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ある追憶の戦術使い  作者: 神崎蒼葉
六章 過去って
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始まりは蘇る

 ……。

 そう聞けば内なる声は途絶えた。

 思えば幻聴かもしれず、その記憶も薄く。

 ベールが潰え。動けば傷が広がる。何度か反撃の兆しがあり、刃を回し込んで、突いてみたり、これら綺麗に躱される。


「あぁ…」


「どうしたんだい?」


 俺はメイミアを見つめた。

 シュネーヴィッチェンの羽の矢を黒い翼で防御、その身には魔法陣を断切している剣を持つ。

 片やシュネーヴィッチェンは魔術の処理や判断速度がメイミアを上回っており、相殺している。

 その視界に女の子は緩やかに立ちはだかった。


「我を忘れ独り言すら聞こえるけど、悩みでもあるのかい?」


「…今。殺されそうな状況に悩んでる」


 ぼーっと零れる。

 女の子は意外そうに休まった。


「人体はボロボロだろうに体はさっきより速い、なのに心はもろい。体と心は常に一定の繋がりがあるってことを、君を観てると、越えるべき壁を越えずして得ていると実感したよ」


「逃げる意味は知っています」


「尊敬だよ、生命の道を通らずに得た君を。追い詰める程視えなくなる様だ」


 体から血飛沫が上がる、斬られ折れる骨や身が。熱い。

 その度に冷える。


「あたしの悩みはさ、君が応えてくれないことさ」


 俺は地にくたばった。


「見せておくれ、本気を」


 意識がゆらゆらする。

 まるで体が水の底までちる居心地は悪い気がしなかった。


 ◆確か尊厳に達しここへ◆


 少し記憶が曖昧だがここは静かで、そんな元に『人』がやってきた。


 ──見たいと──


 容貌は白金髪で青年風、肌の露出から死闘の傷跡が伺える、真っ白の衣を纏った飢えている獣を。

 当時はこの『人』をよくは見ていなかった。

 白く錆びれた剣で斬りかかった姿勢含め。

 青年の血液を蒸発した。

 地獄の支配者に意思を繋げるため、戦いに飢えているなら地獄がいいと、ウトウトしながらの申請は受諾じゅだくされなかった。

 超強え。

 奴らが脅威と見做し封印したのが分かったが、初代悪魔を相手に当面無理だ。

 それに地獄に来ねえで相棒ん所に来たんだろ?

 話してていいのか。


「…。」


 俺は背後を取られているとも知らず、みくびっていた。


「本気が見たい」


 平然と立っていた青年から冷気が吹き抜け、俺は激しい渦潮に囲まれた。

 ど偉い事だった。

 青年が奥底に干渉している。

 そう解釈し落雷かの刃が額に振ってきた。

 目覚まし時計が鳴ったみたいに、目が覚めた俺はたんこぶをさすり尽くした。

 その日から隙あらば襲われる時間を過ごし、刃を研いでる青年を横目にしていた。


「戦う以外に楽しみないの?」


「強さに勝る幸せは他に知りません」


「じゃ…。他の楽しいを探しに行ってみないか?」


「追放ですか?」


「えっと、お前を放り出したら世界が滅亡しそうだ。さやになるから俺の付き人にならないか」


「付き人とは、楽しいとは、何ですか?」


「身の回りの世話してくれ。楽しいは、自然に知れる」


「分かりました。何から始めましょう」


 応えは意外と軽かった。


「まず世界を創る」


「は?」


「確か世界には天使をまつる仕来りがあるから、人が住めるまでにしたらたみを呼ぶ立役者としてやって欲しい」


「て…天使…って?」


「お前さん和魁玖歌わかいくかだろ?」


「何故…それを…」


「大分前に親父から聞いた事があった、強く気高い知恵の象徴って。初めの印象に惑わされたが、聞かされた能力は一致してる。それで干渉のヒントは親父の性質からきてんじゃないかって、思った。どう?」


「合っていますが、私は貴方の理想と違います。なにせ知性が低いので」


「その成長力で知性が低いとは思えない、牙を受け止める者がいなかったんだろう」


「私はそうとは言えませんでした」


「何て言われた?」


「自分の違和感に気付いたら全欲望をせがれにぶつけてみろ、と。あの、その方は今…」


「死んだ」


「すいません」


「いい。俺が殺した」


「どうしてかを聞いたら不愉快、ですか?」


「王位継承権の二位だったんだが長い」


 適当に促したら雰囲気が鉛の様だった。


「話は逸れたが国づくりに、天使の存在が打ってつけだ。慕う人が集まってくれるし身構えなくていい、形だけ、少数でいいんだから」


「その、私は暴君として飛躍ひやくしていたので。あがめる者はいないかと」


「戦い好きなら強さをほこればいい。のちの足りないもの必要なものは補おう」


「これからは国王とお呼びすれば?」


「それでいいが俺は表に出ない、国内の顔にはなるが外の長は付き人の役目にしよう」


「どういう国になるのでしょう」


「うん。人が沢山集まれば、国として繁栄しそうなら学校とか、ま未来の事は分からないが子供が笑ってるといいな」


「なんか、ワクワクしてきました!」


「決まりだ──」


 ──ああ。そうだった──

 くたばっていた体を立ち上げ、滝を司り、波を伝って森の人々を上へすくった。


みず英霊齎えいれいもたらせ、いつくしみ、よろこび、みちびけ、らって息吹いぶけ」


 水の居所を呼び覚ます。

 空を登るその水は人々を更に持ち上げる。

 地にいるのはワルプルギス、メイミア、シュネーヴィッチェン、そして。


「マダだよ。追い詰めた先に現れる心を魅せておくれ」


 活動領域が上がる女の子。

 生命力が飛躍的に向上しており、衝撃波を繰り出し俺の前へ辿り着く。

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