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ある追憶の戦術使い  作者: 神崎蒼葉
最終章
96/109

尊厳

 俺は樹木や酸素といった自然を含め、それらエネルギーを体に取り込み、一体となる中に初め、人の精気を奪う鬼女であったが、のちに女神となった。

 藍婆らんば毘藍婆びらんば曲歯こくし華歯けし黒歯こくし多髪たほつ無厭足むえんぞく持瓔珞じようらく皐諦こうたい奪一切衆生精気だついっさいしゅじょうしょうけの称。

 これを十羅刹女じゅうらせつにょと言う。

 俺は自らの尊厳に、そう諭されたのは三兆年前。

 溢れ出すエネルギーが天へ、紋様が浮かび上がる。

 青と金色の残留が交わる凛界で、重音や水の音が響く長い戦いに時を短縮する尊厳が発動し、そのエネルギーと共に感じる。


 どんな困難でも理想のためなら命すら厭わない信念。


 巨大な力にも周りを取り込み数で対抗する策士。


 妖美の様に人々を惹きつける魅力。


 逆境にも屈さない世界すら改変しそうな威勢。


 それら反逆の烙印を押された亡霊達がこの身にもたらす。

 総じて共通している信念は、他人に支配される事を嫌う。不遇の産物にして、導く。

 

