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ある追憶の戦術使い  作者: 神崎蒼葉
二章 秘書編
9/109

状勢

 王座でグラスを回す魔王やシュタラさんの声が通った。


「この短期間に軍事力が大幅に失った事から各軍を再構築する。とりわけ三と六。この数字を持つに相応しい魔物を決める場として、意義のある者は挙手を」


 その声に一同の関心を寄せた手が上がった。


「私は三.六に対し現状の選抜に危惧しています。現に二名は勇者侵攻に打ち倒されてしまった…新たに適任した場合、危険視され、それこそ戦力を失います」


「その通り、ギルドの懸賞金が増すだろう…では、空席のまま敵に知らしめる事はどうだろう? 強い魔物の誕生を待っている時間、敵はそれを許しはしない。また意義がなければ審議に移る」


 そうして挙手は現れない。

 俺は一連の事をアメジストに聞くと戦力を指数で表すそうで、共にシュタラさんがそばにいた。

 

「シオン殿、腕前について聞いておきたいんだが」


「腕前というのは?」


「ステージで実力を見せてくれ。得意な戦術で構わない、相手が必要なら俺が立ち合うつもりだ。攻撃か守備か、どれだ?」


「得意な戦術は、守」


「それと守備なら魔王自ら立ち合うと仰っていた」


「攻撃で!」


「そうか。なら俺が防壁役になろう、名を呼ばれたらステージに上がってくれ」


 端的に告げていくシュタラさん。

 俺が立ち上がると視界は真っ黒でアメジストの鼻にくっ付いていた。


「どこへ行く?」


「お花を摘んでくる」


「ついさっき便所まで突っ走ってたよな。腹の調子が悪ければ上機嫌にメシ食えねえはずだ…さてはビビってんじゃねえだろうな?」


「いや…美味たべすぎて…。」


 思わず下を向くと「おうおう」と紡がれていた。


「俺らは血よりも濃い家族だろう?」


「まだホクロの数も知らないよ」


「一つ屋根の下で同じもんつつき合ったんだ。な?」


 俺は縮こまった背を向けて歩いていく。

 しかししおらしい声が掛かった。


「昔の魔王軍はしょっちゅう裏切り者を抹殺してたな。魔王が」


「…そういうの下っ端の仕事じゃないの?」


 一応聞く。

 脅しだし。

 でも仲間が欲しい身としては凄い困る。


「魔王は愛情深いから自ら引導を渡してくれる、そいつの親兄弟と一緒にな…」


 見ると懐かしんでるかの声や安らぎが伺えるし「今までの生存率は…」と訊ねたら「いないぞ?」とニヤけていた。


◇◇◇


 宴の夜を連想する広間で人相悪く声を荒げてる。

 俺はそんな光景にうつ伏せた。


「しかしアレだ、お前が選ばれてるとは…。皆を癒す系だと早とちりしてしまった。うん、いびったらヤバかったな!」


 アメジストは更に「最初の奴の出番だ。腹くくって見ておけよ!」と揺さぶってくる。

 同時に冷気に戦がれ、ステージに目を配ると言霊えいしょうが始まった。


女神めがみあらがつばさあお吐息といきしずめた大地だいちささげて 地獄じごくべたこおり化身けしん


 魔物の上に魔法陣の発現。

 言葉で呼び起こしていた様に感じる。


 ぁっしょぼ──

  ぁぃてぃなぃの──


 どこからともなく聴こえる。

 小さい容姿が魔法陣に写る、鬼?

 角がある幼女が吐息を…。


第四魔法陣クァットゥオル 息吹アペルティオーフローリス


 魔物の声に魔法陣から氷柱が飛び交う。

 ステージは氷雪の様に埋まり、爆発した。

 その地につやのある爆発痕が出来ており、それは爆発の威力より、細かい冷気はへんによる脅威きょういのもの。


「これを以って魔王軍の六の称号に相応しいか。皆の意向を示して欲しい」


 シュタラさんの指揮や拍手が起こる。

 ステージに立つ魔物に六の称号が贈られ、またシュタラさん自身も二の称号を担ってると演説した所。

 魔物たちの動揺が溢れていた。


「何故シュタラ様が三位に降格するんだ」


「一位がシンク様。二位にシュタラ様。絶対的羅列に何故?」


 それは魔王軍のNo.ニから三に移籍するシュタラさんの演説にだった。


「意義は認めん。次に移る。シオン殿、ステージへ上がってくれ」


 暴れる魔物達が鈍り、途端に総勢の注目を集める俺。

 血走った視線に送られ、ステージに立つと最悪の絶景だった。


「この者をNo.二に推薦する。この中で彼を知る者はいないだろうが知るものぞ知る手練れであり俺自身未だ想像できぬ原石だ。ここで我々に真の力を証明してくれるだろう。ではシオン殿」


