大切な居場所
まばゆい光で意識を失ってからようやく目を覚ますと、そこは自分の部屋のベッドの上だった。
「あれ?私どうして自分のベッドで寝ていたんだろ?」
フォザリアは首を傾けながら起き上がろうとした時、扉が開いてビゴーラが入ってきた。
「ようやく気が付いたのかい、気分はどうだい?」
「あっあの・・・私どうしてここで寝ていたのでしょうか?確か王宮の謁見の間で倒れたはずじゃ」
「ああ、最初の一日は王宮の一室で寝かせていたんだけどね、二日、三日過ぎても全く意識が戻らないから、ルカルナ様は反対したんだけどねフォザリアをここに戻すようにあたしが頼んだんだよ。あんたが一番居心地のいい自分の家の方がいいんじゃないかって思ってね。それにね、今あたし、仕事を辞めて暇してるからさ、あんたの看病を引き受けたんだよ。店なら大丈夫だよ。みんなで開けて営業してるからさ、客と話しをするのってやっぱり楽しいね。あたしも貴族の奥さんなんか辞めて店でも開こうかって心が揺れ動きそうだよ」
「ビゴーラさん、迷惑をかけてしまってすみません。あの・・・もう大丈夫ですから、ありがとうございました」
フォザリアは頭をさげながらいうと、ビゴーラは頭をかきながら照れたように言い返した。
「娘の看病をするのは母親としては当たり前だろ」
「ビゴーラさん・・・私」
「今は何も考えなくていいよ、意識が戻ったばかりで体がまだ本調子が出ないだろうから、ゆっくりしていた方がいいよ。今、何かスープでも持ってきてあげるよ」
「あっあのビゴーラさん、殿下は何か言っていましたか?」
部屋を出て行こうとしているところだったビゴーラは振り返りざまに言った。
「ああ、気が付いたら知せろって言ってかな、それと、諦めたりしてやらないから覚悟しろだそうだよ」
「私・・・」
フォザリアはなんて答えていいのか言葉がでてこなかった。
「サルデーニャ様もとりあえずルカルナ様の方は放置でいいってさ、お忍びでもここに来ない様見張っていてくれるらしいから安心していいよ。あんたは何も気にする必要はないからね」
そういうとすぐに部屋を出ていてしまった。フォザリアは再びベッドに横になりながら、意識が飛ぶ直前の事を思い出していた。
(確かルカルナ様にプロポーズされて返事もしてないよね。はあ・・・私の生まれがせめてきちんとした親の元に生まれているのがわかったらなあ・・・)それがフォザリアの本音だった。
フォザリアはビゴーラのおいしいスープを食べた後、再び眠りについてしまった。完全に意識がはっきりしたのは翌朝の早朝だった。部屋を見渡すと、ソファーで眠るビゴーラの姿が目についた。
(ビゴーラさん、ずっとついてくれていたんだ・・・私今はこの世界でひとりっきりじゃないんだ・・・こんなにも私の事を心配してくれる人がいたんだ・・・頑張らなきゃ、もう一度頑張るって決めたんだから、神様にもう一度会った時にすごく幸せだったよって胸を張って言えるように、よ~しやるかあ!)
フォザリアは大きく伸びをしてそっとベッドをおりて服を着替えると、そっと一階へおりて行った。
新しい一日の始まりだった。フォザリアが復帰したその日は従業員の子達も喜んでくれ、フォザリアが意識を取り戻して店に出ていると聞きつけた常連さんが次々と押しかけてきて、元気になったことを喜んでくれた。
「店長、よかったです。このまま目覚めなかったらどうしようかと思ってました」
キュナがいうと他の子達も一斉にフォザリアの元にかけよると涙を流しながら喜び合ってくれた。
「ありがとうみんな、ごめんなさいね、今日からまたバリバリ働くからみんなもよろしくね」
フォザリアも同様に涙を流した。その日一日、ひっきりなしに訪れる客の対応に追われながら、孤児で育った自分をこんなにも心配してくれる人達はお金には代えられない宝物だということをしみじみ感じるフォザリアだった。
その日一日ビゴーラもケーキ作りを再開させ、フォザリアの全快祝としてビゴーラが全て材料費を負担してくれ、常連客に無料で振る舞った。店を閉店した後、改めてパーティーを従業員と共に開いた。そのテーブルにも豪快な料理が並べられ、フォザリアが手に入れた家族団らんを夜遅くまで楽しんだ。
その夜ビゴーラは自分の屋敷へと戻って行った。
その翌朝には店内の窓や扉が全て新しく取り換え作業が開始された。盗賊団が簡単にはいられないような防犯対策が施されることになったのだ。作業に取り掛かってくれた大工さんたちがいうには全てルーカスから前金としてもらっているとの事だったと聞かされた。
フォザリアは全ての工事が完了したその夜、ルカルナ宛に手紙を書いた。簡単なお礼状だったが最後に一言付け加えた。
〝ルカルナ様の今日も明日も、たくさんの幸せがおとずれますように
あなたの友フォザリアより”




