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ある追憶の戦術使い  作者: 神崎蒼葉
六章 過去って
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眠っているもの

 誘いか謙遜か、その前に悲しみがふつふつ湧いて、ハイライトを火葬していた。

 また全魔力が喰われていく俺は剣が変容し青い三叉槍さんさそうを握る。

 背後から「悪魔の対峙は、トライデントか」と聞こえれば「メイミアでも距離を取ったっていうのに」と思い出す。


「大概だ」


 ワルプルギスは両手を広げ、それか、避けられる術があるかの姿。

 象徴に魔力を蓄積ちくせきしていたのはこのために、メイミアにお見舞いするはずだった想定は捨て身。

 射抜く選択に賭ければ三叉槍から水が放射した。

 その水に地を這い上がるワルプルギスは蒸発を起こし、赤く干上がった肉体がことごとく破壊され、人体の飛沫ひまつは飛散し消滅した。


 ──なんだこれ。なんだ今の…──


 過激殺傷となって目を疑う。

 射抜けたのは慢心されツイていた。

 ツイていたというのはあの時、慣れた身のこなしで、別の人格が射抜いていた。

 そしてあの人格があの威力を導き出していた。

 そうめぐらせる体が地に吸い込まれ「スゲえ」と。

 ミグサに支えられ歓喜が馳せていた。


「本当にスゲえ。あんな不死身みたいに超回復する野郎を──ッ‼︎」


 無音に変わる。

 総勢の観てる死をくつがえし「超回復ではない、輪廻りんねの囚われは死して蘇る。それが地獄の死紋しもんだ小僧」とワルプルギスが無傷で立っていた。

 覚悟した視界に「んな事より」や「貴方に会ってものの数分。久しく成長した。これは不死の身ですら痛ましい」と片膝を付く。

 また「あのメイミアが距離を取る。意味は分かっていたが感性に従った」との事に「…あのメイミアがって、どういう事だ?」と聞くミグサ。


「青二才。誰にものを言っている…」


「俺も、気になる」


 勢いで尊重した。

 すると「全ての世界の監獄かんごく。魂の囚われものが集うその地獄に、突如人が落下した、巨大なクレーターだ。武術さんじげんも、魔力よじげんも、幻想ごじげんも、精霊ろくじげんも、輪廻の先にある最下層まで人の形を保ったまま降ってきた出来事よ」と息を鳴らすワルプルギス。

 二人揃って食い入っていると他所見の顔が少しづつこちらを向いて「第一階級の住処すみかなぐりこみとは良い度胸よ。喧嘩の聖地よ? 俺は正にこの覇者に上り詰めた男よ。どうよ?」と赤らめる。

 先は中々始まらず「凄いな…俺の憧れだ!」とミグサ。

 もしかして赤らめているのはミグサの眼差しだったのか「そうかそうか!」と黒装束を脱ぎ出した。

 上半身をさらし背の赤い彫りものを強調して「地獄の生命と定めた者に刻まれる死紋しもん輪廻りんねなる証よ。これが各階級で殺り合い、立ったものを下層へ導く。この死紋は各階級に応じ変容し、より強靭きょうじんな力が授けられる地獄の層は、深い。多くは過酷の永遠に砕かれ。骨まで黒い屍人しびとは地の中の白骨となり果てる。だが奴は降ってきた、空白の席に最も近い最下層。十人しかいない第一階級に、波乱の死闘末悪魔の継承に選ばれ消息した」と黒装束を着直し退屈と呟くワルプルギスに「あの。例えば何だけど、地獄みたいに深い場所って、知っていたりす」ると夢中で聞き込む俺は「ゆっくり来てって言うから観光していたのに…何してるのかな。キ、ミ、た、ち、は?」と言葉が消える。

 翔、優斗君を連れているメイミアだった。

 翔は「シオン…メイミアさんとは居たくない…立ってる感触が無いのは嫌なんだ」とゾンビみたいに寄って来る。


「?」


「地上は怖え、だからといってジェットコースターみたいな飛行は怖えーよ。あとシオンの担任にあったぞあの野郎…」


 あの野郎と何があったか聞いてみたいが「白魔術界はギリギリだよ」との説明に「…ああ」とミグサ。

 また「善で統一する敵に無数の選択肢が、この争いで主張してる」との補足や「過去は一切関係ない」と、その様にミグサを促しているのは背中を押していたのか。

 俺は危なくなったら直ぐ撤退をと伝えるが同盟に応えたいと、ミグサは「行ってくる」と風を置いた。


「ふん、白魔術界の爺いは優秀な部下を持っている様だ」


「兄貴。凄えな…」


 賛美が上がった十分少々で、ミグサは帰ってきた。

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