 合図。と同時に皿が割れ出し罵声の嵐が起こる。


「………クスっ」


「シオン‼︎‼︎」


 ものを震わせるアメジスト、いい顔で続ける。


「負けんなよ」


 その言葉で、全員が睨みに見えていた視野は期待の表情を映し込む様になり、目をつむった。


 考える事は攻撃、攻撃、攻撃。


 過去を探りながら青い魔力が宙を泳いでいく。

 青い魔力とは、死に物狂いで戦った記憶や、再現性のない攻撃が浮かぶ。

 また過去を頼りにすると、辛い。

 よって新しいものへ挑戦するきっかけにした。

 思い切って声に出す。


 ──鬼神化身きしんけしんし与える──大気をおこ妖艶ようえんまどわしうなれ──


 魔力が作用する感触がした、刹那。


 フゥゥ──

  ビリュルル──


 体が乗っ取られ、脳裏に瞳を光らせる存在が語り掛ける。

 ダメだと。

 魔力量然り全く足りないという。

 それは力を貸す見返りがなければ発現出来ないと続いた。


「お前の教師から魔力を献上させると見込めるなら力を貸すが?」


 聞いていて言霊と魔力で発現するものでない事、力を貸す分の魔力量を先生に肩代わりしてもらい、力を発現させるという説明だった。


「いやだ」


「何故だ?」


「肩代わりができない」


「いいや、アイツにとってお前は生命の活力になっている。別の世界で窮地だったとゆすればいい」


 どうやら魔力が好物だそうで、魔力の取引に利用したいらしい。

 断ると了承するまで取り憑くと聞かず、一点張りのやり取りから方向性が変わった。


「野望は何だ?」


「聞いて何?」


「力無く成り立つ野望はない」


「先生に肩代わりしてくれてまで叶えたくない」


「お前一人で大成出来るものなのか?」


「一人じゃなきゃいけない」


「言ってみろ」


「倒したい奴はいる」


「誰だ?」


「悪魔」


 そう言わされた気がした。

 けど野望という本質に絡んでいるだけで今となっては優先順位が低い。

 新しい地に来て思い出すきっかけ自体少なくなるはずだ。

 ならそれでいい。

 ただそれだけだ。

 だがこいつは耳を閉ざせない脳裏で笑い狂っていた。


「ふっ。よりにもよって魔力位よじげんが悪魔。そんな下剋上から何を得る?」


「話す必要がない」


「ふむ…まあいい。こちらとしては久しく笑えた。契約者が俺を呼んだ事象も含め。足して訂正するが取り憑く気は毛頭ない、だが悪魔を討つなら契約相手と上手くやっておけ」


「シイナを知ってるのか」


「ほう。そのシイナとやらに聞いておけ。だが今回だけは俺からの祝いだ」


 彷彿する紅い魔力が胴長に暗闇を照らす。


「…シイ…ナ。シイ…ん。ガキの頃に聞いた様な…何だっけか…んー歳は取りたくねえもんだ」


 脳裏から独り言かの余韻が消え、俺は意識を取り戻した。

 頭上から紅く駆ける魔力を感じる。


「そこまで」


 魔王の声が室内を通る。

 最後を唱えてはいけないという事に。

 またシュタラさんが琥珀色の剣を構えている現実が後押しする。


「はい」


 俺は自然消滅まで時間を要した。

 剣を収めずにいたシュタラさんや総勢の動揺が止まらず、魔王は隣に赴き肩を引き寄せて言う。


「私の一存で此の者を推薦した、そして皆を招集した名目は我々の勝利と守護。二の称号とは私を脅かす存在として皆に告示するため。尚今まで通りシュタラには総括軍隊長をやってもらう。以上だ」


 魔物から伝説と歴戦の言葉が届く中、魔王はひるがえし、俺はニの称号を担う事になった。


◇◇◇


 あれから朝起きた部屋にいた。

 改まって勇者から守る護衛になって欲しいと魔王に依頼され、引き受けた俺は腕を枕にし振り返った。

 元々魔王城に行く提案はシイナだった事から、もどかしく、体を起こしたら宙に白い羽根が見えた気がした。

 しかし左右を見ても居なく、バンと寝たら吐息が掛かった。


「ジーーー」


 両手で床を押さえてムッとした顔を突き出すメイミア。

 それが肌に髪が掛かって痒く、そう伝えると圧迫が加速し出す。


「寝心地良さそうなベッドで羨ましい限りだね…シ。オ。ン」


「だから痒い…なんでここに来れるんだよ⁉︎」


 即座に距離を取っていたら横目で睨まれる。


「ふん。悪魔舐めないでね?」


「置いてくるんじゃなかった…で何?」


 耳を触っても無い俺は細い目で注視した。

 けど視界から消えていたメイミアは楽しそうに口ずさむ。


「いやね、ミグサが連れ戻して来てくれーって。代わりにケーキご馳走になったからね、半殺しにしてでも連れて帰るって約束したんだ、あとね」


 後ろから熱を感じる。

 気付けば首周りに腕を通され、遮った。


「こっちだって約束したんだから帰らない」


「じゃあ寝る時は気を付けないとね?」


「寝不足になるわ。てか…何か良くしてくれるし、守るって約束したからには」


 自分に言い聞かせるために言っていたが、メイミアは重たそうな目で「うん」と。


「知ってる。だから?」


「だからって、知ってるなら説明しなくても分かる」


「訳ないよ。シオンのせいで飯なし野宿だったんだよ、手足の二三本落としてもお釣りが出るよ」


 知らねえよ…。

 俺は心で思った。

 しかし微塵も興味は無いようで「なら家で好きにしてくれ」とポッケから鍵を渡す。


「鍵は。持ってて損はないんだけど、まいっか!」


「はぁ、渡して思い出したわ。いつも家に居た奴が野宿ね?」


 俺はベッドに転がり忘れようとぼーっとした。


「ある二人が手紙のやり取りをしています。さて誰でしょうか?」


 そんな謎々っぽい話しに背を向けた俺は、足音が近付いてくる。


「一人はここを治めている人、もう一人は歴戦の勇者……」


「…。ここを治めてるってシンクさんじゃないの?」


 そう向くと「ハイ正解! ならどうして勇者と手紙のやり取りをしているのでしょうか?」とニヤニヤしてる。

 俺は「宣戦布告」と答えを待つが。


「じゃあここで。ロマンの欠片もないシオンにヒントだよ!」


「帰ってくれ」


「折角面白い話を教えてあげようと思ったのに、つれないな!」


「なら簡潔に教えて欲しい」


「んー要は、魔王とヒビキ先生がお知り合いってオチでしたとさ。めでたしめでたし」


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