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ある追憶の戦術使い  作者: 神崎蒼葉
六章 過去って
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不老不死

 それが奴隷身分から狂人へ、闊歩を正銘した最期の言葉。

 俺はその様につつしむ全員に鋭利な魔力で追い立てれば対抗の魔力が奔り出す。


『下がれ』


 不屈の声が人柱達から聞こえ、下に付く人々は従う。

 彼らの師や大将は生き永らえる信仰と共に影響力があると信じて「聞いてくれ人柱、その者に付く全てのために。そしてヴァレン、ユキは戻りなさい。会頭がいる。同様にみな、身の保証が高い所へ避難しろ。如何いかなる時でも互いを重んじ、変だったら直ぐ助け。行ってくれ」と、みなフォールオルドの眠る地に見知らぬ力を感知していない、そう思っていた。


「シオンは、この存在とどうするつもりだ。また渡さないなんて言わないよな…?」


 黒い魔力を纏いミグサ。

 みながその姿に見開いていた。

 それは黒い霧が一瞬発現した支配下だった。

 黒い霧というのは冷気の様に流動的且つ疾く。

 何もない。

 黒い霧が過ぎた形跡はもぬけの殻。

 ただ風が吹き抜けて、その時魔力を纏えていたのはミグサのみ。


「今の何?」


「は?」


 聞くと何故か通じてない。

 無意識なのか。

 偶然で片付けるには可笑しくて、鼓動が増す。


「いや。同盟に応えたい」


 さっきのが何なのかは触れないでおこう。

 これ以上は。


 ◆少なくともさっきの支配下は俺より上だった◆


 ただ今は心臓を握られているかの圧迫感や、そういう存在感がフォールオルドの地に、あの日、神社で観るあの影がある。

 生贄いけにえ。そこで意味が分かった。

 雷の様に奔る幾何学紋様、その中心に集まっている規則性。

 亡くなった身は液体の様な原型と化し影と融合する。

 漆黒の霧を飛散して立ち上がるこの存在は──


「俺はこの土地を治めていた魔人だ。よろしく後輩ども」


 自身をそう表現した魔人は、神社で会った影達と異なり、笑みでいる。

 黒装束の容姿、成人の体型。指輪を装飾する、赤みのある髪、赤い碧眼と目が合う。


「フォールオルドからずっと観ていた。お前が現、黒魔術界の王か。いいのか? 後ろのガキが言う事を聞いていないが?」


 突き出した上半身で、両手を仕舞っている魔人が幾何学紋様の眼になった。

 それが息をもって高い空を見上げ「まあいい。もう一つ気になっていたのは全力だったが、こんな弱えーのか…今の黒魔術界は。ハッ! 礼儀もなければしつけもなっちゃいない。いっそ再興がてら。テメェら全員、死んで祝えよ」と笑壺えつぼに入る魔人。

 存分に満喫した時を経て、人柱に歩む。

 既に森一帯を支配する者へ。

 その支配下は津波の様な青い風。

 魔人は左右から戦がれ、瞬時──魔人の心臓へ右手を貫くハイライトや、大地はかかとによって長い痕跡が作られる。

 油断だったと予期した頃には俺の声が森に響いた。


「なっちゃいねーよ。罪人なら、後ろから狙え。ハイライト」


 全身から血飛沫が上がり地に倒れるハイライト。

 金色の髪が赤く濡れ、魔人の足場から赤い泡が弾ける。


「以下同上だ。シエラよ」


 頭の線が切れたかの形相。その姿は俺を過ぎて、大地を燃やすマグマの球体、それが複数。魔人の大地から上昇し。

 燃えて──

  呑んで──燃やす──

 そうしてシエラが斬り掛かる前に俺は走っていた。

 全神経が危機を通り越して、シエラをフィナの場所に投げた時、黒い剣を魔人が握る。

 その後に何があったかは分からない。

 ただ左手が焼け、黒い剣ごと腕力で森の外に吹き飛んでいる感触があった。

 幸い。ベールは体を守っている。

 平衡感覚が無くなる位に回った俺は、退屈そうな魔人に向かい。


「ああ。メイミアといてこんなもんじゃ…とっくにしょされている少年よ。永遠に生きる短い時の中に、ときめいて、この日を待ちびた」


 燃えたぎる渦中、魔人はてのひらで炎に触れる。

 愛おしいくらいの表情に変わって、炎が消失した。


「悪魔が使う貴方に会うために。地獄の第一階級・死神位しちじげん、ダーゼン ワルプルギス。以後永遠に寄り憑くので、よろしく」


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