているんだろ?」
「お見通しなんですね。実はそうなんです」
「帰ったらビゴーラに預けるから安心しろ。お前はサルジュ王妃の用事が終わったら帰ってこい。心配するなお前にとって悪いことではないから」
ルカルナは詳細は言わなかった。だけど何かを隠していることはわかった。
「はあ・・・何だかわかりませんが、言う通りにするしかないようですね」
「そうだ」
「わかりました。ところで私たちの他に一緒に連れてこられた子達はどうなったんですか?」
「ああ、彼女達はトルマーバルトに戻っても親に同じように虐待されるかまた売られるだろうからこのままここで生活するようだ。サルジュ王妃の計らいで都で仕事を紹介してくださるそうだ」
「そう、仕事がえられるのなら大丈夫だね。全員はさすがに私も雇ってあげられないからどうしようかと思っていたのよ。よかった。明日きちんとお礼とお願いしとかなきゃ」
「あっ、それでだな・・・フォザリア」
「はい。何でしょうか?」
「そっ・・・そのだな」
ルカルナは何か言いたそうにしているのだがうまく言葉にできないのか口ごもってばかりいた。そんなルカルナにフォザリアは急に抱きついて言った。
「ルカルナ様、助けにきてくださってありがとうございました。すごくうれしかったですよ」
そう言ってルカルナの頬にキスをした。そしてリアムスに頭をさげておやすみをいうと部屋をでていってしまった。何か言いだそうとしているのかをなんとなく感じ取ってしまったからだ。
(ああ・・・なんだか照れ臭いな。私やっぱりルカルナ様のこと好きなんだな。でも私じゃ駄目だし・・・)
フォザリアは真赤になっている自分の頬に手をあててフォーラが眠る部屋に駆け戻った。
翌朝、フォザリアはフォーラを伴ってリアムスと共にトルマーバルトに戻ることになったルカルナを港に送る為に同じ馬車に乗っていた。
「なあ・・・フォザリア、本当にあたしなんかでいいのか?」
今朝、リアムスの家に居候をすることになったと告げたフォーラがリアムスが貴族だと知って驚いて何度もフォザリアに確認してくるのだった。フォザリアも驚いていたが笑顔でリアムスが言ったのだ。
「フォザリアさんには振られてしまってビゴーラも落ち込んでいたんだが、あなたを見ているとフォザリアさんと同じ空気を感じます。私の一存ですがもしよろしければ我が家でしばらくのんびり過ごされてはいかがですか?フォザリアさんが戻るまでビゴーラも店に行くつもりでしょうし、一緒に過ごしながら今後の事を考えたらいいですよ」
このリアムスの提案にはフォザリアは何度もリアムスに礼を言った。それなら安心だからだ。
「大丈夫だよ、ビゴーラさんてすごくいい人だよ。まるでお母さんみたいなんだ。全然貴族の奥方っぽくないし、料理も一流なんだよ」
「だけどさ・・・あたしみたいな孤児・・・」
「フォーラはフォーラじゃないか、リアムスさん、フォーラの事は私が保障します。けっして悪い子じゃないですから」
「それは目を見ればわかりますよ」
「あっあの・・・」
迷っているフォーラにフォザリアが背中をポンと叩いた。
「チャンスは逃がしちゃいけないんだよ。フォーラも幸せになるチャンスがきたんだよ。貴族の屋敷に入れるチャンスなんてそうそうないよ」
「そっそうだけど、あたしマナーとか全然知らないし」
「それなら大丈夫ですよ。口うるさい人間はいませんから」
笑顔でいうリアムスにいつしかフォーラの心も傾いてきてる様子だった。
(よかった。これで安心だ。さて・・・サルジュ様の用事ってなんだろう・・・)
そんなことを考えていると、思い出したかのようにフォーラがまたフォザリアに向かって囁いた。
「そういえば・・・船の底にいたあの男どうなったんだろうね」
「あの男?」
「ほら、船底で柱に縛られていただろ。あんたが逃がしてやったじゃないか」
「柱・・・あああ~!忘れてたあ~!止めて!馬車を止めて!」
突然立ち上がると動いている馬車の窓から顔を出してフォザリアが御者に向かって叫んだ。




