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王子様はゴミ屋敷の引きこもり住人  作者: 加阪あおか
第三章:大切なもの
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忙しい一日

やがて月日があっという間に流れフォザリアも一つ歳をとり17歳になっていた。最近ではお茶会で引き受けた注文も順調にこなして、新たに追加注文も受けつつ、店にも商品が並べられるまでになってきていた。それに加え、雑貨店の半分を喫茶店に改装して、ご近所さんの憩いの場となっているフォザリア雑貨店を改め、喫茶フォザリアの看板もあげていた。


奥の作業場では招き猫の陶芸作品作りをバルとジャルがしており、ルカルナやビゴーラが生活していた二階の一室は招き猫の衣装やパッチワークや小物類を制作する作業場になっていた。


また、パッチワークなど従業員でなくてもできあがって完成度の高い作品は買い取って販売するようになったので、他の仕事をしながら内職として作品を売りに来る人も増えていた。フォザリアは布を最初に提供して仕上がりに応じてお給金を支払うので、元手がかからず、いつまでという納期は指定していないのでかなり多くの人達が作り手としてフォザリア雑貨店に登録していた。そのおかげで、店には一定数の品が常に並んでいた。だが、布を提供するにあたって、仕上がりがいい加減な作品は返品するという徹底ぶりなので、最初はかなり苦情が来たが、その分、完成と引き換えに支払いはきちんとするので今では、丁寧な仕事をする人間だけが絞られてはいたがそこそこ登録して、仕事を担ってくれていた。


フォザリアはまた仕事をしてくれる彼女達にポイントカードなるものを配布しており、一つの作品が完成し、納品するたびに一つポイントカードにフォザリア特製の手彫りスタンプを押し、10個貯まると一回フォザリア喫茶で、おいしいケーキと紅茶が無料で利用できるというサービスもしていたため、こぞって納めてくれるようになっていた。


なぜなら、ケーキはここいらでも大人気だったからだ。しかし決して安くはなく、簡単な軽食と紅茶の販売とは違いケーキは限定販売で中々食べられないからだ。このケーキは毎朝、ケーキ1ホール分だけビゴーラが届けてくれるのだ。


最初は従業員のみんなと食べていたのだが、フォザリアが簡単なサンドイッチや紅茶をだす喫茶店のようなスペースを作ると言い出した時、従業員の子達がみずから、自分たちの分はいいからこのおいしいケーキをお客さんにも食べさせてあげたいといいだしてくれて、ビゴーラがケーキを届けてくれた日限定の日替わりケーキセットが大人気になり、少し割高にも関わらずその日のお昼までには完売する人気商品だった。


早朝いつもの日課で店の前をほうきではいたり、入り口の扉や窓などをきれいに拭き掃除をしていると、ビゴーラが王宮に出勤する前に歩いてフォザリアの店に近づいてきた。右手には大きなバスケットを持っていた。


「おはようフォザリア、今日もいい天気だねえ。昨日栗が手に入ったから栗を使ったケーキにしたよ。ついでに栗のパウンドケーキも作ってきたからこっちはみんなで食べな」


そう言ってバスケットごとフォザリアに手渡した。いつも、朝ケーキを持ってフォザリアの店に顔を出し、仕事終わりに、フォザリアの店に立ち寄り、フォザリアが入れたブレンドの紅茶を飲みながら少し雑談して朝の空のバスケットを受け取り自分の家に帰るのがビゴーラの日課になっていた。


彼女が王宮での勤務に戻ってからは何故か王宮では泊まり込まず、都のどこかにある自分の家から通っているらしかった。フォザリアはどこに住んでいるのかはあえて聞いたりはしなかった。いつもの日常を壊したくなかったからだ。


