お茶会の後で①
大盛況のビンゴゲームも終わり、お茶会が終了すると、フォザリアの持ってきた鞄の中には大量の注文書と今回の仮面舞踏会参加条件の追加の金貨が入っていた。
(はあ・・・商売って難しいわね。あんなに何日も頑張った掃除婦の報酬が100ルーテン金貨分なのに、今回は商品搬入と舞踏会参加だけでその倍以上も稼げるなんて、王族って金銭感覚が変なのかしら?でもいいわ、店の運営資金は多い方が安心だもの。これも商売商売!)
心の中でもらいすぎかなという罪悪感を振り払い、自分を納得させるフォザリアだった。
(帰り遅くなるのかな・・・夜に一人きりの店に戻るのはちょっと寂しい気がするけどな・・・)
などと帰りの心配をしつつ、ほっとしている自分がいた。実はこのお金は内心ではとてもありがたかったのだ。今回注文があった商品の材料費に結構かかっていた。それに加えてお針子さんたちに支払った制作の作業代金なども含めると、かなりの出費で、今後食費や商品を制作し販売するまでの期間の食費や材料費、給料支払いなどを考えるととても足らないことは目に見えて明らかだった。だけど、このお金があれば新たにもらった注文の品を作ることもできるし、それと並行して店でも売る商品を作ることができる、定期的に商品が売れれば何とかなる見通しが立つと思ったからだ。
外では使用人たちが片づけを始めたため、フォザリアは今度はロンダとサルデーニャ王女と共にルカルナの館に来て、休憩している最中だった。
「ルカルナ様、どうなさったんでしょうか?お茶会では何も召し上がっていないようだったので何か食べた方がいいのではありませんか?」
「先ほど軽食をお運びしておきましたので大丈夫ですよ」
心配そうにフォザリアがつぶやくと、三人に紅茶をだしているピオレが言った。それを聞いてフォザリアは胸をなでおろした。
「そうですか、それなら安心ですね。でも今夜の舞踏会は参加できるのかしら?どこか体調が悪いのでしたら医師を呼んだ方がいいのではないでしょうか?」
心配そうに天井を見上げながらいうフォザリアに対してサルデーニャは紅茶を飲みながら平然とした顔で言った。
「あら大丈夫よ、実はね、さっきの茶会にはあの子の苦手な隣国の王女も参加してて、早い段階でビンゴしてあの子に話かけていたようだったから、気分が悪くなったんじゃないかしら、我慢していたけど、我慢できなくなったんじゃないかしら」
サルデーニャがそういうと何か反論したそうなロンダをキッと一睨みしたサルデーニャはすぐに笑顔でフォザリアに言った。
「でも大丈夫よ、今夜は仮面舞踏会だし、舞踏会には参加するって言ってたでしょ」
「そうですね。ですがお茶会ではほとんどの人がルカルナ様を避けていらしたようにみえましたけど。私の気のせいでしょうか?」
「そうね、その他大勢はね・・・でもほら、ビンゴの商品も少し予定人数と違っていたでしょ。商品自体はあまるようにお願いしていたからなんとかなったけれど、彼女ったら今夜の舞踏会にしか招待していなかったのに早く到着したものだから呼んでもいない取り巻き連中も引き連れて来てお茶会も強引に参加したいと言ってきたのよ。まったく、わがままもいい加減にしてもらいたいわ。私嫌いなのよね」
サルデーニャは不機嫌そうに言うのを聞いてフォザリアは不安な気持ちが膨れ上がってきた。
「あの・・・その方たちなのでしょうか?ルカルナ様の頬のあざを貶したり言いたい放題陰口を話されていた方たちっていうのは」
「おそらくそうでしょうね」
「どうしてそんなことを?」
「さあ、女ごころは複雑だから、わかりたくもないわ。それに昔のことよ。だけど本当にどうしたのかしらね・・・途中で仕事を放りだすみたいなことするなんて」
サルデーニャ王女はチラッとフォザリアを見ながら呟いた。
「そうですね・・・いろいろ大変ですね王族や貴族の皆様は、ですが、ルカルナ様の病状が悪化しなければいいのですが・・・また引きこもられたりしないでしょうか・・・」
「そうね・・・あの子ってあの顔立ちでしょ、すごい人気なのよ。まっ引きこもっていた本人がどれだけ認識していたのかはわからないけど、あの子昔から少々女性恐怖症気味な所あったから、わたくしがからかいすぎたのがいけなかったのかしら・・・」
フォザリアはなんて返事を返したらいいのか迷いながら軽く笑いをいれて答えた。
「ははっ・・・ですがわかる気がします。いつも顔のあざを気にしてらっしゃいますけど、なんていうか普通にすごく素敵ですけれど、からかいたくなる時ありますから」
「そうなのよね。やっぱりあなたとは話があうわ。あの子なまじ顔が整いすぎてるから逆に女性にもてすぎて、いろいろ囁かれるのよね。お父様も婚約者候補の王女たちを何人か招待しているみたいなんだけど、本人がその気が全くないし、下手に婚約者を強引に決めちゃってまた引きこもられても困るしねぇ、頭を抱えているみたいよ。でもいい加減公務に復帰させたいみたいだしね」
「そうですよね。ですが王族の方って普通でしたら十代で婚約者は決まっていてもおかしくないですよね」
フォザリアは心の中で言いきかせた。
(私がルカルナ様と婚約できる確率なんて最初からゼロだもんな。孤児に生まれてきた段階で・・・冷静に考えればわかってたのにな・・・私どうしてこの世界選んじゃったんだろ。前世の記憶が消えても普通の家庭に新しく生まれ変わっていた方がよかったかな・・・いいえ、そんなことない、人生のやり直しができてるんだ。王子様と結婚だけが人生じゃない。それに、一人でだって今までなんとかなってきたし、この先だって何とかなる。この不便な世界も嫌いじゃないし)
フォザリアは天井を見上げながら心の中で呟いた。そして大きなため息を一つつくと自分にいい聞かせるように心の中で叫んだ。
(よし!悩んでたって何も解決しないわよね。自分が選んだ人生じゃない。私はフォザリア。何とかしてみせようじゃない。なんとかならなきゃ、別の道を探すまでだ!よ~しとりあえずルカルナ様が舞踏会の参加までキャンセルしないように様子をみてこうかな、本当に体調が悪くなってるんだったら大変だし)
そう心の中で決意するとフォザリアは立ち上がった。
「私、やっぱり様子を見てきます」
そう言ってフォザリアは三階の自分の部屋にこもってしまったルカルナの様子をのぞきに一人であがってきていた。
「そうね、ビシッと言ってきてちょうだい。今夜は大切な夜なんだから」
サルデーニャは止める様子も見せないでフォザリアを笑顔であおった。




