目覚めた後
「フォーラ!」
フォザリアは自分の声で目が覚めた。周りを見渡すと、どうやら部屋のようだった。ただものすごく豪華な、ぼーっとする頭でここはどこなのか考えていた。だが見覚えはなかった。
「フォザリア、どこか痛い所ない?」
その声に自分の寝ているベッドのすぐそばに心配そうな顔のフォーラが目に飛び込んできた。
「フォーラ!私どうしちゃったんだろ?ここはどこ?」
「すごいことが起きたんだよ!あたし初めてだよあんな豪華な馬車に乗ったの!」
フォーラが自分の目がまだ信じられないというかのように興奮しながら説明してくれた。フォーラが言うのにはフォザリアが気絶した直後、騎士たちが船になだれ込んできて、さらに大乱闘になったんだそうだ。そして訳が分からず馬車に乗せられここにいるのだそうだ。
「あたたた・・・なんか体中がいたいような・・・えーっと私どれぐらい意識なかったの?」
「そんなに時間は過ぎてないよ、まだ夕方だからね」
「夕方?だってついたの明け方だったよね。あちゃ~また意識飛んでたのか・・・でもおかしいなあ今回は神様でてこなかったけどな」
「何?神様って、フォザリア死んでたの?」
「えっ?あっちっ違うよ。あのね、なんていうか・・・」
フォザリア頭をかきながら言葉を探していた。その時、勢いよく扉が開いて見覚えのある顔が飛び込んできた。
「フォザリア!気が付いたのね。良かったわ!私あなたがこのまま意識が戻らなかったらどうしようかと思っていたのよ、捕まえた奴隷商人たちの首を全員はねてもたりなかったわ」
部屋に入ってきたのはサルジュだった。ということはここはサザンクラース国の王宮なのだろうとまだぼーっとする頭で考えながら聞き返した。
「あのサルジュ様が助けてくださったのですか?私たちどうしてここにいるのでしょうか?あの人達の首をもうはねてしまったんですか?」
「助けたのはわたくしじゃないわよ。命令はしたけどね。あなたをこの国に連れてきた奴隷商人たちは、いろいろ余罪を調べないといけないらしくて今拷問にかけて色々はかせているみたいよ。この国にお金に困った人達を集めて奴隷として売っているなんて大問題ですものね。必ず撲滅させるから安心して。それより、あなたにあわせたい人がいるのよ。あっ説明は後ね」
「私にですか?誰でしょうか?この国に知り合いはいないはずですが」
「ええそうね、後で連れてくるわ。はあ・・・でもよかったわ。港であなたが倒れている姿をみた時心臓が止まるかと思いましたよ。まっお説教も後にしてさしあがるわ。それよりお腹すいてるでしょ。おいしい料理作らせてあるからここで食べる?」
その時フォザリアのお腹がぐう~と音をたてた。フォザリアはお腹の辺りをさすりながら言った。
「あの・・・こんな服のままでいいのならきちんとした場所で頂かせていただきます」
「そっ、もちろん大丈夫よ、隣の部屋に用意させるわ。いろいろあなたに聞きたいことがあるから。もちろんそこのあなたも一緒にね」
そういうと二人に手を振っていそいそとサルジュは部屋を出て行ってしまった。
「なあフォザリア、あんたあたしと別れた後どんな生活をしたらあんなすごい雲の上の人物と親しくなれるんだよ。あの人この国の王妃様だっていうじゃないか、それに船の上でも」
「船の上?話せば長くなるからまた今度ね。それより、他の子達は大丈夫だったの?誰かあの火事で亡くなった人とかいなかった?」
「相変わらずだね。自分が一番死にそうになったっていうのにさ。大丈夫だよ、あたしらが助け出したあいつもすぐに意識を取り戻してでっかいたんこぶ作っただけだったみたいだし、すぐにこの国の騎士団が何故か突撃してきて大乱闘になったけど全員死亡者なしで捕まったみたいだからさ、船は燃えちまったみたいだけどね」
「そう・・・燃えちゃったの・・・」
二人が話をしていると、扉がノックされて侍女らしき女性が二人入ってきた。その手にはドレスと靴をそれぞれ持ってきていた。
「王妃様からお二方にはこちらのドレスを着るようにと指示がでております。お着換えを手伝いますので終わりましたら食事の席に案内いたします」
「えっでも・・・」
戸惑っているフォーラに対してフォザリアがフォーラに囁いた。
「王族の人のいうことは素直に聞いた方がいいわよ。頑固なんだもの。大丈夫よ、サルジュ様ってすごくお優しい人だから、このドレスの代金を請求したりしないわよ」
