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ある追憶の戦術使い  作者: 神崎蒼葉
最終章
85/109

大司教

 その前に。


「二人に、会えて良かったわ!」


 細胞が青い光を散らす中「お前は孤高ここうの翼を司り破壊へ向かう。起源へかえるに耽入ふけいる事なかれ、愚かもの」と首にひと突きする攻撃を躱すゼウス。


「愚かながらに告げに来た。この地の争いを終わりにしよう」


「神に叛逆した上でものを頼むか」


「頼んで無いよ。命令」


「貴様」


 ゼウスの眼孔が光を放つ。

 筋肉の引きつった表情が眩しく、プラズマかの残留を靡かせて、回られた。


雷霆ケラウノス


 黄金の武器。

 杖と槍を混合した様な先端が腹から見える。

 束の間に爆熱し弾け散る体が光となって蘇った、けれど。


「熱‼︎‼︎」


 痛いの度が狂ってるし蘇るエネルギーの消費量が絶大過ぎる。

 これが潰えたら死ぬと本能的に諭してる時だった。


「我に叛く罰は雷霆。此度に学べば苦しむ事も無かろう悪餓鬼わるがき


「ざけんなクソジジイ‼︎」


 癖で逆らってしまった。

 雷霆の先端が肩から腹に映る。

 自分が紙と認識するみたいに裂かれ「十倍」と雷が放出。

 視界はゆっくり焦げていき、脳の神経が可笑しくなる実感。

 これをエンドルフィンというのだろうか、麻痺した感覚だった。

 更に燃える様な視界はゼウスの若い時を映し出していった。


 ──そういや、昔っから学習能力無かったわ──


 蘇った体はゼウスの腕を裂き、皮膚から血が流れていく。

 瞬く間に雷霆の突き、払うかの攻撃に三叉槍で迎え打つ。

 雷霆との衝撃が伝ってくる度、やっぱり三叉槍って丈夫だなーと、思うんだが。

 最初の強襲が破られた時点で策は皆無、他に試せるとすれば水、しかし浸水した所で宙を浮いてるし、ゼウスがおぼれると思えない。


「哀れ」


「確かに」


「元来身の丈に沿う生き様が運も幸福も寄せるであろう、だが慢心する身勝手が一人いれば秩序が滅ぶ。許されざる罪で大衆の自制心が損なわれる様を、自らの罪を着せている自覚は?」


「意味わからん」


「更には一人の娘に影響され、慢心の肥大化へおとしいれる。挙句世界階級の頂点へ抗うと一丸する、言葉を巧みに操っているつもりか? 貴様らは善の権限に立証された我が文明を侵略し、先代が積み重ねたレリアスの功績が泥によって侵される。さて我らにどう報いる?」


「…。」


「尊厳を思うままに扱えぬらしいが。己ら低俗な行いで迷惑が掛かっている。この地に踏み入れる許可すらしとらんが、これ以上の邪魔を」


「おい」


 無自覚な水がゼウスを囲い、瞬間的な光を帯びて爆発。

 凛界に衝撃波が十周するかの威力はゼウスに吐血の効果があった。


「合格だ」


 血を拭いたゼウスが「縛」と続ける。

 あの時と同じ、メイリス先生に掛けられた動きを封じる術にかられるが、直ぐに解けると、思っていた時「よせ」と叫ぶ白金髪の青年。

 それはゼウスの首を噛みちぎる九尾の妖狐にだった。


「また一つ罪を重ねるか、罪人」


 血飛沫が上がる。


 叫び上げる会頭が斬り裂かれ。


 リオンが、アルトが、オルトロスが橋に落ちる。


 ヒビキ先生、レナ、シエラ、ユキ、ヴァレン。


 プラズマの残留が凛界を蹂躙した光景は、真っ赤──


 白金髪の青年は『させるか』と大声を張り。


 白く絢爛な粒子がみんなの傷を癒やし。

 

   ◆悲劇が繰り返される◆


 その意識に沿って紅い開門が天を覆い。


 死に通じるかの風が凛界を仰いで、創られていく。


 膝から崩れ落ちる白金髪の青年は、ゼウスの御前に感謝していた。それは民の急所を外していた礼と。


「あなたを離れ、活かされた祝福に感謝し切れません」


「お前はよき力を宿していた。今までの功績は叛逆をも越える、今一度その身を清め誠意を尽くすと誓えば、帰還を許す」


「ゼウス様。私の力を成長へ導いて下さったのは、他でもない誠意です。強く生かされ大切なものを守らせて頂いた、感謝に尽きます、私は誰よりも成長に肖り、やはり民達と同じ様に欲していたのは慈愛でした。楽しいと生きられるこの上ない幸せを実感し、私の誠意はアレイオン様ただ一人なのです」


 満足かの表情と同時に雷霆に裂かれ、地に伏せていった。


 ゼウスがメイミアへ向かう。


 ──封じられた術は解けた、なのに身体が動かない。


 気が付くと体が薄まっていた。


 全身から青い光が抜けていき、遠退く意識で原因を探す。


 天を覗くと波紋の常闇が広がっている、その開門からエネルギーが吸い込まれ、消えてしまうと悟った同時刻。


 漆黒の刃が雷霆を止めた。


「メイミアを、やらせない…」


「残り僅かな寿命でようやる」


「助けるために来たんだ…お前の様なやつから…ずっと…」


「知っている。雷霆を止めた主君は、上にいる王者以外に居ない。見事、見事なり、よって褒美は、大罪人を庇う罪に相殺され、逆鱗に触れた」


 宙へ拡大する放電から眩い煌々が視界を飲み干す。


「本来神の領域なる雷霆。感服に放たれる報いは痛みなく、眠れ」


 轟音が飛び散るかの光景は、凛界が浸水する光景へ変わる。


 ──あらあら、あらあら──


 幻覚…。

 そう思っていると寒気が走ったかの目付きで距離を取り計らうゼウス。

 また朧げな声が聞こえてくる。


「シオン様に似てる」


 みんなの目覚める視線の先には、自分自身を見ているかの人物が立っていた。


「わたくしアトランティスの大司教です」


 凛界の人々に微笑み、女神様と呟くミグサに続けた。


「覚えていますか、救世主の誓い。あなたの有志はアルタイルに大きな救いを齎しました。よって褒美です。ワルプルギスに差し出した全てを元に戻しましょう」


 青い光に包まれるミグサ。

 眼帯が消失する中で失っていた目が復元された。

 また、匂いなど、器官的なものに対する実感が零れていった所に。


「そしてわたくしと同じ容姿を持つ人と会った際、わたくしとの存在も教えてはならないと。さすれば御加護を与えましょうと。相違があった様に見えますが、女神と名乗った行い含め宴もたけなわ。お兄様が帰って来るまで、死守してみると致しましょうか。ねえ…叔父様」


 毒毒しい眼差しがゼウスに取って至高の笑みを誘っていく。

 そして視界は凛界を映す事は無く、最後の言葉を拾っていく。


「ほう、そいつは厄介だ…」

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