 手を出してはいけない。


 地を壊してはいけない。


 君達の敵はこの秩序から生まれたのだと。


 俺が全ての能力を有していると言われる様になったのは、亡霊達の依代となり、独創的であるが故に認められる事の無い方角を指す。

 その様に歴代の秩序が生んだ不遇の尊厳達を発現する俺は、革命の尊厳。

 それは植物や生き物を含めこの身に作用する絶大な自然的エネルギーを司っていった。


「素晴らしい」


 俺が最後に聞いたのはこの言葉だった。

 そして感嘆に満たされるかの一言で終戦へ向かったのは、二ヶ月前。

 日が差す宮殿に王位側近達と、権限所持者達を招いていた。


「領域文明に提示する同盟の記念撮影をしよう」


 そう提案したのはラー。またソファーにでーんと座っているユダの隣で機材の整備を済ますメラク。

 俺は執務の机で「えー。めんど…」と応えた。

 前に撮った写真あるしそれでいいと、言っていればラーが机に手を付く。


「何を言うか! 古過ぎて交友関係が示せんわ!」


「あの写真はイメージが悪い、ますます王の品が下がってしまうわ」


「じゃ目にゴミが入ってましたって書いといてよ」


 メラクにそう応えると「んな記念写真あるかよ」と爆笑のユダ。


「んな写真あるの? 見せてよ!」


 柑奈かんながユダに食い付き、ワルプルギスがお茶を用意する。


「…御客人、粗茶だ」


 机に置いていく。慣れないながらに付き人として取り組んでくれる光景が、穏やかに茶をひっくり返すワルプルギス。


「んなッ!」


 すかさずフォローに入るエルヴィ。

 とても落ち着ける環境ではないが、平穏な日常に戻りつつある。

 あれから多忙が続き、みなが退院したのは一ヶ月前。

 俺の尊厳によるものだが、蘇った民達の存在があったからこそ、治療が短期間で完治したと思う。

 最も回復が早かったのはミグサとヒビキ先生で、ミグサは魔術師を目指し、ヒビキ先生は魔術学校の役目があり。

 駆け付けてくれた感謝やここまで導いてくれた二人にお別れと、アレイオンとして二人の存在を認めた。

 まるで今更の様に聞こえてしまうが、神が認めるというのは、いつだって堅苦しい名目が必要で。

 救世主の功績や、指導者の理念を俺なりに賞賛した。

 助けてくれた上に上から目線なのが個人的にアレだが、一応義務であり、つまるところ有益な生命と認める俺が二人にもたらせるのは、転移の力。


「先生はともかく、俺の様な人間が扱ってシオンの評判とか落ちないのか」


「ルールを破らなければな! 詳しくは先生に聞いてくれ」


 そう見送る別れ際。


「…親友」


「おう?」


「いつか学問教わりに来ていいか…?」


「いいけどあんま得意じゃないよ?」


「いや…黒魔術を…」


 何処かそわそわしてる様子だった。

 思えば黒魔術とはオーディンの起源。

 また七次元の方角で、ワルプルギスという打ってつけの契約は無くなっている。

 にも関わらずその回復力や生命力となっているものは、俺からは言えない。


「…いいよ。でもミグサにはもっと向いてるものがありそうだな〜」


「向いてるもの?」


「俺と同じ方角だったりしてね」


「最強じゃん」


「ふふん、最強だよ」


「ああ」


「あとアルタイルには俺から出向くよ。色々暴れてしまったし、正直責任感じてる…」


「分かった。楽しみにしてる。またな!」


「また、先生も!」


「ああ」


 二人はアルタイルへ帰還した。

 次に見送るのはハイロン率いる家族達、そしてシエラだった。

 ハイロンは何だかんだ会頭の居心地がいいらしく、青年と翔、ヴァレンとユキ君の肩を組んで。


「ま…俺が居るから抗争は安心してくれ! なんなら黒魔術界の王になってるかもよ?」


 張り切っていた。俺としてはレリアスに迎えたい所だが、みんな納得してるし、黙っておこう。

 俺は困った事があれば相談に来なさい、そう言って送り届けた。

 またフォールオルドとハイライトは既に帰還し、今頃は地獄で競ってると思う。それが本望だと言い残して。


「なんか…シオンと私遠くない?」


 振り返ってる間に記念撮影が終わる。

 それと明日の会談へ向けての会議が済んだのは昼過ぎ。

 解散しエルヴィと宮殿の廊下を歩いていた。


「まさか会談を控えた前日にわくわくするとは思いませんでした」


 どうやら会談の場で付き添い人となる事をわくわくしてるみたいで。


「ほぼ全ての領域文明が出席するらしいよ」


「え…」


「それで各領域文明の横の繋がりを合わせると、いつものうん百倍になる」


「…。」


 明日の会談は俺がレリアスの国王と開示する重要な顔合わせで、事前に伝えた方が良いとはいえ、大変な人付き合いで申し訳ない。


「各文明の顔と名前を復習しておいて欲しい」


「かしこまりました」


「…あと」


「はい」


「ありがとう」


 そう言って見送る。

 その後は付き添い人との打ち合わせ、レリアスの不在中の情勢に目を通し、シイナやワルプルギスと改正を計っている内に夜となり。

 少し、宮殿の屋上から街を眺め、青い光を残した。

 視界が変わるここは精霊位の中心地。目の前には権限申し込みができる立派な建物の窓口で申告。

 レリアスの国王と承認され、通される部屋は羽ペンが浮遊し、書類や印鑑が押されている。

 俺は「あらあら、大きくなりましたね」と自分でも似てると思う人に完成した異界の書を提出した。


「お願いします」


「あれリオンちゃんは…居ないの?」


「居ません」


「残念です…」


「では」


「待って」


 異界の書を見開きながら引き止められ、思わず記入漏れを気に掛けていると。


「緑茶を淹れています」


「満腹です」


「嘘はやめなさい?」


「嘘も方便です」


「ええ、しかし緑茶が入る余白があるでしょう?」


「ねえです」


「異界の書は返却させて頂きます」


「…飲みましょう」


「よろしい」


 ご満悦な母。また緑茶や「髪色」と謎の言葉が置かれる。


「…」


「それと目です」


「…へ?」


「読心術です。私とよく似ていると表情に出ていましたが、髪色と目は御父様譲りですよ」


 俺は何となく髪の毛を引っ張って見ると、深い青から親父を思い出す。


「ゼウス様は、あなたに前を向いて人生を桜花する大切さを教えたかったのでしょうね」


「…」


「あなたは心優しい反面で、固定観念に囚われ易い体質です。時には過去を置き去りにする前進も、人生で必要ですよ」


「精進します」


「…ところで」


「はい」


「メイミアちゃんとレナちゃんがディアの奉公に出ているそうですね」


「ええ」


 母に二人が修行に行ってる事や、明日の会談、兄や妹が出席する、そういった会話を重ねる内に夜が明けていた。

 外に出ると小鳥のさえずりや「「ただいま!」」と聴こえる。


「おかえり」


 そんなメイミアとレナに迎えられふと。


「なんでここが分かるの?」


「「秘密」」


 そう…。俺は伸びをし切り替えていった。

 異界の書も完成したし。

 次は何しようか。なんて考えながら二人を宮殿へ送る。

 会談までの時間、俺は執務室で紙に書いてみる事にした。


 …


 …


 追憶戦術。

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