フォザリアはそういいながら既にドレスに袖を通し始めていた。フォーラは戸惑いながらも初めて着るドレスに四苦八苦しながらなんとか着替えを終えた。そして靴も履き替え、終わると二人が着ていた服を持って行こうとした。
「あっ待ってください」
フォザリアは自分の服のポケットに入れてあるものを全て取り出し首にぶら下げている巾着袋の中に押し込んだ。フォーラも同様に慌てて服のポケットに入れてあるものをとりだし、同じように首から巾着袋を取り出すと、その中に入れていた。
「フォーラも巾着袋使ってたんだ」
「ああ、ここが一番安全だからね。いつ何が起きるか分かんないしね」
そう言ってウインクしてみせた。二人は案内される後ろをついて行き、隣の部屋に入った。そこには中央に大きなテーブルが置かれていて椅子が四脚あり、テーブルには食事の用意が既にされていた。
「こちらで少しお待ちくださいませ」
頭をさげて女官が出て行ってしまった。
「あたしこんな所で食べた事ないよ。食べ方なんてわかんないよ。失敗したら殺されたりしないかな」
フォーラはオドオドしながら豪華なその食事と部屋を眺めていた。
「大丈夫よ、誰でも最初はあるものよ。気にしないで食べたらいいわよ。なるべく音をたてないようにね」
「わかった音をたてちゃいけないんだな。フォザリアは食べた事あるのか?」
「ええ少しだけどね」
「はあ・・・なんかすごい世界だね、これから私達どうなるんだろ?奴隷として売られたんだから、まさかトルマーバルトには帰れないよね。この国でも生きていけるかな」
「大丈夫よ、フォーラはこの国にいたい?」
「まさか、院長先生や子どもたちのことも気になるし、戻れるものなら戻りたいけど、あたし船賃ないし、歩いては戻れないだろ?」
「ねえフォーラ、もしトルマーバルトに戻れて、孤児院の借金や運営が心配無くなったら、フォーラも都に来ない?」
「都かあ・・・確かにあこがれるけどさっ、私なんか生活していけるかな」
「大丈夫だよ、私ねお店をしてるって言っていたでしょ。あんたみたいな愛想のいい店員探してたんだよね。あんたが私の店を手伝ってくれると助かるんだけどね」
「フォザリアの情けは受けないよ」
「情けじゃないよ、これは正式な仕事依頼をしてるんだよ。きちんと雇いたいってスカウトしてるんだよ。都の人は愛想がいいんだけどね、話し始めたら長くってね。私、いろいろしたいことがあるんだけど、店の客の相手を一日中してると作業が遅れてしまって困ってたんだよ。こう見えても繁盛してるんだよ私の店、あんた愛想がいいだろ、だから向いてるんじゃないかって思ってね。私の店は従業員用の下宿先もあるしね給料も払うよ。どう?」
フォザリアがフォーラの顔を見ながらいうとフォーラはニヤリとして言った。
「仕方ないねえ・・・あんたの仕事の手伝いをしてやってもいいよ。但し、給料はしっかりもらうからね。その代わりに、あんたが問題に首を突っ込まないように監視もしっかりしてやるよ。今回のことにしたってあんた、考えもなしに首を突っ込んで死にかけたんだからね、わかってる?」
フォーラが本気で怒っていることが感じられた。フォザリアは本気で心配してくれたり怒ってくれる存在がある自分は幸せ者なんだとしみじみ感じられ自然に笑みが浮かんできた。
「私後悔してないよ。だってフォーラは私の親友じゃないか、見て見ぬふりなんかしたら一生後悔して生きなきゃいけなくなるだろ。そんなのごめんだよ。だけど船を燃やしちゃったのは反省してる」
「よし、今回の事はこれで言いっこなしだ。だけど何事もやり過ぎはいけないんだよ。次はもっと慎重に行動することにしよう。もうあんな経験はこりごりだけどな」
「同感」
そう言いながら二人は笑いあった。その後フォーラが急に真剣な顔になって頭をさげた。
「フォザリア、ありがとう」
「なっ何よ突然」
「あたし頭悪いけどこれだけはわかるよ。あんたがあたしを見つけてくれたから今ここにこうして笑っていられてるんだってね」
フォザリアはフォーラをギュッと抱きしめた。
「本当に良かった。困っている時は助けるのが当たり前だろ、だってフォーラは私の親友なんだから」
「うん、親友だ、何があっても。フォザリアが困たことがあったらあたしが助けるからなんでも言っておくれよ」
「わかった」
フォザリアの瞳から涙がこぼれた。そしてフォーラもフォザリアをギュッと抱きしめた。




