活発な容姿
「あの…」
静寂の地獄に聞こえて来る。
レナの姿。
俺は「おいで」と呼んでレナの状態を診る。
しわが寄っている眉間に、掌をゆっくり突き出し、青い光に包みながら目と左腕と味覚、片方の肺を蘇生した。
生命力の安定を確認してると、純白の翼を追い掛ける仕草で「…ナニ…者…なの?」とレナ。
「ふふん」
「ふふん?」
笑っていたら見知った人達が歩いて来る。
それはワルプルギスを先頭に「シオン‼︎‼︎」と獣じみた掛け声のハイライトに続いてフォールオルドが口を開けた。
「死に際に送られた事を感謝していました」
「仰々しいよ? いつも通りでいなさい」
「ええ」
「…」
「所でシオン様、俺の贈りものはどうよ?」
「お前はダメだ…」
「どうして!」
「いいか、ミグサは俺の大切な人だ。妹が居なければどうなっていた?」
「ようこそ地獄へ!」
俺はワルプルギスの額を指で弾き、吹っ飛ばした。
第一階級の地を覆う亡骸が飛散する。
「…永遠に寄り憑くんなら、付き人になってみるか?」
「「え⁉︎」」
シイナとワルプルギス、その共鳴に「ワルプルギスは覇者と呼ばれる腐敗の方角よ…正気?」とレナ。
「ああ」
それはアポフィスの方角であり、死を原動力へ変える実行の象徴と感じる。
「なる!」
拳を上げるワルプルギス。
また第一階級でありながら心意気を育む豊かさは、不屈の強靭さからくるもの。
片やハイライトとフォールオルドの顔が歪んでいた。
「「マジ…」」
心配ばかりの視線に駆られていたら、ガーっと鳴り出す。
大地から赤い光と共に出現する地下の入り口だった。
「みんなおいで」
俺はそう言ってシイナと真っ暗の階段を下りていく。
「危険よ…」
「ああ」
「十人が制する第一階級よ。誰かの罠かもしれないわ」
レナの言う通り第一階級は十人が制する魔境、しかし気配がないしこの下に招集されているんだと思う。
「ユダが呼んでる」
「「「「王が⁉︎」」」」
みんなが俺を追う。
夜気が連なる階段の奥には、第一階級より広い空間がある。
着いた途端、無数の黒い氷柱に襲われた。
ベールで相殺しながら「柑奈か?」と聞くと赤髪の少女が顕現する。
「アタリー」
「おいアレイオンとシイナやん‼︎ あ? メイミアんと…この、んだっけ? 熾天使の」
瞬足で現れるお姉さん的外見、梓梛が柑奈にそう尋ねていた。
「莉緒の契約者でしょ?」
「あー! レナか!」
肺活量のある梓梛は超音波を司る。
また超音波は声に比例する持続型で、
「つうかユダ。おいユダ! ユダァアアァアアァアア‼︎」
酒類の乗る机が粉塵と化し、横の玉座にでーんと寄り掛かっているユダに被災した。
「うるせえよハゲ」
「ハゲてねえから!」
うん、禿げてはない。
俺はユダに向かう。
「ありがとう」
「…あぁ。数億年戦い通した感覚だ。報告は」
アポフィスを倒した、そう続いた。
何でここまで手こずったかは、ゼウスがアポフィスの尊厳を後押ししていたため、ラーは体力切れで眠ってる。
メラクはラーの治療に専念している。
終戦は最近だった。
「どうだい相棒?」
「凄え」
「俺ァ凄えだろ?」
「ああ」
「にっしっし!」
「…」
「絶望したか?」
読まれた。
あの日生命の指導者を違反していた事に。
またロイス、リウスの判決により、ゼウスが手を出せない猶予期間がこの時まで。
「今日まで長寿の実を還元していたんだ。レリアスの創生者として生き様貫いてんだよ」
「ああ…」
「…まあ俺様はよう。相棒と会って地獄の王よ、なァ?」
ユダの呼び声に顕現する五人。
頼職柑奈・裏黒魔術の始祖。
射水梓梛・光速発声術及び特異体質。
北条埜央・神経腐蝕の死神。
万代琥彩・生贄崇拝。
姥山茉桜・化学式自在の能力者。
第一階級の制する羽織を着ている。
「他のもんはレリアスにいる。あとオーディン所のルクレーネの傘下が駆け付けてる」
「俺の知らぬ間に…すまない…」
ユダは「まあ侵略つうのは一度も経験してねえが、地獄乗っ取りに来る奇人もいねえか。こちとら大歓迎だけれどよ、大犯罪側のテメーらがいちゃこの先も経験しねえだろう。俺はどこまでいっても自慢してえが、ロマンも入っちまう。だから最上の行動で示すつもりだ」と喝采する。
そう言って名を呼び出した。
ロロメル、ランチェス、イズ、エルマンド、ヘイデル、ガーネット、アム、デネブ、レジェ、ノウェム。
その姿が俺を囲う。
「…?」
ふわふわした心地だった。
夢なんだと、そう思う。
「輪廻の破棄で苦労したが、リザから魂の痕跡を聞いている。行くべき浄土へ居ねえとなるとバラバラになる所だったが、アムの概念返しがそうさせなかった。ガーネットは聖域の霊を通じみなを相棒へ導いていた。ランチェスは崇拝念術で相棒の生命力を器にし、みなの魂が保たれた。よって五百万を超える魂を蘇生し、漸くレリアスへ還した所だ」
聞きながら目を閉ざした。
というか声でダメだ。
またフォールオルドとハイライトから説明された。
地獄で強くしてくれたのがこの人達だったんだと。
ユダが続ける。
「王位側近を全うしていたんだ」
「うん」
「どうするよ? 上の秀才達に死者の蘇生がどうのこうの言われたら?」
「戦う」
「ハッ!」
「ユダ」
「おう」
「超最高」
ユダの口角が緩む。
「それとラー、メラクから言葉預かってる」
──勝て。
俺は後押しされたように「行ってくる」と地に青い波紋を顕現する。
王位側近達とレリアスに転移する時だった。
「おいおい」
「ん」
「何のために招集してると思ってる」
ユダが立ち上がる。
束の間に赤い紋様が地を覆う。
「全員で行くんだよ」
「は?」
転移先が凛界へ切り替わってる。
またみんなが頷いていた。
「現実主義者とロマンチストが足して慣らせば丁度いいだろ、それと」
体の封印を解いていけと言われる。
改めて自分を観察してみると、十七歳位だろうか?
民達によって体が縮んでいるが、特別エネルギーに支障は無く、何なら動きやすいし「気に入ってる。どうよ?」と惚気て見せ付けた。
「親父と呼んでたあいつら見たらゾッとするだろうな…」