「わあ~おいしそう。いつもありがとうございます。ケーキもいつも大人気なんですよ。でも本当に材料費だけでも支払わせてください」


「何度もいってるだろ、あたしゃ趣味とストレス発散に作っているだけだから、気を使わないでってね。お金には困ってないからさ」


「でも・・・」


「何かして欲しいことができたらフォザリアにいうからさ」

「はい、私にできることがあったら遠慮なく言ってくだいね。全力で協力しますから」


フォザリアがそういうと、ビゴーラは笑顔で頷くと王宮の方角に歩き出した。


フォザリアはもらったケーキとパウンドケーキを台所に置き、再びやりかけの掃除を再開させた。ひとしきり掃除が終わり、花壇の花に水をあげていると、慌てた様子でテティが走ってきた。


「テティどうしたの?まだ早いわよ。もう朝食を食べたの?」


最近、従業員の子達が借りている家でテティがみんなの朝食を作るようになっていたため、従業員の子達は朝食を食べてから出勤するようになっていたのだ。


「はあはあ、店長たっ大変なんです!」

「どうしたの?そんなに慌てて」


息を切らせながら、フォザリアの所に走ってきたテティが荒い息遣いの中答えた。


「あの、朝起きて水を汲みに井戸に行ったら大家さんが玄関の所で倒れていたんです。私びっくりして駆け寄ったら昨日の夜盗賊団が押し入ってきて大家さんが集めた家賃を根こそぎ奪われたんだって」


「なんですって、そういえばロロナさんってかなりの数の下宿屋を経営していたんだったわね。その家賃の集金日を狙うなんてなんて卑怯な。それで怪我は大丈夫なの?」


「ずっと縛られていたみたいでようやく縄を外して外に出たんだって、私どうしたらいいのか・・・ジャルが役所に言いに行ったんだけど、大家さん脅された時に腕とか足とかナイフで切られていたみたいで寮にあった店長が置いてくれてある包帯や消毒液で応急手当はしたんだけど、お医者さんを呼ぼうにも、大家さん家中のお金を全部取られてるから呼べないっていうの」


「大変、ちょっと待ってて」


フォザリアは突然店の中に戻ると、小さな巾着袋を持って戻ってきた。


「じゃあテティ、この銀貨を持ってラベッシ先生に治療に来てくれるように頼んでちょうだい。私は大家さんの所に行ってるから」

「はい」


テティはその袋を受け取ると、手に握りしめながら、また走りだした。フォザリアは急いで店の戸締りを済ませると鍵をかけ閉店の看板を付け替え、寮へと走りだした。フォザリアが寮につくと、全員が既に起きていて、役人が数人きて大家さんに事情を聞いている様子だった。


「ロロナさん大変でしたね。今ラベッシ先生を呼びに行ってますから」

「大丈夫だよ、こんな傷、お金が全部奪われちまったから治療代払えないからさ」


「何を言ってるんですか、困った時はお互い様ですよ。治療代は私が払いますから。もしナイフとかに毒が塗られていたら大変じゃないですか」


「そうなんだけど・・・すまないね・・・」


「いつも店の子達がお世話になっているんですから気にしないでください。部屋の検証がすんだらみんなで片付けを手伝いますから、それまで誰かの寮の部屋にでも横になっててください」


椅子に座って痛々しそうにあちこち、包帯を巻いてあるロロナに向かって言った。


「そうさせてもらおうかね。何だか怖くてね」


フォザリアは駆かけつけた役人の人に昨夜の事を話し終えたロロナの肩を支えながら、キュナとシュラとテティの三人の部屋に彼女達の了承を得て、そこで横になるように勧めた。


少し遅れてテティと共に駆けつけた医師のラベッシ先生は数カ所の傷を消毒し、傷口が大きい箇所は縫い傷薬を付けきつめに包帯を巻いた。そして安静にするように告げた。ロロナはラベッシ先生の治療の後、ホッとしたのか、キュナの布団に横たわるとすぐに寝息を立て始めた。昨夜は一睡もしていなかったようだった。


フォザリアは荒らされてぐちゃぐちゃになったロロナの家を掃除し始めた。その日店を開店できたのは昼をかなり過ぎてからだった。この日フォザリアはロロナが心配だからと、キュナを一日仕事を休ませ側についてあげるように命じた。




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