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ある追憶の戦術使い  作者: 神崎蒼葉
最終章
71/109

対談

 今回で個人行動を慎む結果となった。

 理由は会頭や俺の独断。

 二人一組の行動が余儀なくされたのは、互いの理性を守るため。

 銀の十字架がこの時策定され家族そしきの象徴となる。

 俺は個人の象徴はどんなのがいいか質問した。


「好きな形でいいぞ、兄弟の存在が知性を高められる家族を選べ!」


 なるほど、悩む。

 個人の象徴は自分を示すそうで、互いの理性を守るために築くもの。

 あと組む相手は。


「はーとにしよ。うん、意外と難しい。君に渡すからには渾身の仕上がりでなきゃ」


 パッと思い付くのはレナだった。

 俺の持っていない視野、博識。隣で一生懸命作ってるから。


「レナは俺だ」


 会頭が言った。


「なんで?」


 眼孔の光が失せるレナ。


「その知恵は俺が役立てる」


「女湯覗くケダモノなんて危ない」


「案ずるな、レナの裸に微塵も興味ない」


 びっくりする程に反応し無かったと呟く会頭に矢が降り掛かる。

 刺さってるけれどほとんど躱し。


「俺以外(かしこ)まっちまう。家族に窮屈な思いさせたくないんだ」


「君は?」


「え」


 いつも通りだったから余り考えて無かった。


「いつまで?」


「決まったものから申請する。俺が兄弟と呼ぶ様に決断には各々時間が掛かる。ゆっくりでいい」


 笑う会頭。


「私は信じてる」


 暗澹のレナ。

 どっちの影響を受けるとかは無いものの、気持ちが大切なのかも。

 側にいて欲しいとか、楽しいとか、この考えに直面してる時点で沼にはまってる。

 感情は限りなく出さない方が生きやすいと感じて来たし。


「りんご」


 ヴァレンを食堂に連れてった。

 果実が欲しそうにしていたからそう言って渡すと「りん…ご」と反復する。

 覚えられたかは兎も角、復唱する様子が何だが嬉しい。

 飯の後は風呂場に連れてった。


「あらえ」


「洗って」


 言いながら考えた。

 入浴する度に洗ってじゃなんか変で、


「あらって」


「おう!」


 最優先で入浴の仕方を教えた。

 日付が変わる。

 あれから二人一組の行動が定着していく。


「ねえ‼︎」


 レナの催促が部屋に通る。


「申請してるのまだ半分いってないよ」


「君は参謀なの。上が動かなきゃ示しがつかない」


「先輩…」


「分かってるけど相手に失礼っていうか…へ?」


 呼ばれた気がした。

 向くとヴァレンが頷く。

 どうやら俺は先輩へ昇華したらしい。

 なんで?


「「渡さない」」


 部屋がめちゃくちゃになった。

 やたらめったらだった枕を戻しながら「はぁ…」と零れる。

 レナなら信頼感があるが、冷めてるというか、生きてく利益の補いというか。


「ねえ…」


「そう…ですね…頭痛薬は一日六時間以上開けて服用は二回までに、お願いします」


「君は誰と組みたい?」


「病気で苦しむ人が少なくなる様に、僕は、同じ医学を志す者が理想です…」


「流石我らの治療術者」


「いえ…えっと頭痛薬に魔力を抑える成分が含まれています。異変があれば服用の中断と直ぐ来て下さい」


 今までの臨床で独自に開発した薬らしい。

 前々から身体の体質なのか、頭を使うと頭痛が起こる俺は診断室から出ていった。

 さて、薬がよく効く内に考える。

 気持ちという対談について、全体で見るとこんがらがるから最近にしよう。

 となると仕事から、感覚は夢中な感じ。

 同時に敵対組織が浮かんできて、なんか暗くなる。

 ふとハイライトとシエラっていつも殴り合ってるけど暗くない。


「んー」


 何これ。

 組む相手のきっかけになるかこれ?

 …でも殴り合う。

 主観では仲良しに見えるし、周りもいずれ結婚すると囁く位だから視点は似てる。

 他に。


「嬉しい…とか」


 最近ヴァレンと居る時もこの感じがあった。

 もし組んだとしたら。


 ──楽しい気がする。


 楽しいを考えると幸せな気がする。


 幸せを考えると連鎖する。


 この感覚、やけに疲れるし危険な香りがする。

 寝よう。

 そう思い目覚めると身体が快適だった。

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