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ある追憶の戦術使い  作者: 神崎蒼葉
最終章
69/109

兄弟

 育った黒魔術界。

 最も古い、兄弟と呼ぶ会頭と血縁で無いと知った日から強襲を仕掛ける様になった。


「俺は兄弟と呼べる事が嬉しい」

「兄弟、今の剣捌きいいな」

「兄弟、俺の力を受け切るなんざ凄い成長だ」


 魔力やベールはその中で身に付けていった。

 会頭はいつも嬉しそうにいて、城で生き方について検討するこの頃から組織の一員が増えていった。


「兄弟喜べ!」


 家族。

 そう言って一員を連れて来る会頭の黒髪が少し、赤みがあった。

 当時は帰ってくる頻度の方が気になって、一年経ったか、髪が真っ赤に染まった頃。

 部屋で寝ていたら何かが上に乗ってくる。

 スヤァとか言って寝始めるし、抱えて起きると組織のみんなが疲れ切って部屋に居る。

 会頭は「そいつを育てられるのは兄弟しか居ない。泣きじゃくるわ噛みつかれるわ大変だった」と歯跡があり、みんな助かったって部屋から出て行くわ。


「えへへ」


 俺の胸に変な笑みを埋める幼女。

 これからシマの見回りでベッドに置いて外に出た。

 帰って来たら泣きじゃくって部屋は荒れていた。

 俺は片付けを終え食堂に行く。


「飯」


「うい」


 二人分のご飯を持って座る。

 組織の仲間が騒いで来た。


「菓子をくれ!」


 食べながら聞くと、甘い菓子をくれる文化に影響を受けたらしく。


「俺を愛してくれ! 菓子くれよ!」


「じゃ残りやるよ」


「残飯処理じゃなく愛が欲しい」


「愛って?」


「…。」


 静まった。

 何故かしょげた感じで俺の残飯を食べ始めるが。


「後はレナだけ…天地ひっくり返ってもくれねえな…」


 暗澹を感じる。

 心配になる程に。

 でも異性の一員は共通してるし、なんで俺に催促した?


「ダークホースのお嬢ちゃん…。そう名前って何て言う?」


「な…まえ。しらない」


「ん、何て呼ばれてたんだ?」


「おい」


「おう…」


 名前が無いらしい。

 俺は風呂場に連れていた。


「ここが女湯。出たら部屋に戻れ」


「いやや」


「…そこの椅子で待ってる」


「あらえ」


「女湯入ったさっきの人と会頭は血祭りになった」


「ふん」


「なりたく無い」


「おとこゆ」


 クソ、けれど後が面倒だし男湯に入った。

 籠に衣服を入れる中、所々アザが見える。

 何だろう?

 気になりつつも眺めていたら変態みたいだしささっと洗った。

 戻った部屋でベッドに寝かせ準備に掛かる。

 夜帯は他組織の活動があり抗争に発展するかもしれない。


「支度終わったよ」


 レナが迎えに来た。


「いでぇ」


 噛みつかれる。

 また部屋を荒らされるんだろうなと思って外に出た。

 酒の匂いがするセイドウ街で取引の同行、と魔術師の警戒。

 依頼主から出来るだけ円滑な取引の誘導を心掛け、魔術師の担当はレナ。

 怪しい意向があれば連絡が来る。


「いつもありがとね」


 一見貴族的な人。

 紳士の様な正装で何年も指名してくれた。

 相手方は武装系が多く、売人。

 大隊長に監視されている中、取引が完了する。


「君らに対して意味はなさないんだが欲しがる人が多くてね〜」


 世間話しと報酬を数える依頼主は黒魔術界の大富豪。

 受け取った報酬で数年は生活出来る。


「どうも」


「いやね、エルコンドル様と白の方が仲良くして下されば…失言だね」


「いえ」


「いや参った。会話出来る子なんてそうそういないから、どうだ。私の所に来ればその百倍出すとしたら?」


 今までで一番大きな資金。

 最初は話し好きな人だと思っていたが、皮膚の動き、喉、眼孔から真剣さが伝わる。

 お世辞としても嬉しかった。


「自分は生き方が分かりません。またの依頼お待ちしています」


「私は諦めん…」


「よ!」


 機嫌のよさそうな血塗れのシエラ。

 なんでも粋のいい構成員と遊んでいたら見かけたそうで、依頼主は去っていった。


「エルコンドルがいる、観に行こうぜ」


 その誘いに乗った。

 レナには先に帰るよう伝える。

 向かう先は王の直属の一つ、人身売買の領土。

 そこには大隊長が目を光らせている。

 取り締まる目的でなく、王の視察だと噂されていた。

 人集りに進むと手足に鎖の繋がれた男性が見えてくる。

 一方「おうおうシオン。エルコンドル様観に来たっつう感じ、じゃねえな」と金髪が輝くハイライトがシエラに注視した。


「純粋につえー求めた行動だと喜んだらバケモンかよ」


「ァ? 会えて嬉しいだろ? 舎弟しゃてい…」


 近隣で揉め出した。

 仲がいいんだか悪いんだかいつもこんな感じで。

 出会い頭に殴り合う以外の印象はない。

 周りからはいずれ結婚すると言われてる。


「我が元に尽くせ」


 人集りを惹き寄せていたエルコンドルの言葉。

 黒魔術界の王が選ぶ次期後継者と聴こえて止まない。

 シエラは「強そうだ」と言い「だろうよ。俺の、目標だ」とふらつくハイライト。


「名をフォールオルドと申します」


 王に鎖を外される光景。

 奴隷の身分だった男は魔力の息吹を馳せる。


「…。強い」


「ん。フォールオルドって奴か? どの辺?」


「これから強くなるとかじゃね?」


 二人して首を傾げている、疑問の眼差しを浴びた。

 魔力量はハイライトやシエラよりずっと少なく、方角に寒気を感じる。


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